7期ゲンロンSF創作講座(第4回)梗概感想

聴講生の縦谷です。第4回のテーマは「最新技術をテーマにSFを書いてみる」ということで、リサーチとネタ出し両方必要というちょっと大変な課題だなと、外野から憐憫の情と共に応援しておりました。

というわけで提出された全作の感想を掲載させていただきます。今回から特に好きだった作品には★を付けさせていただきました。拡散支援のためにタイトルにリンクを貼ってみましたが、飛び先が間違っていたりしたら教えてください。それではどうぞ。

朱谷『
酔宙夢譚
「木から作られるお酒」というネタに、舞台を異星にしてスケールを付け足して大きく見せた設定に新しさがあり、とても面白く読みました。巨樹に覆われた惑星も要約ながら書かれていて、梗概時点でSF的空想感も味わうことができました。実作ではこのあたりもっと細かく描写されると思うので、より胸躍る感じに仕上がりそうです。「酒を口に含むと宇宙の始まりから終わりまでを幻視する」という設定もよいですね。こちらも実作での描写が楽しみです。

みよしじゅんいち『ファブリンク・ダンス
これまでのみよしさんの作品とは少し路線の違うロマンチックなテイストのお話で、面白く読みました(とはいえ前回の実作『ジャイロイドウケツ』で見られたロマンチックの片鱗を私は見逃していません)。実作ではわりと重要人物なような気がするアレクのキャラクターや心情(七海が遺志を継ぐ、とあったので)をもう少し感じたいなと思いました。


雨露山鳥『声優たちの話』
梗概をざっと拝読した感じだと「AIボイスチェンジャーが導入された未来では、声優が純粋な演技の実力差勝負になる」という前提が私の肌感覚ではあまりしっくりこず、そのため真霧の職業観の変化に共感しづらかったです。とはいえ瑠華のボイチェンを使ったレコーディングのシーンがしっかりあればばこの感覚は解消されるのかもしれず、真霧の心情変化を含めて実作で読みたい内容だなと感じました。


藤琉『碧光の仔象
フォトンペットのかわいさ、不思議さ、独自の特徴などをうまく描くのがキモになりそうで、そのあたりのヒントがもう少し梗概にもあると実作が想像しやすくなりそうです。また、仔象が消失点に吸い込まれ、時代を超えて飛び出てくるところに何らか理由が欲しいなと感じました。フォトンペットを通じてふたつの時代を行き来する構成は面白そうですね。最後のフェルメールのシーンのオチも、気が利いていて素敵だなと思いました。

岡田麻沙『チャッピーの鎖
「ブロックチェーンが恋をした」という冒頭は引きが強くインパクト抜群ですね。梗概では「ブロックチェーンの恋」というより「ブロックチェーンを搭載したAIの恋」という感じに見えたので(自分の知識不足説もありそう…)、実作ではブロックチェーンならではの恋模様をもう少し詳しく知りたいなと思いました。この理解度が上がると、後半の多数決合戦というか、信用スコアを巡る町内バトルがより面白くなりそうな気がします。


★瀬古悠太『実体のない執刀
Saverの設定と「幽霊を手術する」というアイデアが素晴らしいうえ、さらにストーリーもまとまっておりとても面白かったです。磁場による幽霊の存在確認の流れはよく考えられているなと思いつつ、「理屈は完全にはわからんけど、Saverで霊の肉体と繋がっている……!」くらいの感じで、もう少しSF+オカルトな雰囲気を維持したまま進めた方がより不気味さが出て驚きに繋がりそうだなとも感じました(このあたりの雰囲気は実作での霊や手術の描写などにも左右されるかもしれませんが)

やらずの『盲目
「ネットから得られるあらゆる情報が価値を失い、暴動が起き、世界が滅びた」という展開が梗概でわりと端折られていたのでちょっと気になりました。このあたりを描きたいわけではないことは承知しつつ……大事な舞台装置ではあるので、この経緯にいかに説得力を持たせられるかが、読み手を物語に引き込めるかどうかの分水嶺になりそうです。この設定がある程度リアリティを持って描かれていると、後半の少女の話に気持ちが入り込めそうですし、ニュースが流れている光景なども、より未来的に、精密に描けそうな感じがします。

夢想真『地球は誰のもの
宇宙船の中で徐々に追い詰められていくエイリアン的ホラーものとして読みました。宇宙船の中で起こるホラー的な事件の理由付けを「ガニメデに住む生命体」というところ以外にも入れる、たとえば宇宙船が持つ固有のテクノロジー由来のものだったりすると、お題もよりクリアしつつ、より面白くなりそうだなと思いました。また、実作ではAIが種明かしをする前に、主人公たちが徐々にネタを掴んでいく経緯などがあると謎解き感が出そうですね。謎の仕事を持ってきた山本の目的と正体がめっちゃ気になったので、後半に出して種明かしさせるといいのかも、とも思いました。

真崎麻矢『イドモナラクネ
イドモナラクネがお話にもう少し効いてくるとより面白くなりそうな感じがしました。ミアがイドモナラクネを渡した理由が、ミアの願望や本心と繋がっているとかでしょうか? シンプルにやるとしたら、アヤトとミアを何らか特別な関係にして、アヤトがミアに対して無理やりmitosを導入させて、それをイドモナラクネが助けるとかにするとか……? これをやるとコモンが「ミアがの望んだ事ならば唯の上司である自分に怒る権利があるのか」という葛藤のすえ「人との距離感が変でも、人と上手く話せなくても俺にとっては大事な部下だ」という結論にたどり着く流れも自然になるのでは、という提案でした。

羽澄 景足を取られる森のおじさん
酒に呑まれたおじさんたちの悲喜こもごも、という感じで面白くなりそうです。おじさんたちが「不味い酒を手作りする」というところの導入にもう少し説得力が欲しいなと思いました(「逆にそういうことになった」とかで省いてもいいかもしれませんが)。不味い酒をつくる、という目的でなくともいいのかも。お話としてはオチである「多種多様の草花が生い茂るようになっていた」ところをもっとエスカレーションさせて、魔訶不思議な怪しい森が完成していた……みたいな形にもっていくとより盛り上がりそうだなという気も勝手にしました。

広海 智FAKE愛
AIである那由多がAIが作った絵を擁護し始める展開がよいですね。とても楽しんで読ませていただきました。AIがマティスの足跡を辿りながら作風を取り込んでいく、というのもAIらしからぬ地に足感というか肌感があって面白かったので、いっそのことモロッコ系アメリカ人を登場させずに、意志を持ったAIの単独犯行にするとよりギャップが出て良さそうな気も。それとやや蛇足な指摘ですが、NFTはブロックチェーンによって贋作の可能性を排除している(だからこそ唯一性が担保されて希少価値が出る)というものなので、NFTアートに贋作が生まれた、という状況設定にする場合は、このあたりの信頼システムを突破する何らかのハック技術をふわっとでも作中で提示する必要があるように感じます。

★維嶋津ピルグリム
物体にモーメントを単一方向に制御する力を得た謎のカルト集団、そして迫りくるワールド・ジャンプ・デー……という、驚きに驚きが重なるケレン味に魅せられました。アイデアはめっちゃ面白いなと思いつつ、1万字にまで膨らませるためにもう少し謎の能力が日常で色々なごたごたを起こす展開が必要なのかも……?とも思いました。でもめっちゃ面白かったです。

蚊口いとせ『自分推し
ハグの再現装置という技術とアイドルの話を繋げたところにオリジナリティを感じました。はっぴーちゃんのハグを再現するために推したちが必死こいて色んなデータとか入れているんだろうな……などと考えると面白かったです。このあたりトルソーの設定に外連味のある嘘がつけるとSF的にもっと魅力あふれる感じになりそうです。最後もいい感じだなと思い、実作が楽しみです。

ゆきたにともよ『UBAKAWA
電子皮膚の技術が変装装置になるのは絵として面白いですね。それ以上の役割を果たさせる、またはディテールを増やすことで、もっともっと面白そうなことが起こりそうな感じもします。また実作ではある程度書き込まれると思うのですが、梗概の内容がわりと話の筋を説明する感じになっているので、姉弟の心情が梗概からそこはかとなく漂ってくる感じがあるとよりと良いのではと思いました。

木江 巽 『お腹すいたって言いに来た
「子供時代を短縮された人類」という設定が面白かったです。博士が最初の世代の新人類だった、という展開も意外性があり面白かったです。博士が恋をしない理由が不老不死だったから、というところは理由付けとしてちょっと強引な気がして引っ掛かりました。け会話シーンがメインになるようなイメージもあるので、実作ではうまくキャラを外に連れ出したりですとか、印象的な回想なんかも織り交ぜて、『博士の愛した数式』みたいな感じでゆったりした雰囲気で動きのある話の運びにすると良さそうだなと思いました。

渡邉 清文 『第1回月面ダーツW杯決勝戦、もしくは人類の叡智の祭典
月面を的に見立てた宇宙船のダーツ、というのはとても面白い発想ですね。ただそもそも宇宙船はけっこう着陸地点の精度が高いイメージがあり、お話の中にあるとおりかなり接戦になりそうなのが予想できてしまう&スケールがでかすぎて1投ごとにすごい時間がかかって間延びしそう……あたりの理由で、梗概を見る限り実際に競技としてみたときにあんまり面白くなさそう……という気もしてしまいました。ルールを多少変える、描写をがんばる、このゲームならではの観衆ならではの楽しみ方を提示するなどして、サッカーW杯なみに各国ワイワイ盛り上がる感じや、スポーツのドラマチックさを説得力を持って実作で書けると面白い作品になるのではと思いました。

★岩澤康一『地上の太陽
素晴らしい梗概だと思いました。核融合発電=太陽=アステカの生贄という重ね方がまず素敵。このあたり岩澤さんの作風を感じられました。1500年代のアステカ文明と2020年代の現代が交互に描かれながら、終盤ではふたつの隔たれた時代が溶け合うように人物が入れ替わり、神話とテクノロジーが重なりあう。読み進めているうちにどんどん気持ちが昂りました。ラストの神話的な荘厳さと高揚感を、ぜひ実作で味わいたいです。

文辺 新 『誰もが時計職人
梗概の冒頭に書かれる近未来の設定に「そういう時代も来そうだな」感がもう少しあるといいなと思いました(実作ではもう少し詳しく書かれるのかもしれませんが!)。そのうえで、ここまで複製技術が普及している設定であるならば、すでにコピー対策で何らかの規制が敷かれているとか、あるいはすでに大量のコピーが出回ってブランドの価値が棄損されているなど、ブランドを取り巻く状況が現代と比較して変わっていそうだなという気もして、そのあたりもう少し未来予想に説得力が欲しいなという気がしました。

諏訪真『トーチ
ハジメとケンジというふたりの子供たちの交流を通じて、格差に隔てられた社会の在りようを描く友情&社会派小説タッチな物語として味わい深く、面白く読みました。テクノロジーの発達と格差によるゲーテッドコミュニティの確立、という未来予想図については、わりと色々なメディアで描かれたり語られたりしているものではあると思うので、そのあたり独自性を担保するような細かい設定が加わりつつお話に絡んでくると、より面白くなるような気がしました。

★大庭繭『指先の声をきかせて
温度や柔らかささえ再現する死んだ生き物のレプリカ、という着想が面白く、セリと人魚の孤独な心情もしっかりと想像でき、梗概として非常に楽しく読みました。実作ではセリと人魚のひそやかな限りある交流を味わえそうで、ぜひ読んでみたいと思いました。タイトルも素敵です。

宮野 司 『禁断の種
商社勤めで南の島に駐在させられているという主人公の設定がありそうでない感じがしてとても新鮮でした。たしかに商社の人ってたまにとんでもないところに派遣されてますよね。ヤマアラシによるSCUBE3の増産、というアイデアも突飛でユニークで、今のままでもコメディタッチのお話として成立しているなと思いつつ、アムルタ族に追われててんやわんやの後半にかけて、もう一段階エスカレートするぶっ飛び展開があると、より面白くなりそうだなと思いました。

中野 伶理 『キノコ狩りにはうってつけの日
菌糸体やキノコに対しての知識の掘り下げが深く、それゆえアイデアも独自性があるところが魅力的でした。菌糸煉瓦にどのようなメリットがあるのかについては(実作ではおそらくもう少し書かれると思うのですが)もう少し知りたいなと思いました。冒頭に何気なく書かれている「特定の植物や菌類のにおいや音から、簡単な人間の言語に変換するアプリ」というところがわりとすでにインパクトがあり、それと比べてしまうせいか、菌糸煉瓦のインパクトがちょっと弱くなっているような印象を持ちました。

むらき わた『それは、とても幸福な生命維持活動
治験が社会システムの中に組み込まれている社会、という設定は面白いと思いつつ、ヴィタルが「安楽死を希望する施設兼暗殺を遂行する施設」というふたつを兼ねている事情がいまいち読み取れない感じがあり、少し引っ掛かりました。トウセイが国家元首でありすべての黒幕だった、というオチもちょっと唐突だなと思ってしまいました。

カトウ ナオキ『手渡される手紙
未来予測→結果という流れがテンポよく、かつ徐々にスピードアップしていく展開は、どうなるんだろう?と先に読ませる力があるなと思いつつも、「未来を予測する○○」という基本設定はかなり既視感があるものなので、細かい設定のアイデア、見せ方、展開などに何かしらの発想の飛躍があってほしいなと感じました。配達員が手紙を渡してくる、というアナログ感はイメージしやすく良い感じでああるなと思いつつ、梗概時点では「データ収集で予言する力を手に入れたテクノロジー」とはいまいち結び付かないような気もしたので、もう少し補助線が欲しいなと。

国見 尚夜『大いなる遺産を求めて
遺産を手に入れるために失踪した母親のフェイクを作ろうとする、というスタート、セリフ回し含めて小悪党っぽい感じがあり、面白かったです。ただ母親のフェイクを作る→遺産が手に入る、という結論にいたるところはもう少し説得力が欲しいなと感じてしまいました。また「母親のフェイク映像」だとちょっと弱い気がするので、いっそのこと実際に人間そのもののフェイクが登場するような感じにしてみるとかどうでしょう。オチに関してももう驚かせてほしいなと。フェイクの母親の登場が1回出てきてそれきりというところも寂しいなと思ったので、オチに上手く絡めるといいのかもしれません。

小野 繙『ハルシネーション・ラブ
AIの携帯が当たり前になる小学生たちの話ということで、AIの強さによってクラス内ヒエラルキーが決まってしまう感じや、ようわからん近所の大人の登場など、解像度高めの未来の小学生生活が面白かったです。嘘ばかりつくうーちゃんにデータセットを食べさせるかどうか、という終盤の葛藤は収まりがいいなと思いつつも、展開としてはわりと想像できるので、もう少しひねるか、またはノスタルジックな描写で圧倒するかのどちらかでしょうか(雑な感想……)。「うーちゃんはミサキの腕の中でうねうねと蠢いている」という最後の一文はいいですね。あと「ミサキのヒエラルキーは教室の後ろで飼っている金魚と同レベルになってしまう」という一文も読んでいて笑いました。

矢島らら『トリック・オア・バイオメトリックス
「エイリアン」認証率99.9%のバイオメトリックス・カメラという設定や、ハロウィンという愉快な舞台裏で子供たちを救おうと奮闘する展開を面白く読みました。現状は民間人の大人たちの話になっているのですが、いっそのことFBI秘密捜査官的な2人組が活躍する話にしたりすると、裏でバレず頑張るところに説得力が出て面白くなるような気もします。エイリアンになるとこんなひどいことが起きてしまう……というところの説得力が増すと、子供たちを助ける/助けられないというところでハラハラ感が増しそうな気がしました。

佐藤玲花『翻弄
AIに精神を蝕まれていくホラーものとして読みました。ストーカーっぽいAIという組み合わせは面白いなと思いつつ、コンピュータが意志を持って話しかけてくる、という大枠はわりと見たことがあるものではあるので、作中でどれくらい恐怖感で演出できるかがカギになりそうです。もしくはAIらしいストーカー行動がもっとネタ的に含まれると新鮮さが出るのかも。

谷江 リク 『インターネットに注いだ毒と彼の贖罪の機会
CDNの着眼点は谷江さんならではですね。SFとして見たとき、福井晴敏さん的な硬派なドラマとして見たとき、いずれももう少し大きな嘘というかハッタリが欲しいなと思ってしまいました。梗概としてはわりとストーリーが説明される傾向が強く、読み手としてはキャラの印象や実作のトーンをもう少し感じられる内容だとより良いなと思いました。

鹿苑牡丹/ろくおんぼたん『静かの海、かぐやの城で
「ITを駆使したオタク三兄弟の引きこもり型復讐」というテーマは面白そうだなと思いました。梗概では色々なトーンが織り交ぜられているせいか、ちょっと混乱しました。お話のベースとしては現実に近い話で、城の設定は外連味が強め、キャラクターの行動は突飛(サークルクラッシャーを雇おうとするコンサルなど)、ただ一方でキャラの心情は途中で細かめに説明されており、最後は恋愛劇に着地して……などなど盛りだくさんで、これらが実作でどのような雰囲気でまとまるのかがちょっと気になりました。

三峰早紀『クレイ、どうか穏やかに
梗概の時点で温かいもの触れているような読み味があり、その温度感を楽しみながら面白く読みました。一方で「半永久的に自己補修を繰り返すマンション」、「記憶障害の陶芸家」、「陶芸からうまれる不思議な生物」といった各設定が魅力的だったぶん、それらが束ねられた後半以降にもっとケミストリーが欲しいな、という気にもなりました。あるいは逆に記憶障害の設定は取っ払ってしまって、自然に思い出を振り返る話にするとシンプルになってよいのかも、ともふと思いました。

池田 隆『投げられた先で
「遺伝子操作が失敗した世代」という形で、デザイナーズベイビーを社会問題に落とす設定アイデアが新鮮に映りました。一方でややドキュメンタリータッチな印象というか、その社会問題が淡々と記述されている気もして、V.の登場などちょっとした謎要素で期待が高まるぶん、問題を前提としてもう少しお話が転がってほしいなという気もしました。あるいはドキュメンタリー側にがっちり寄せてよりリアリティのある世界を構築する方向なのでしょうか。

多寡知 遊(たかち・ゆう)『その音が、響くとき
「貨幣経済が存在しない高度な異星文明」というところは面白いですね。ただ資本主義にまみれた地球人である自分からは、ちょっとその状況が想像しがたく、貨幣経済が発展しなかった納得できる理由が欲しいなと思いました。細かいところですが、とある天体に決済や取引のデータがすべて保存されてバックアップが取れていない……というのはやっぱり高度な文明としてはセキュリティ的には考えがたいので、もう少し工夫がほしいかなと思いました。カイのキャラと実作のトーン次第な気もしますが、復縁を求めるために手を染める犯罪としてはちょっと規模がデカいな……という気も。「清算」のオチは洒落が利いていて面白かったのですが。

小林 滝栗『コンビニで小説を買う
ちょっと先の未来を描く、というコンセプトが興味深く、またコンビニで小説がすごく売られている、という微妙な違和感も楽しかったです。一方、分析結果がそうであったからといって、コンビニの店内レイアウトが本で半分占められる、というのが意思決定としてはありえるのか……というのが気になりました。すでに実験は何度もされておりいずれも大成功を収めている、というようなお膳立てを入れるとか、すでにこういうシステムがわりと普及している、とかの設定にしたほうがいいのかも。現実世界に近い時代や舞台の小説であるぶん、リアリティラインについて読者側からのツッコミは激しくなると思うので、社会全体の状況にもう少し説得力が欲しいなと感じました。

やまもり『流れる者、留まる者
SF風設定をベースにした旅行記といった感じで読みました。冒頭に良い感じの世界観を感じることができたぶん、その後集落の中での話に終始してスケールがあまり感じられないのは残念に思いました。全体的に渋い雰囲気で、もう少し事件ないしキャラの魅力が欲しいかも。



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