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ソジー旅にでる in 瀬戸内


前回の山形で、すっかり旅心にめざめたソジー。1445年生まれの活字の妖精(公式設定より)は、棲み慣れた本の町を飛び出し、みたことのない風景を探しに、ふたたび冒険へ繰り出すことにしました。
「旅先で読む本ほど、染み入るものはない」
旅行にはかならず本を持っていく派である書記係Tのリュックに忍び込んで、めざすのは海。ひと夏の冒険の記録をここに記します。
※新型コロナウイルスの感染拡大防止対策をして移動しております(T)

「ここから船に乗るんだよ」
本町駅から地下鉄とニュートラムを乗りついで、たどりついたのは大阪南港フェリーターミナル。夕暮れの港には、ふしぎな香りがしています。どうやらこれが海の匂いのようです。

ソジーといっしょにフェリーに乗り込み、出航のときを待ちます。
窓の外はすっかり夜です。オレンジフェリーって書いてあるけど、どこにいくんだろう?

ムーディーなソジー

甲板へ出て、遠ざかっていく南港を眺めながら、書記係Tはある本のことを思い出していました。ああ、まさに『大阪夜景』だなあ。

興奮でピントがぶれぶれです

フェリーは四国海峡大橋の下をくぐって、ぐんぐんとすすんでゆきます。
ソジーは波に揺られて、いつのまにか眠っていました。

目を覚ますと、そこは道後温泉駅でした。道後温泉といえば……

そう、『坊っちゃん』!
松山中学で教師をつとめた夏目漱石がその体験を活かして書いたという『坊っちゃん』。
町と結びついた作品があるって、素敵ですよね。訪れる前に、その町を舞台にした作品を読んで、想像をふくらませるのもよし。かつて訪れた土地のことを回顧しながら、その場所についての本を読むのもよし……。

ちなみに大阪にお越しになる機会があれば、ぜひ読んでいただきたいのはオダサクこと織田作之助の作品。
なんと今月、創元社創業130周年記念として、豪華声優陣による織田作之助をテーマにした朗読会が開かれるんです!

織田作之助『競馬』を翻刻+解説したnoteも、圧巻の情報量でおすすめです。


松山はとにかく『坊っちゃん』推しの町でした。

駐車場まで坊っちゃん
道後温泉別館飛鳥乃湯泉にて
お菓子の下の懐紙はソジーが美味しくいただきました
萬翠荘にて

大正11年、旧松山藩主の久松家の別邸として建てられたフランス・ルネッサンス様式の洋館・萬翠荘。紳士淑女のつどう社交の場であり、皇族の滞在場所としても機能していたそうです。

ソジーもうっとりサロン気分

「おテーフル(テーブル)の向こうに、あらっソジー様……」
『大正女官、宮中語り』に影響された書記係T、さっそく女官語彙をひけらかしています。


市内を走る伊予鉄のあざやかなオレンジカラー
松山駅で記念写真

さて、そろそろ旅も終わりかな?
いえいえ、ソジーの夏の冒険はまだ続きます。

特急しおかぜ・いしづち

というわけで、乗車。
特急しおかぜと特急いしづちは連結されていますが、宇多津駅で切り離されます。海、みえるかな?

海だーっ!

松山駅名物「醤油めし」

鉄道の旅もいいですねえ。
伊予鉄の乗り換え時、どれに乗っていいのか迷っていたら、車両を熱心に眺めていた鉄道好きとおぼしき少年が駆け寄ってきて
「どちらに行かれるのですか?」
と、スマートに案内してくれたことを思い出し
(松山、いい町だったな……)
と、しんみり。
あの親切な少年は、鉄道手帳を持っているだろうか。

しんみりしているうちに、列車は高松駅に到着。
いそいそと高松港へ移動し、フェリーなおしまに乗船します。
そう、旅の目的のもうひとつは、瀬戸内の港と島々を会場として三年に一度開かれる、生きたアートの祭典、瀬戸内国際芸術祭2022。

きらきら光る瀬戸内海をゆく
直島・宮浦港に降り立ったソジーを迎えてくれたのは、草間彌生「赤かぼちゃ」

直島を皮切りに、各地をめぐります。
歩き疲れたら海を眺めて、ひとやすみ。

豊島の棚田をみおろす
淀川テクニック「宇野のコチヌ」
コチヌに呑まれて飛び出すソジー
コチヌとの格闘のすえ、泥にまみれたソジー

たくさん歩き回って、アートをめぐるスリリングな冒険をおおいにたのしんだソジー。こころなしか、顔つきも精悍に……。
この短い旅のあいだも、いろいろなことがあったなあ。
いつか思い出すために、記録しなきゃね。

帰りは岡山駅から新幹線に

車窓を眺めるソジーの後ろ姿は、旅の最初のソジーとはちょっとちがって見えました。
またいっしょに旅にいきたいね、ソジー。