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山本粧子の Hola! ジャガイモ人間~ペルーからコンニチワ~┃ 第16回
ブエノスディアス!山本粧子です。
ペルーは、6月の冬至に向けていよいよ寒くなって来ました。本当に日本とは真逆の季節の移り変わりを過ごすのだなと、寒さを感じて初めて体感しています。
パラカスでも、海で泳いでいる人を見かけなくなりました。コートを着る日もあるくらいです。実は「パラカスでコートを着る日なんて来るのかな?」「持って来た意味あるのかな?」と、バカンス感たっぷりのこの地に到着した12月当時は思っていたのですが、パラカスにも冬はやってくるようです。
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乾燥ジャガイモ料理を作ろう!
今回は、ジャガイモネタです!
ペルーには、papa seca(パパ・セカ)というジャガイモを乾かした保存食があります。パパがジャガイモ、セカが乾燥させたという意味なので、乾燥ジャガイモですね。製造日から、だいたい20ヶ月くらいは持つそうです。乾燥は人類の文明、偉大ですね。
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茹でたジャガイモの皮を剥き、細かく切ってから太陽の下で乾かすことで、ビタミンB1、B3、B6、C、カリウム、鉄分、リン、マグネシウムなどの成分がたっぷりの保存食材になるそうです。昔はジャガイモの収穫量が少ない時期に重宝され、さらに、小さく切ってあるので持ち運びが簡単であるという点もこのパパ・セカが重宝された所以でもあるそうです。
市場で量り売りで買うことができます。この市場では、1キロあたり8S/(約320円)でした。もちろん、スーパーマーケットでも購入可能です。日本でもAmazonなどで買えるそうですよ。
このパパ・セカを使ったペルー、イカ州の伝統的な煮込み料理のCarapulcra(カラプルクラ)の作り方を教えてもらいましたので、レポートしていきます!
かまどでお料理
カラプルクラは、アイマラ語(ペルーの公用語のひとつ)由来の言葉で「熱い石で調理する」という意味です。かつては熱く熱した石を鍋に入れて煮込んだようですね。
今回は石は投入しませんが、知人のお宅の屋上(!)にあるかまど付きの調理場を使わせてもらいました。
それではいきましょう!
①準備は前夜から始まります。まず、パパ・セカをフライパンで少し炒ってから、水につけておきます。ジャガイモの水分補給ですね。
翌朝起きたら、パパ・セカが柔らかくなっているので、水で洗います。ジャガイモの皮や、毛虫(!)が混じっていることがあるため、水分補給のあとはしっかり何度も洗いましょうとのことです・笑
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②まず、お鍋に豚の脂(ラード)を入れて溶かしていきます。
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③角煮くらいの大きさのぶつ切りの豚をお鍋にぶっ込み、揚げ焼きにしていきます。お塩で味付けします。
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④途中でさらにラード加えて、豚肉の皮がカリッとするまでいきましょう。
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⑤豚肉がいい感じに焼き上がったら別の大きなお鍋に移します。
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これだけ食べてもめちゃくちゃ美味しかったです。
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大鍋料理は忍耐が不可欠!
⑥大鍋の方で、油と大量のアヒパンカとすりおろしたニンニクを炒めます。これが、カラプルクラの基本の味になるそうです。焦げないように混ぜ続けます。
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胡椒をぶっかけて、さらに炒めます。
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⑦ソースが出来上がったら、パパ・セカと水を大鍋に入れて、ここからさらに2時間、混ぜ続けながら煮込みます。ブクブクと濃い赤色の液体がお鍋の中で踊って、さながら魔女が薬を作ってるみたい。パパ・セカにしっかり味が染み込ませるには時間がかかるようです。とにかく、2時間混ぜ続けます。体力勝負、忍耐が必要な料理です。
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⑧煮込んでいるその間に、付け合わせのパスタを作ります。
これは、ご家庭によっても日によっても、どんな付け合わせにするか様々だそうで、今回はTallarin rojo(タジャリン・ロホ)、トマトベースのパスタをつくりました。
ニンニク、玉ねぎ、トマト、ニンジンなどのたくさんのお野菜を使ってパスタソースを作ります。タジャリン・ロホの作り方もご家庭によって異なり、そのお家の味というものがあるそうです。韓国のキムチ的な感じでしょうか。
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ペルーに来て面白いなと思うのがスパゲッティの名付け方で、トマトベースの赤いスパゲッティをタジャリン・ロホ(赤い麵)、ほうれん草やバジルベースのスパゲッティをタジャリン・ベルデ(緑の麵)と呼んでいます。
確かにビジュアル的に明らかで分かりやすいのですが、外国人視点だと最初何味なんだろうか? と分かりにくくもあるなと思いました。
あと、ペルーでは、パスタを半分に割ってからお湯に入れる人が多い気がします。
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⑨カラプルクラは2時間混ぜ続け終えたら、別の鍋にあげておいた豚肉を大鍋に戻し、お塩で味を整えます。最後に、落花生を粉々にしたものふりかけたら完成です。
お皿に盛り付けいただきます~!
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元々はラマやアルパカの肉で作られていましたが、現在は豚肉や鶏肉が使われています。やはり豚肉や鶏肉は現代肉と言えそうですね。
ちなみに、カラプルクラをたくさん食べると、たくさん「おなら」が出るそうです。
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薪や火の匂いがカラプルクラをさらに美味しくするそうなのですが、ご家庭の普通のキッチンでも、カレーを作るような感覚で、カラプルクラも作られています。
やや手の込んだ料理ですが、Amazonでパパ・セカをポチって、是非一度ペルーの伝統料理をご堪能ください!
それではこの辺りでアディオス!
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〈プロフィール〉
山本粧子(やまもと・しょうこ)
神戸市生まれ。大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻芸術学コース卒業。卒業後、国境の街に興味があったことと、中学生の頃から目指していた宝塚歌劇団の演出家になる夢を叶える修行のため、フランスのストラスブールに2年ほど滞在しながら、ヨーロッパの美術館や劇場を巡る。残念ながら宝塚歌劇団の演出家試験には落ち、イベントデザイン会社で7年半、ディレクターとして国内外のイベントに携わる。また、大学時代より人の顔をモチーフに油絵を描いており「人間とはなんだ」というタイトルで兵庫県立美術館原田の森ギャラリーや神戸アートビレッジセンターにて個展を開催。趣味は、旅行の計画を立てること。2016年からは韓国ドラマも欠かさず見ている。2023年秋より南米ペルーのイカ州パラカスに海外協力隊として滞在し、ペルーとジャガイモと人間について発信していく予定。