【弁護士が解説】クリエイターが気をつけるべき「肖像権」(第1回/全3回)

写真や動画を撮るときは「肖像権」に注意!

旅先や街中で、誰もが簡単に写真や動画を撮って、SNSやブログに上げられるようになりました。

そのときに頭をよぎる(よぎってほしい)「肖像権」というワード。

クリエイターとして活動している方も、写真や動画を利用したコンテンツを作成する際に気になる方が多いと思います。

そこで、これから3回に渡って、
・肖像権って何?
・どういう時に肖像権侵害になるの?
・肖像権侵害をしてしまったら、どうなるの?
という疑問にもお答えしていきたいと思います。

今回は、まずは「肖像権とは一体何か?」ということを分かりやすく解説します!

肖像権とは?

肖像権とは、本人が許可していないのに顔などの容姿を撮影されたり、公表されない権利のことをいいます。

つまり、勝手に写真や動画を撮影されたり、それをネットにアップ等されない権利です。

実は肖像権という権利の定義や内容は、法律によって定められているわけではありません。
裁判例では、「みだりに自己の容ぼう等を撮影され、これを公表されない人格的利益」などと表現されます。

「顔を写真に撮られることが嫌ではない」という人もいます。
しかし、それを不快に思う人もたくさんいます。
そういった人のことを守るための権利が、肖像権だといえます。

肖像権は誰にでもある!

たまに勘違いされますが、肖像権はテレビなどに出ている著名人だけに認められる権利ではありません。
人が、誰でも平等に持っている権利だとされています。

裁判例でも当然、一般の人について肖像権を認めたものがあります。

ですから皆さんが写真や動画を撮る場合、常に周囲にいる人の肖像権に気を付ける必要があります。

電車や街中で、他人の顔や姿を撮影してSNSに上げる方を見かけます。
弁護士の立場から見れば、正直「これはマズイでしょう…」と思うことは少なくありません。

「皆やってるから」では許されないことも、ぜひ覚えておいて下さい。

著名人にはパブリシティ権が認められる場合も

テレビなどによく出ている著名人(アーティスト、スポーツ選手、タレントなど)にも、当然肖像権は認められます。

それに加えて、「パブリシティ権」という権利が認められる場合もあります。
この権利は、肖像権の一種と考えることができます。

ある人が人気や名声を得て著名になると、一般の人にとっての憧れの対象となることがあります。

そうすると、その人の容姿や名前を商品CMなどに使うことで、顧客を引き寄せ、高い広告効果をもたらすことになります。
だからこそ有名人は、CMなどに出演して出演料をもらえるわけです。

少し難しい言い方になりますが、こういった、「ある人の容姿や名前が持つ顧客誘引力から生じる経済的価値を排他的に利用する権利」のことをパブリシティ権と呼んでいます。

すごく簡単に言うと、「有名人が持っている『人を引きつける力』を、その有名人だけが使える権利(勝手に使わせない権利)」です。

パブリシティ権が認められるかどうかは、その人の持つ顧客誘引力などに着目し、個別に判断されます。

以前なら、パブリシティ権が認められるのは、テレビに出るような人が主でした。
ところが今なら、有名YouTuberやインスタグラマーなどにも、「パブリシティ権」が認められるかもしれません。

今日のまとめ

今回は、「肖像権」について解説しました。

肖像権とは、勝手に自分の顔などを写真や動画で撮影されない権利です。
有名人だけでなく、誰もが持っている権利です。
写真や動画を使ったコンテンツの制作の際には、常にこの「肖像権」に注意して下さい。

少しでも不安があるという場合には、私たちへのご相談も歓迎いたします。

後日改めて、「どういう時に肖像権侵害になるのか?」「肖像権侵害をしてしまったら、どうなるのか?」といったテーマも解説します!