SNSで繰り広げられるAIイラストの論争
ご意見等ありましたらマシュマロにでもどうぞ
はじめに
近年、AIによるイラスト生成精度は非常に高い水準になってきました。
Stable diffusionに始まり、最近では非常に高精度な二次元キャラクタイラストを生成できるNovel AIが登場し、誰でも高クオリティな二次元キャラクタを生成できるようになりました。
そこでSNS上で巻き起こった論争が、AIイラストの是非です。
これまでのAIは二次元キャラクタテイストのイラストはちょっと微妙な感じで、TwitterやPixivに投稿されているようなイラストには及びませんでした。
※なお、二次元キャラクタテイストのイラストを生成できるmimicというサービスが出てときも大きな議論が巻き起こりました。
しかしながら、Novel AIはその問題を解消し、二次元キャラクタテイストのイラストを文字を入力するだけで誰でも生成できるようにしました。
ここでSNS上では大きく、AIイラスト肯定派と否定派に二分されたように思われます。
Twitterから肯定派と否定派の意見をそれぞれ列挙してみましょう。
全体的に肯定派は違法性がない便利な道具だから使ってもいいでしょ、否定派は法的に問題なくても脱法的だからダメ、という感じでしょうか。
肯定派の意見
法的に問題ないのだから使っても良い
技術の進歩は止められない
便利な道具は使えばいい
誰でも絵を描けるようになるのは良いことだ
否定派の意見
今はまだ法律が追いついていないだけで実質違法
勝手に他人の絵を学習しているのだから盗作と同じ
人間の描いたイラストの中にAIイラストが混ざるから使うな
AIの学習元が某無断転載サイトだからそのAIが生成したイラストも違法
論争の焦点
SNS上で巻き起こっているAIイラストに関する論争ですが、大きく3つの議論に分類できます。
それぞれの議論について考察していきます。
法的な議論
法的な議論に関しては、基本的にAIイラストは合法であるという結論は出ています。
いわゆる改正著作権法、第三十条の四のニですね。
ですので、基本的にAIが生成したイラスト自体に違法性はないし、それを使用しても問題はないということです。
ここらへんで一旦落ち着きそうになりましたが、Novel AIが無断転載サイトの画像を学習に使っているということがわかり法的議論が再熱。
これ自体も基本的に問題は無い認識です。無断転載サイトでもTwitterでもPixivでも、投稿された画像には著作権が存在します。
しかし、上記の情報解析としての利用であれば問題ないという結論に至っています。
また、仮に違法性があったとしても、それを証明する手段が事実上無いのが現状です。
AIの学習に使ったデータは基本的にわかりません。
また、学習した時点でデータはただの数値でしかなくなります。
そこから生成されるイラストが、実は違法な場所や手段によって学習したAIによるものだったとしても、生成されたイラストから証明することは不可能でしょう。
倫理的な議論
法的な問題は現状無いという結論になっても、では倫理的にどうなのかという議論が発生しました。
違法でなくとも、他人の絵を勝手に拾って(しかも無断転載サイト含む)学習したAIが生成したイラストは倫理的に許されるべきではないという議論です。
これに関しては意見が別れて平行線を辿ることだろうと思います。
ただ、AIが生成したイラストはNG、Adobe Photoshop等のAI機能を使って描いたイラストはOK、AIイラストをベースに加筆はNG、AIイラストを模写するのはOK等という状況になっているので、そのへんの線引は否定派でも分かれるのかなと思います。
ちなみにAIを作ってる側の人間からすると、世の中の便利なサービスの多くは、他人の位置情報や購買情報、行動履歴や検索履歴、趣味嗜好からおおよその住所や年齢といった様々な情報を(匿名化して)勝手に収集して提供しているんだけどなーなとか思ったり思わなかったり。
情緒的な議論
これはもう議論というか感情論ですので肯定派とか否定派とかは無いですね。
例えばVtuberが自分のファンアートをAIで描かないでほしいとお願いしています。
お願いですので、対応するか無視するかは個人の自由に委ねられますが、やめてほしいとお願いしている人へ意図的にAIイラストをぶつけるのは、人としてどうかと思います。
あとはイラストレーターの仕事が無くなるといった意見もありますが、多分しばらくは無くならないんじゃないかなと思います。
AIがそれなりのイラストを生成できるようになったとはいえ、それこそ人間の情緒的な部分をAIで再現するのは非常に難しいテーマのひとつです。
逆に言えば、そういった情緒的な部分を表現できないイラストレーターは残念ながら淘汰されるのかもしれません。
AIイラストを規制できるか
さて、そんな議論の渦中にあるAIイラストは規制できるものなのでしょうか。
答えはNOだと考えられます。
まず、規制するためにはAIイラストの定義が必要になります。
しかしながら、AIイラストの定義は非常に難しいと言えます。
前提として、AIイラストと人間が描いたイラストの区別がつかないからこれほど大きな議論になっているので、本人が「AIで描きました」と宣言しない限りそのイラストが人間とAIのどちらが描いたのか判別することは事実上不可能です。
Skeb等のイラストを扱ったWebサービスでもAIイラストじゃないですよと宣言するチェックボックスはあるものの、クソ真面目に対応する人は多くないと個人的に思います。
AIイラストを見分けるコツとして、髪や手の形といった細部の描画や解像度、背景との親和性などを指摘して「これはAIイラストだ!」とコメントしている人もいます。
ですが、それはあくまでも個人の主観によるものですので、投稿者本人がAIイラストですと宣言しない限り答え合わせができません。
同時に、投稿者が自分で描いたと宣言しているイラストに対して(宣言してなくてもダメだと思いますが)「これはAIイラストだ!」と言い放つ、AIイラスト警察による魔女狩り的なAIレッテル貼りも既に(Pixiv等で)散見されます。
上記のような観点でAIイラストを判別していることを考慮すると、AIレッテルはある種の誹謗中傷にもなるのではないかと考えられます。
まぁここでよくある流れとしては「AIイラストが出てきたせいでAIイラスト警察にAIレッテル貼りをされるから既存のイラストレーターが萎縮してしまう」というものですが、ここで悪いのはAIイラスト警察であるのは言うまでもありませんね。
さいごに
AIイラストの論争は現在進行系で盛り上がっています。
AIの生成するイラストが急速に発展したため、こういた議論が発生することは必然だと思います。
そしてAIによって仕事が奪われるかもしれないと危機感を抱いているイラストレーターの皆さんの気持ちもよくわかります。
ですがそんなイラストレーターの皆さんに一言伝えたい。
研究していたイラスト生成AIが一瞬で3世代くらい周回遅れになってもう追いつけないよねってレベルにされた私よりマシ
(今までの研究費返せよマジで)