大腸憩室炎になった話
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
胃腸の診療をしていて、最近思うことですが。
「胃」の病気に罹る人が、とても減りました。
これは、ピロリ菌保有者が少なくなったことに起因すると思います。
そして、「大腸」の病気に罹る人がだんだんと増えてきました。
こちらは食生活の欧米化と、生活習慣の変化が大きいと思われます。
日本人の大腸がんは、残念ながら増えています。
そして今回話す「憩室」を持つ人も、とても多くなりました。
「憩室」を持つ割合は、10人に1人と言われているが
私が大腸カメラをしていると、およそ3人に1人は憩室がある印象です。
昨今は、憩室保有者が増えているのかもしれません。
「憩室」は、大腸の壁の一部が外側にプーっと飛び出たものです。
外から見れば小さな袋のように見えるし、大腸の中から見ると窪んでいます。
「憩いの部屋」と書きますが、実際は便が詰まっていることが多く、ともすると憩室にバイ菌が入って炎症を起こすことがあります。
これが大腸憩室炎です。
憩室炎の体験談
私は、10年以上前に憩室炎になりました。
ここからは、私の憩室炎体験談になります。
初めは上腹部、特にみぞおちに痛みがありました。
「きっと胃が悪いのだろう」と思って、胃薬を飲みましたが効きません。
かと言って、鎮痛剤を飲んでも上腹部痛は取れませんでした。
こうして数日間を過ごしていたある夜中に。
右下腹部の痛みを自覚しました。
押さえると、かなり響いて痛い。
もしやと思い、お熱を測ると「38.7℃」でした。
あぁ、虫垂炎(いわゆる「盲腸」です)かぁ。
と思って、昔勤務していた病院の夜間当直に行きました。
先入観の危険性
今思えば、消化器専門の私が「虫垂炎かも」と言ったのが悪かったのですが...。
CTを撮り、当直の先生が
「やっぱりアッペ(虫垂炎)ですね」と言いました。
その後入院となりましたが、次の日の日中(日曜日でしたが)消化器内科と外科の先生が入れ替わり立ち替わり診に来てくれました。
結局その日の夕方に、緊急オペ予定となります。
麻酔科の先生も呼ばれて、虫垂炎手術の同意書にサインして。
剃毛は「セルフでお願いします」とのことで(勤務していた病院だからそうなりますね)、高熱で意識がうつろうつろの中、毛を剃りました。
そんな中、ある先輩先生が意見をしてくれたのです。
「これはアッペではないですよ」
集まっていた先生が改めてCTを見ると、腫れていない正常の虫垂があったようです。
診断は「盲腸部の大腸憩室炎」でした。
何とも厄介でした。
この先輩先生がいなかったら、私はお腹を切開し、驚きの結果となっていたでしょう。
「虫垂炎だ」の先入観が、おおごとになるところでした。
この経験から、先入観に囚われることはとても危険だなぁと自分の肝に銘じることにしています。
もちろん病院の先生方とは、今も仲良くしていますよ。
憩室炎の治療
憩室炎はがんではなく、良性の病気なので。
治療は「腸の安静」になります。
つまり、絶食で一日中点滴をします。
そして抗生剤も点滴します。
私はCRPと言う炎症反応が14とだいぶ高値だったので、絶食は約1週間に及びました。
憩室炎は良性の病気ですが、痛みを我慢して無理をしていると、腸が破けて腹膜炎を起こし緊急オペになることがあります。
芸能人のニュースで、たまに見かけます。きっと休めなくて無理されるのでしょう。
連日の絶食点滴で、腸の炎症が取れたら。
食事療法が始まります。
これはおもゆ(流動食)から始まって、少しずつ硬いお粥にしていくものです。
普段はおもゆを食べることはないですが、久々の食事はとても嬉しかった。
絶食入院をすると感じたことは、「TVではグルメ番組がとても多い」ことです。
家族、医師・看護師さんやスタッフの方々に感謝
入院をするとありきたりな言葉になりますが、「日々健康でいられること」への感謝の気持ちが沸いてきます。
病院の先生・看護師さんやスタッフはいつも優しく接してくれました。
1患者になって、「自分も患者さんには、どんな時でも優しい存在でありたい」と思いました。
そして私の健康をいつも気にしてくれる家族に、感謝の気持ちを忘れないようにして生きていきたいです。
「いつもありがとう!!」
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