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書籍「虚史平成」制作日誌 その3〜デザイナーはどこにいるの巻

案の定、時間が空いてしまったわけですが。
今日はデザイナーさんのお話しをしようと思います。

契約書は巻いてませんし、スタッフの皆さんから「CDジャーナルにお願いしよう!」と言質をもらったわけではなかったので、僕とCDジャーナル編集長のかわかみけんたのふたりで「これ、、、大丈夫だよな?」「大丈夫だよね?」と首を傾げながらも、なんとなくうっすらと出版社は決まったのが7月25日。
前回書いたのはここまででした。

「虚史平成」というコンテンツはある。出版社も決まった。次に決めなければならないのが「デザイナー」でした。
デザイナーが決まれば実制作に入れる。さあ決めようじゃないかという段階で右往左往することになります。

デザインは「意図」です。その書籍(書籍以外もみんなそう)でなにを表現するのか、なにを伝えたいのか、個人的にはその内容以上に重要な要素がデザインです。
読者が手に取る際、まず目に入るのは表紙でありデザインです。内容はその次ですよね。ここでハズしてしまったら、肝心の内容を読んでもらえない。だから、ある意味において内容よりもデザインって大事だと思ってます。

街裏ぴんくの生み出したあの世界観を表現するには誰に頼めばいいのか。
表現できるデザイナーは誰なのか。
当初、「虚史平成」のアイコンをデザインされた方にお願いしようとスタッフ間で決まりました。
オファーしてみると、大変うれしい話ではあるが、書籍一冊をデザインしたことはないので今回は…とご連絡をいただきました。
※とはいえ、あの世界観を作れる方になにもお願いしないのはあまりにもったいないと、松重Pのディレクションで作られたのがTシャツとパーカーでした
https://www.cstr.jp/kyoshi/sweat2b.php

このパーカーのプロトタイプを見せてもらったとき震えた

じゃあどうしようと話していたときに、プロデューサーの松重さんが持ってきたのが書籍「奇奇怪怪」(https://www.ishiharashobo.jp/index/kikikaikai)でした。

「奇奇怪怪」石原書房刊

「少年ジャンプ」と同じ大きさ、400ページ近い大ボリュームでありながら、全編「超絶技巧組版(※石原書房さんのnoteより)」で組み立てられたまさに「奇書」。
一応、これまで本や雑誌を作って毎月の家賃を払ってきた身としては、「こんな大変なレイアウトでよく一冊作ろうとしたな……」とめまいと嫉妬を覚える作りに打ちのめされました。

「虚史平成」の世界観を表現するのにぴったりの方だと、松重Pを介して依頼を掛けたのですが、制作期間の短さと多忙であえなく断念。
「頼む! 引き受けてくれ!」と願いながらも、連絡を受けた際には「そりゃ、これだけのことができる方ならそうなるわな」と思ったのを覚えています。

最後の手段に! と、僕が本業で10年近くご一緒しているデザイナーさんにお願いしようかと振ってみるも、こちらも多忙でNG。いやー、まいった。

3人に立て続けにお断りされたわけですが、この段階で月日は流れに流れ、8月14日になっていました。
出版社が決まったのが7月25日。「デザイナーが決まらねえ!!」という右往左往で3週間が経過したわけです。
3週間あればかなりのことができましたよ。でもね、仕方がないんです。
とはいえ、もういよいよあとがなくなりました。

8月14日、TBSとの打ち合わせの日。
その日の朝、「すっかり忘れていた名前」を思い出しました。
星加奈子さん、通称かなさん。
2022年2月に刊行した、「私、一回、死んだのかもしれません」という実話怪談本を作った際にデザインと組版をお願いしたデザイナーさんでした。

この「私、一回〜」は、僕が10年以上聞いていたTBSラジオの番組「エレ片のケツビ!(エレ片のコント太郎の後番組)」の実話怪談コーナーを書籍化したものでした。
その際、この本を出した出版社と業務委託契約を結んでいたデザイナーさんで、なし崩し的に「この人とやって」と紹介されました。

「ああ、かなさんがいたな」と連絡をしようとしたのですが、メールアドレスもわからず、彼女の会社のホームページの企業問い合わせフォームから連絡をしました。
街裏ぴんくさんの本を作ること。一度、久しぶりに話をしたいこと。
企業問い合わせフォームから来たメールって読んでるのか…? と不安を覚えながらも送ったのですが、すぐに返事が来ました。


以降はすべて実際のやり取り。8月14日、10時15分のメール(本人の掲載許諾なし)

おお、返事が来た! と。とはいえ時間はないぞと。TBSとの打ち合わせは今日なんだ。返信しました。

同日10時21分のメール。ちょうど変な組織に尾行されたり盗撮されたりしていた不穏な時期だった

この日、ちょうどTBSで打ち合わせがあったので、なんの事情も頭に入っていないかなさんをZoomでつないで、無理やりスタッフの皆さんと顔合わせさせてしまうことにしました。
とはいえ、スタッフの皆さんからしてみれば、どこの誰かも分からず、どんな実績があるのかも分からず、本当にこの人にお願いしてよいのか判断に困るだろうことが容易に予想されました。

双方にとってこれは良くないな…と思っていたら、突拍子もないことを言い出して驚きました。

前述のやり取り以降はLINEでつなげた

コンペ? Winner? 優勝?
2年前の本がなんで先月のコンペで優勝するのか、なんかよくわかんないけど、これはめでたいと。
めでたいし、これでTBSの皆さんに「この人は海外のコンペで優勝しているデザイナーだ」と言えるとホッとしました。

こちらがその装丁。出版当時、僕だけが「この装丁は怖すぎるからイヤ」と拒否した

打ち合わせは12時30分からだったのですが、この話を聞いたのは12時8分。もはや分刻みのスケジュールです。

打ち合わせが始まりました。
とにかくデザイナーが決まらないとなにもできない状況でしたので、必死にかなさんのプレゼンをした覚えがあります。

彼女はこの段階で「街裏ぴんく」という漫談家を一切知りませんでした。
彼を知らないデザイナーに、果たしてあの独特の世界観を表現できるのか。
スタッフの皆さんが不安に思っていたのはこの部分だったはずです。
でも僕は「いける…はず」という確信に近い思いがありました。

というのも、彼女との始めての仕事だった「私、一回〜」を作った際、原稿を書いた著者であり担当編集でもあった僕以上に僕の原稿を読み込み、その世界観をデザインに落とし込んでくれたのが彼女だったからです。
今回も、きっと後追いだけれども街裏ぴんくという稀代の漫談家の世界観をキャッチアップして、彼女なりに咀嚼してデザインしてくれるはずと信じていました。

このあたりを皆さんには説明して、彼女にお願いすることになりました。
ただ、彼女も多忙でしたので、お願いするのはデザインディレクション、本文のレイアウトなど。
企画ページは僕の知り合いのデザイナーに。
組版と文字修正はCDジャーナルでお願いしているDTPオペレーターさんにお願いする、3人体制でスタートすることにしました。

だったのですが、なし崩し的に「あ、グラビアやるから」「写真の修正お願い」「書店用のプレスリリースデザインして」「トレーディングカードも」等々、お願いするハメになるのですが、それはまた後日。

今日はここまで。

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