特定創業支援事業を活用するメリット
皆さん、こんにちは!
中小企業診断士の髙橋 規尊(たかはし のりたか)です。
【無料の創業相談窓口を活用する】の記事で、国の認定を受けた市区町村の「特定創業支援事業」を利用し、利用した証明書を入手することで、幾つかのメリットを得ることができることを紹介しました。
今回は、特定創業支援事業を活用するメリットについて紹介していきます。
◆特定創業支援事業とは?
そもそも特定創業支援事業とは、「市区町村または認定連携創業支援等事業者が創業希望者等に行う継続的な支援で、経営、財務、人材育成、販路開拓の知識が全て身につく事業」を言います。
※認定連携創業支援等事業者とは、市区町村と連携して特定創業支援事業を実施する創業支援事業者のことであり、金融機関、商工会議所、創業コンサルティング会社などが該当します。
特定創業支援事業の代表的な例としては、4回以上の授業を行う創業塾、継続して行う個別相談支援、インキュベーション施設入居者への継続支援など、原則として1ヶ月以上継続して行う支援があります。
特定創業支援事業を活用することで、経営、財務、人材育成、販路開拓の知識が全て身につくだけでも大きなメリットですが、活用した証明書を入手することで、次の支援措置を受けることができます。
出典:『産業競争力強化法における市区町村による創業支援/創業機運醸成のガイドライン』中小企業庁より抜粋
メリット①:登録免許税の軽減
株式会社や持分会社(合同会社、合名会社、合資会社)を設立する際には、登録免許税を法務局に納める必要があります。特定創業支援事業の証明書を使うことで、下図のように納める登録免許税額を少なくなります。
株式会社の場合、単純計算で約2,143万円以上の資本金であれば、0.7%の金額が15万円を超えますので、多くの場合に登録免許税の最低額が適用されます。それでも、7.5万円の支出を抑えられるのは魅力ですね!
ただ、特定創業支援事業は、原則1ヶ月以上継続して行う支援であり、受け終わってから証明書を申請して発行されるまで、1~2週間要します。
7.5万円を節約するためだけに法人設立時期を先延ばしすることで、ビジネスチャンスを逃したり、立地条件の良かった店舗物件の契約を逃す場合もありますので、経営者として、優先順位をしっかりと見定めて判断しましょう。
また、法人登記する地域の特定創業支援事業を受ける必要がありますので、合わせて注意しましょう。
メリット②:信用保証協会の創業関連保証の特例適用
創業時に民間金融機関から信用保証協会の保証付きで資金を借りる際には、信用保証協会の「創業関連保証」の枠の中で保証を受けることになります。
下図のように、対象期間が長くなるので、時間に余裕をもって資金調達できる支援措置です。
メリット③:新創業融資制度の自己資金要件の充足
創業時に活用できる融資制度には、上述の民間金融機関から資金を借りる方法の他に、政府系金融機関である日本政策金融公庫から資金を借りる方法があります。
日本政策金融公庫の融資メニューの中には、原則、無担保・無保証人の融資制度である「新創業融資制度」があります。新創業融資制度を利用するには、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を準備している必要があるのです。
※創業資金とは、創業するために必要な設備資金と創業後の一定期間の事業展開に必要な運転資金を合計した資金を言います。
この自己資金要件に関して、特定創業支援事業の証明書を使うことで、本要件を満たすものとして扱ってくれます。
一方で、自己資金要件を満たしたからと言って、融資審査が通りやすくなる訳ではありません。融資審査では、自己資金をどれだけどのように準備してきたかも大事な審査ポイントになります。
融資希望額にもよりますが、自己資金を十分用意できていない状態で、特定創業支援事業の証明書をもって自己資金要件を満たして融資申請する場合は、提出する創業計画書のレベルを高めておく必要があるでしょう。
メリット④:新規開業資金の貸付利率の引き下げ
こちらも日本政策金融公庫の融資制度に関わるメリットです。特定創業支援事業の証明書を使い、日本政策金融公庫の融資制度の1つである「新規開業資金」で融資を受ければ、利率を0.4%引き下げることができます。
一方で、創業関係の融資制度の中には、新規開業資金の他に「女性、若者/シニア起業家支援資金」があります。
これら2つの融資制度では、それぞれ単独で利用すると、担保・保証人の有無は商談と審査によって変わりますが、上述の新創業融資制度を併用することで、原則、無担保・無保証人で資金を借りることができます。
ここで、利率について留意点がでてきます。
「新規開業資金」と「女性、若者/シニア起業家支援資金」それぞれについて、「新創業融資制度の併用」「特定創業支援事業の活用」を組み合わせると、次のように利率が変わってきます。
「新規開業資金」「女性、若者/シニア起業家支援資金」共に、新創業融資制度を併用することで、いずれの組み合わせでも0.4%多くなっています。これは、無担保・無保証人になるためです。
赤枠部に注目すると、「特定創業支援事業の活用」の有無で0.4%少なくなっています。これが、「メリット④:新規開業資金の貸付利率の引き下げ」を意味しています。
一方で、「女性、若者/シニア起業家支援資金」に目を向けると、「特定創業支援事業の活用」の有無で利率が変わっていません。これは、「女性、若者/シニア起業家支援資金」が、既に優遇された利率を適用する融資制度だからです。
ですので、「女性、若者/シニア起業家支援資金」の対象者には、このメリット④は当てはまらないので、あまり利率に目を奪われないようにしましょう。
なお、現在の適用利率を調べたい方は下記からアクセスしてください。
メリット⑤:各種補助金への活用
このメリットは、前掲の『産業競争力強化法における市区町村による創業支援/創業機運醸成のガイドライン』には載っていませんが、とても重要なメリットです。
国や自治体には、事業展開に必要な資金を補うことができる補助金制度があります。そして、補助金制度の中には、特定創業支援事業の証明書を使えるものがあります。その主な補助金は次の通りです。
各種補助金・助成金については、各種HPがありますし、解説記事もネット上に溢れているので、ここでは割愛しますが、東京都の助成金では、特定創業支援事業の証明書がない、または間に合わないから申請を断念されたケースが少なくありません。
また、販路開拓に多額の資金を投入する場合、持続化補助金の補助上限額の引き上げはとても魅力的ですね!
◆創業地の特定創業支援事業の探し方
これらのメリットを得るために、創業する地域の特定創業支援事業を探すには、次のような方法があります。
①下記の中小企業庁のwebサイトで認定創業支援事業計画の概要から調べる
②ネット検索して、自治体HPで探したり、問い合わせたりする
例えば、東京都大田区の場合、「創業者支援窓口の利用」と「創業塾(ものづくり創業スクール)への参加」が特定創業支援事業になります。
◆まとめ
特定創業支援事業を活用するメリットをまとめると、
メリット⓪:経営、財務、人材育成、販路開拓の知識が全て身につく
メリット①:登録免許税の軽減
メリット②:信用保証協会の創業関連保証の特例適用
メリット③:新創業融資制度の自己資金要件の充足
メリット④:新規開業資金の貸付利率の引き下げ
メリット⑤:各種補助金への活用
嬉しいメリットばかりですので、創業を目指される方や創業間もない方は、この機会にぜひ活用してみましょう!