WHOのイベルメクチン非推奨を考える 第1版


(今は有事ですので、拙速>巧緻と考え、本論考も公開を急ぎました。何度か見直しましたが、誤字脱字や勘違いなどがあるかもしれません。ご指摘いただければ、確認の上、訂正致します。どうかよろしくお願いいたします。

なお、本稿の参考文献は、とりあえず、付録「COVID-19に係るIVM論文リスト」とします。これ以外の参考文献はしばしお待ちくださいませ。


はじめに

2021/3/31、WHOはCOVID-19治療薬としてのイベルメクチンについての声明を発表しました。

“We recommend not to use ivermectin in patents with COVID-19 except in the context of a clinical trial.” 

(Therapeutics and COVID-19: living guideline https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-therapeutics-2021.1)



要は、「治験以外では使わないで」ということです。

IDSA(米感染症学会)とEMA(欧州医薬品庁)も同様の声明(厳密には少し違います)を発出しましたので、WHO声明は想定内ではありましたが、その結論にはまったく納得できませんでした。



理由は2021年になってから、イベルメクチンとCOVID-19に関する4つのメタ解析論文とそれらが抽出したCOVID-19治療薬/予防薬としてのイベルメクチンの効果についての論文を読み、イベルメクチンはコロナの治療薬としてはもちろん予防薬としても有用だと判断していたからです(詳細は本note「イベルメクチンとCOVID-19のメタ解析論文を考える 第3版」を参照)。



以下のグラフもご覧ください(Fig.1)。これは、キーワード「イベルメクチン」「COVID-19」の検索でヒットしたCOVID-19治療薬/予防薬としてのイベルメクチンの効果についての68本の論文(付録・COVID-19に係るIVM論文リスト参照)を著者の結論によって色分けしたものです(2021/4/26現在)。



対象は予防、軽症、重症といろいろありますけど、圧倒的に、緑と黄緑が多いことがわかると思います。

つまり、イベルメクチンがCOVID-19に効くかどうかを調べた68本の論文中54論文の著者が「有意差あり(=イベルメクチンは効いた)」としてるわけです(ただし、21本は大規模治験で確認する必要ありと留保付きです)。

この圧倒的なエビデンス(科学的証拠)の存在にもかかわらず、WHOは、「治験以外では使わないで。エビデンスが不足しているから」という声明を発出したのですから、私も含め、一般市民が納得しないのはやむおえないのではないでしょうか?


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(2021/7/17記 本論考で使用したElgazzarらの論文が撤回されました。これを受け、本論考を一部以下のように訂正します。なお、論旨に変更はありません。

・イベルメクチンの効果についての68本の論文
  ↓
 68本の論文→67本の論文

・イベルメクチンがCOVID-19に効くかどうかを調べた68本の論文中54論文の著者が「有意差あり(=イベルメクチンは効いた)」としてる
   ↓
68本の論文中54論文→67本の論文中53論文

・fig.1内の数値33→32

・WHOの抽出10論文中7論文で論文著者はイベルメクチンの効果を肯定
   ↓
10論文中7論文→9論文中6論文

・表1から、Elgazzarを削除します。

・参考文献からElgazzarを削除します。)
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WHOの目は節穴なの? もう信用しない!!

実際、この声明を知った方が怒っていました。


「WHOの目は節穴なの? 」
「エビデンスはたくさんあるのに!! 」

「もうWHOは一切信用しない!!」


心情はわかります。

しかし、WHOは世界を代表する医療の専門家集団です。
私の心境はこんな感じでした。


(WHOの目が節穴というのは、何が何でも、おかしいよなあ)

(一切信用しないというのも、やはり、早計だよなあ…)
(しかし、エビデンスが存在するのに、存在しないと言われても…)



他には、ネットに、こんな意見がありました。


「製薬会社とWHOが結託して、イベルメクチンの邪魔をしている!!」
「特許の切れたイベルメクチンでは稼げないからだ。新薬を売りたいのだ!!」
「有名学術誌もこの陰謀に加担している!!」


事実なら、ハリウッド映画になりそうな話です。
前米国大統領も「WHOは中国寄りだ」と怒ってWHOに脱退を正式通知しましたから、「そんなの絶対に200パーセント荒唐無稽の妄想です」とまでは言えません。


もし「COVID-19にイベルメクチンは有効」と知りながら、これを隠蔽したのであればそれは犯罪です。WHOは裁かれなければなりません。

しかし、そのためには裁判所を説得できるだけの確たる証拠が必要です。が、しかし、確たる証拠は確認されていないと思います。

WHOの声明の分析 根拠とした参考文献に注目

というわけで、私はこのテーマは取り扱いません。かわりにWHOの声明を読み込むことにしました。具体的には、WHOが声明の根拠とした論文を調べました。各論文の筆頭著者名を表1に示します。



なお、表1には、イベルメクチンの効果を検討した4つのメタ解析論文が抽出した論文の筆頭著者名も載せました。


色分け等の意味は以下です。

 緑→有意差あり(効果あり)。
 黄緑→有意差あり(効果あり)だが大規模治験必要。
 赤→有意差なし(効果確認できず)。
 なお、★は予防効果論文です。

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