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アンパンマンの映画に心を揺さぶられた話

※ この記事は映画「それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン」のネタバレ有りの感想記事です。



映画「それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン」を観てきた。
2024年6月28日公開。監督・川越淳、脚本・米村正二。アンパンマンの映画シリーズとしては通算第35作目らしい。
あらすじは以下の通り。

ある日、一冊の絵本を見つけたばいきんまん
絵本から「愛と勇気の戦士ばいきんまん、助けにきて!!」と声が聞こえ、
絵本の中に吸い込まれてしまいます。
砂漠の先に広がる大きな森で出会ったのは、森の妖精・ルルン
怖がりで勇気が出せないルルンは、森で大暴れする
“すいとるゾウ”をやっつけてほしいとばいきんまんにお願いします。
最初は嫌がりながらも、諦めずに立ち向かうばいきんまんの姿に
ルルンは勇気がわいてきます。
しかし、すいとるゾウの強さに大苦戦!
絶体絶命のピンチの中、ばいきんまんはルルンに
「アンパンマンを呼んでこい!」と伝えるのでした ―― 。
アンパンマンとばいきんまんが力を合わせて大活躍!
さぁ!今年の夏は、みんなで一緒に〈絵本の世界〉を大冒険しよう!

映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』公式サイトより 

もうあらすじだけでおもしろそうじゃないですか?


そもそも私は別にアンパンマンの熱心なファンというわけではない。
幼い頃は、例に漏れずそれなりに楽しく見ていたと思うが、今はぶっちゃけ『アンパンマン』という作品に対する想いも普通だ。自分に子どもがいないというのもあり、一生懸命アニメを追うこともしてないし、グッズを買ったりすることもない。
数年前に、ドキンちゃんに「コキンちゃん」という妹が知らん間に生えていたことを知った程度のにわかだ。
そんな私がなぜ突然アンパンマンの映画を一人で観に行ったのかというと、単純に今年の映画が面白そうだったからだ。

私はつい最近、『サイボーグ009』に再燃していた。
009関連の書籍だったりアニメだったりを色々見返していて、「そういえば『平ゼロ(平成版サイボーグ009のTVアニメ)』の監督やってた川越淳監督って、最近どんなお仕事してはるんやろ」と突然気になり、なんとなくググって出てきたのが今年のアンパンマンの映画だったのだ。
あらすじも面白そうだったし、予告映像も良さそうだった。ていうかウッドだだんだんの映像がクッソかっこよかった

そんなわけで、009きっかけでアンパンマンの映画に興味を持ち、SNSでうっすら漏れ聞こえる前評判も良かったので映画館に赴いた。どんな捻り回転ジャンプを入れたらそうなるんだよ。

ちなみに川越監督のことは、009もそうだがゲッターロボの方でも知っていた。OVAシリーズはどれも好きだし、ゲッターロボアークも面白かった。
原作を大事にし、非常に堅実な作品を作られる方だなという印象がある。原作ファン的には毎回リスペクトがうれしい。
あと脚本の米村正二氏も、特撮の方で何度かお名前をお見かけしたことがある。たしか平ゼロの脚本も何本か担当されてらっしゃったと思う。
つまり見知った布陣で製作されている映画ということだ。こりゃ期待できるな。

そして映画館で観た結果。


めちゃくちゃ泣いた。


上映時間は1時間くらいなのだが、1時間ほぼずっと泣いてた。涙腺ガバガバ。
以下、ネタバレ有りで感想を語っていく。前置きが長くてすみません。


まず冒頭。みみせんせいの語りから、絵本をなぞった演劇会?が始まる。歌と踊りを取り入れたミュージカル。キャラクターたち(メロンパンナちゃんやクリームパンダ)による「アンパンマンたいそう」がいきなり披露される。一緒に劇場で観てたキッズおおはしゃぎ。
もう、この「キッズおおはしゃぎ」の部分がなんかわかんないけどすごくグッと来て、ここですでに泣いてた。涙腺ぶっ壊れてるの?
だって、自分が幼いころから変わらずずっと、ちびっ子たちにこんなに愛されてる作品なんだなあ…って思ったら、こみ上げてくるものがあって…。
基本的にこの後は「ちびっ子たちが物語に一喜一憂したり、アンパンマンやばいきんまんを応援している」という事実に感極まって泣いてた。これめちゃくちゃ最高の体験だからみんな今すぐ映画館に行った方がいい。

そしてそんな楽し気なムードを、案の定破壊しにやって来たばいきんまんと、ばいきんまんの作った巨大メカ。
みんなのピンチ!そういうときには!
「たすけてー!アンパンマーン!」
みんなの助けを呼ぶ声に、颯爽と現れるアンパンマン!そして流れる主題歌!

かっっっっこよすぎ。


ヒーローの鑑すぎるでしょ。自分、アンパンマンの夢女いいスか?
さらに畳みかけるように登場する、しょくぱんマン、カレーパンマン!
そして!おむすびまんこむすびまんかつぶしまんてっかのマキちゃんナガネギマンハンバーガーキッド
う、うおおおお!!!私でも知ってる戦闘要員のアンパンマンキャラたちだ~~!!ここの共闘、激アツすぎる!!!
他にも何人かいたけど私の知らない子たちだった(忘れてるだけかも)。アンパンマンてキャラ多いからね…てかばいきんまん一人に対し過剰戦力では!?

そんな過剰戦力にばいきんまんが一人で勝てるはずもなく、普通にいつも通りにぶっ飛ばされたところで。
不思議な絵本を発見し、その絵本からの助けを呼ぶ声に導かれ、ばいきんまんが絵本に吸い込まれてしまうところから物語が本格的にスタート。
ここからしばらくアンパンマンがマジで一切出てこない。思い切った脚本だな。

絵本に吸い込まれた先でばいきんまんが出会ったのは、森の妖精・ルルン(CV. 上戸彩)。上戸彩の声の演技がめちゃくちゃ上手くてびっくりした。
ルルンの暮らす森が『すいとるゾウ(CV. 岡村隆史)という冗談みたいな名前の敵に襲われどんどん枯れているから、助けてほしいとばいきんまんに頼み込む。最初は拒否していたばいきんまんだったが、すいとるゾウさえいなくなればこの世界はおれさまのもの!と、すいとるゾウを倒すことを引き受けるのだった。

今回の映画のメインヴィランであるこのすいとるゾウ、メチャクチャ強い。図体がデカいのでフィジカルにも強いし、当たると仔ゾウになってしまう謎のビームも撃ってくる。
そんなすいとるゾウに身一つのばいきんまんが敵う筈もなく、一度は破れるばいきんまん。しかしすいとるゾウにコケにされたのが許せず、見返してやる!と再戦を決意する。

ここからはじまる、ばいきんまんによるウッドだだんだんの制作過程
このシーン、色んなところで言及されているのを見かけるが、本当にアツかったし、何より描写のきめ細かさに驚いた。
鉄を溶かし、工具を鋳造するところから始まる。ノコギリ、トンカチといった子どもでもパッと思いつくような工具から、カンナやノミややすり、水準器まであって驚いた。ラインナップが堅実かつ渋すぎる。
実際の制作の過程も実に堅実だ。木を切り出し、整形・加工し組み立てる。そのすべてが丁寧に描写される。墨壺まで出てきて驚き通り越して感心した。あれ意味わかるキッズいるの?

そんなばいきんまんを最初は見ているだけだったルルンに、ばいきんまんは「お前も手伝え」と言う。言われて手を出し始めたルルンだが、引っ込み思案で不器用なルルンは何度も失敗をしてしまう。
ルルンじゃだめなんだ、できないんだ、すいとるゾウにも勝てないんだ。そう言って泣くばかりのルルンに、ばいきんまんは言う。

「おれさまなんか何回も失敗してんだ!」
「おれさまは何度やられても立ち上がるんだ!」

ド熱いでしょ。


アンパンマンに今まで何度ぶっ飛ばされてきたかわからない、それでもアンパンマンに挑み続ける、そんなばいきんまんの長年積み上げてきた経歴から発される言葉の重みよ。普通に泣いちゃった。
諦めないばいきんまんの姿に、ばいきんまんの言葉に背中を押され、ルルンは徐々に自信と希望を得ていく。

そうして二人で完成させたウッドだだんだん。完成のための最後のハンマーの一打ちを、ルルンにやらせるばいきんまんが本当、もう”パパ”で泣いちゃった。何回泣くねん。
ウッドだだんだんのパワーはすさまじく、すいとるゾウと力勝負はほぼ互角。この辺のロボ描写と巨大戦の描写は、さすがは川越監督って感じだった。たしかなボディの重量感と一撃一撃の重さ。てかチェーンナックルって、それネオゲで見たな。

この映画、ウッドだだんだんを始め、木製ロボが全部かっこいい。ウッドだだんだんのフィギュア出たら欲しいもん。
しかしそれでもすいとるゾウに勝てない。この敵、強すぎる…!
ウッドだだんだんも破壊され、ピンチになったその時。ばいきんまんは苦渋の決断をする。
アンパンマンを呼んでこい!
そう言って、ルルンを絵本の外の世界に放り投げるばいきんまん。
宿命のライバルであるアンパンマン。しかし最強を自称するばいきんまんが、何度も破れているのも事実。ばいきんまんとて、アンパンマンの実力は認めている。
ばいきんまんが敗れた今、頼れるのはアンパンマンしかいない。
そうしてルルンは絵本の世界を飛び出し、アンパンマンに助けを求めに行くのだった。
ここでアンパンマンがようやく出てくる。主役の登場、遅!

アンパンマンに出会い、事情を説明して「ばいきんまんを助けて!」と言うルルン。それに対し、アンパンマンが「え~ばいきんまんを?」みたいな態度を一切取らずに「行こう!」って即断してくれるのが本当に最高のヒーロー。
アンパンマンは、ばいきんまんのことを悪く思っているわけじゃない、というのが伝わる。ばいきんまんが悪いことをするから懲らしめているだけで、憎んでいるわけでも、倒すべき敵だと認識しているわけでもない。
ばいきんまんは一方的にライバル視しているけれど、アンパンマンにとってはきっと、ばいきんまんも”友だちの一人”なのだろうと思う。
友だちが困っていたら助ける。それはアンパンマンにとっては当たり前のこと。
あまりにも真っ直ぐなヒーロー過ぎて、感動して泣いちゃった。泣きすぎ。
最近は変にひねくれたヒーローみたいなのも世の中にはたくさんいますが、みんなアンパンマンの爪の垢煎じて飲んだ方がいいよ。アンパンマンに爪無いか、じゃあ顔食べさせてもらった方がいいよ。

ばいきんまんを助けるため、ルルンとともに絵本の世界に向かうアンパンマン。しかしばいきんまんも、すいとるゾウの姿も見当たらない。探し回るルルンとアンパンマン。それでも見つからず、途方に暮れるルルンはまた弱音を吐く。
「ばいきんまんはもういなくなっちゃったのかも」「この世界にはもう誰もいないのかも」「アンパンマンもいなくなっちゃったらどうしよう」
それに対して、アンパンマンは優しく応える。

「ぼくはきみのそばにいるよ」
「ルルンの心の中に、大切な友だち(=愛と勇気)がいるよ」


そっと寄り添うアンパンマンの言葉に、再び立ち上がるルルン。
ここ、アンパンマンとばいきんまんとで、ルルンへの接し方・励まし方が違うのが、個人的にいいなと思った。
ばいきんまんが父親的であるのなら、アンパンマンは母親的だ。
ばいきんまんは優しい声かけはしない。だがルルンを見捨てることもしない。時に厳しい態度で叱咤激励し、お前ならできる!と力強く背中を叩いてくれる。こうしたらいいんだ、と率先して行動で手本を見せてくれる。
アンパンマンは、ルルンの言葉を否定しない。優しく、辛抱強く語りかけ、決して見捨てない。ルルンが自分のペースで前を向き立ち上がるのをそっと見守り、いざというときは体を張って助けてくれる。
アンパンマンとばいきんまんに励まされ、ルルンは確かに成長していく。

そこに三度、すいとるゾウが強襲する!
立ち向かうアンパンマン、しかしすいとるゾウは、なんと捕らえたばいきんまんを人質にしていた!
人質のばいきんまんを盾にされ、思うように戦えないアンパンマン。そこでアンパンマンが取った選択は、捕らわれたばいきんまんを解放することだった。
「ばいきんまん、ルルンを守って」と告げ、ばいきんまんを解放した後、アンパンマンは隙を突かれ仔ゾウになるビームを受けてしまい、「ぱおぱお」しか言えない非力な仔ゾウにされてしまう(かわいい)。
ここのシーンも、アンパンマンからのばいきんまんへの確かな信頼が見て取れて、なんかもう熱くて泣いちゃった。
アンパンマンも、ばいきんまんの強さと凄さにはちゃんとリスペクトを持っていて、その上で立ち向かっていたんだなあ…と思うと、長年二人が築いてきた関係性にすごくグッときた。
こういう時、ばいきんまんならなんとかしてくれる!ってアンパンマンは信じてるんだ。きっと世界中の誰よりも、アンパンマンはばいきんまんのことを信頼してる。めちゃくちゃエモいだろ。
それに応えるように、反撃を開始するばいきんまん。そしてばいきんまんとアンパンマンの二人からもらった言葉に励まされ、成長したルルンも共に立ち向かう!
何度負けても、何度失敗しても諦めずに立ち上がる、そんなガッツをばいきんまんから学び、
いつも自分の心に宿る大切な友だちを、愛と勇気
をアンパンマンから学び、
覚醒するルルンのシーンは胸が熱くなるので是非見てほしい。


もう内容ほぼ喋っちゃったけど、最後はすごく爽やかに終わるので、ラストシーンはぜひ劇場で見届けて欲しい。
久しぶりに『アンパンマン』という作品と真面目に向き合い本気で見たのだが、愛や勇気、努力の大切さ、諦めない心、思いやりと優しさ、正義といった要素を嫌味なくストレートに伝えてくる内容で、今この歳になっても真っ直ぐに響いてきた。
きっと台詞の一つ一つにもかなり気を遣われているのだろう、全てのキャラクターの言葉遣いが優しく、ばいきんまんでさえ言い回しが柔らかい。心を傷つけるようなことは決して言わない。そんな作品自体が持つ優しさにも泣いてた。

そして何より、やっぱりそんなアンパンマンとばいきんまんを応援するちびっ子たちの存在が一番心に響いた。
ばいきんまんがピンチになった時、「ばいきんまんやっつけられちゃう!」と心配そうに声に出していた子がいた。
アンパンマンと一緒に「あんぱーんち!」と言いながらなんかシャカシャカ鳴るおもちゃ?みたいなものを振り回している子がいた。
映画が終わった後、劇場を出る際に「たのしかったねー」とパパに話している子がいた。それに対しパパが「また映画観ようね~」と言っているのが幸せ過ぎてまた泣いた。もう映画終わってるのに。
子どもたちと一緒に映画を観る、という体験を久しぶりにした。
アンパンマンの映画はキッズ向けになっていて、映画が始まっても劇場が真っ暗にならないことを初めて知った。優しい。キッズがビックリしないように、音量も若干控えめになっているらしい。優しい…。優しさに包まれながら劇場を出た。心が温かくなった。


そして劇場を出たところで、一緒にアンパンマンを見ていたキッズが外にあったクレヨンしんちゃんの映画(しんちゃんが恐竜の着ぐるみみたいなのを被ってやつ)の立て看板を指さし「次はあれ観たい~!」と言っていた。
わかる。映画の予告見て私もそれ思った。恐竜だって。面白そうだよね。恐竜大好き。かっこいいもんね。

私もキッズなのかもしれん。


(おわり)


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