公共座標系と任意座標系

はじめに

空間情報で扱うデータには座標はつきものです。ARしかり、VRしかり、GISしかり。
異なる座標系のデータを一意に扱うためには、座標系、つまり基準を揃えてあげる必要があります。
今回は地理空間情報における地図データの座標系の中でも、公共座標系と任意座標系について書いていきます。

公共座標系とは

公共座標系は、平面直角座標系と呼ばれる方が多いと思います。
日本に19の基準点を設定した、公共測量に用いられる座標系です。
近年の測量は、原則、公共座標(平面直角座標系)で測量されています。

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引用:https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/jpc.html

任意座標系とは

任意座標系は基準点を任意に定めた座標系です。
公共座標系では日本に19箇所基準点を設定し、標準化しています。
しかし任意座標系は、基準点を測量者が任意に設定できるため、測量成果ごとに基準点が異なります。
したがって任意座標系と任意座標系、任意座標系と公共座標系の地図データは位置合わせが非常に困難であると言われています。

任意座標系は、登記に添付される地積測量図(下図)などに多く見られます。

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日本における測量の歴史は遡れば平安時代まで及びますが、地籍測量図は主に明治以降に記されたものになります。当時の技術では現代のGPS等を用いた測量よりも精度は大きく劣り、さらには税金対策として実際よりも狭く記すなど地図データとしての精度は低いと言わざるをえません。

公共座標系と任意座標系の位置合わせ

高精度かつ標準化された座標系である公共座標系と、低精度かつ任意の基準点を持つ座標系である任意座標系。
これらをGIS等で扱うには非常に骨が折れます。

地理空間における座標の位置合わせには、基準点という共通項があるからこそ可能であるため、データごとに基準点が異なる任意座標系と公共座標系が基本的には不可能です。

そこで座標だけでなく、他の情報を活用した位置合わせが考えられます。最も容易に思いつく手法としては、地番によるデータ間の紐付けです。
しかしながら地番による紐付けは文字列突合となるため、「東京都千代田区千代田1−1」と「東京都千代田区千代田一の一」では単純比較ができません。そのために地番の変換ライブラリなどが整備されつつありますが、表記ゆれがあまりにも膨大なためあまり進んでいないのが現状です。

では公共座標系と任意座標系の位置合わせはどうすればいいのか

基本的に座標による紐付けはほぼ不可能です。これは前述したように基準点が定まらず、任意座標系同士でも基準点が異なるためです。

したがって座標以外の情報によるデータ間の紐付けが最も現実的です。
ここで重要な事としてはどの情報を使うかです。
地番によると都合が困難であることはご理解いただけたと思います。
ではそれ以外の情報は何があるでしょうか。
地目?形状?頭上面積?いくつか考えられます。

しかし思い出してください。地積測量図のような任意座標系データは精度が低く、現代の公共座標系で作成された測量成果とは地目も、形状も、頭上面積も異なります。

思いつく限りの使えそうな情報はすでに先人たちがいくつも試しているでしょう。
ではやはり任意座標系と公共座標系の位置合わせは不可能なのでしょうか。

結論から言えば可能です。
例えば既存手法として、特開2012-137933特開2005-115130が挙げられます。

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しかしこれらは(上図のように)現地で写真やトータルステーションによるデータ収集が必要になります。
これでは日本全国の任意座標系に対応するには多くのコストが掛かります。

2023/12/23更新

てなわけで日本全国の任意座標系に対応するアプローチを書いてみました。


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