見出し画像

山本粧子の Hola! ジャガイモ人間~ペルーからコンニチワ~┃ 第8回

ブエノスディアス!山本粧子です。

2023年12月13日(水)、ようやく私が2年間住むPARACAS(パラカス)に到着しました!! 砂と海と動物と風のまち、VIVAリゾート地です!

パラカスへは首都リマからバスで3時間半ほどでした。
一席ずつ区切られた、非常に乗り心地の良いシートで、快適なBUS TIMEでした。シートごとにエンターテインメントが楽しめる画面までついていました。

バスの車内の様子。フットレストまであります

今回私が利用したCRUZ DEL SURというバス会社は、70S/(約2800円)でリマからパラカスへ移動できました。
ただし預け荷物にも別に料金がかかります。私は82.8キロの荷物を預けたため、人間の運賃と同じくらい荷物の料金を支払いました。日本を出発した時よりもやや増えているような?

無事にキャリーケース3つもパラカスに到着しました。

パラカスに到着した翌日からさっそく、パラカスミュージアムでの仕事がはじまりました。今回は、記念すべき初出勤日について綴っていきたいと思います。

腹が減っては何とやら

朝8時半ごろにミュージアムの同僚3名が車で家まで迎えにきてくださり、まずは小さな商店に寄って、にんじん、じゃがいも、鶏肉、お米、グリンピースなどの昼ごはんの材料を購入しました。

リゾート地であるパラカスには、たくさんの商品が冷蔵庫に入って並んでいたり、棚にずらっと陳列されたりしているようないわゆるスーパーマーケットはありません。
店の外から、「◯○はありますか?」と尋ねないと、その商品があるかどうかも分からない。そんなお店です。

逆にいうと、鶏肉なんか店頭のどこにも見えないのに、鶏肉が買えるのです。奥から出してきてくれるのです。
きっと、彼らとその商店に行かなければ、一生そのお店に鶏肉があることを知らないまま過ごしたんじゃないかと思うほどです。

いわゆるスーパーマーケットへ行きたい場合は、お隣のまちPISCO(ピスコ)やICA(イカ)に行く必要があります。

商店はこんな感じ。

 2軒目の商店で、「エンパナード・ドゥルセ」という大きいクッキーのようなものを購入し、車の中で4人で楽しく食べました。
昨日、着いたばかりで家に食べるものがなくひもじい思いをしていたので、このやや油の回った感じの激甘クッキーがとても美味しく感じました。

 ミュージアムでの仕事始めだというのに、食料調達しかしていないじゃないかと思われそうですが、パラカスミュージアムでは、昼食はみんなで作って、食べるのが日課だそうです。がっつり本気キッチンがあるのです。「なんてハッピーな職場なんだ!!」と内心叫びました。

ちなみに、砂漠の中にポツンとミュージアムがあるから、このような昼食スタイルがたまたま確立されただけで、ペルーのミュージアムがみんなこの昼食スタイルというわけではないようです。

 そうこうするうちに、砂漠の中に一直線に敷かれたアスファルトの道を5分ほど走り、自然保護区の中に入ると、パラカスミュージアムが見えてきました。

こちらが私の職場、パラカスミュージアムです!!

本当に砂の世界にポツンと立っています。
半年あまりの間、写真で見つめ続けた景色の中に実際に自分がいることへの驚きと、「ようやく来ることができた!」という感動にしばらく浸りました。

 初出勤は食べてばかり

館内にはいると、まず、リマまで私を迎えにきてくださった考古学者のフリアさんが、パラカスミュージアムで働くメンバーを集め、私を紹介してくれました。
パラカスミュージアムは、館長、考古学者、館内管理、チケット販売、警備、清掃スタッフで構成されています。館長は長期休暇中でこの日は挨拶できませんでしたが、新しい生活が始まる感じにワクワクしました。

初顔合わせが終わったら、一度解散。
いよいよ仕事にかかるのかと思ったら、なんと誕生日ケーキを持ったフリアさんが突如現れ、サプライズ誕生日会がスタートしたのです!
実は、まったくの偶然ですが、初出勤日は私の誕生日でした。

「なんで今日が誕生日って知ってるの?」

びっくりしながら、新しい同僚全員とハグ&ビズ(頬を合わせてチュッチュとするやつ)をしました。
突然現れた私の誕生日をお祝いしてくださるミュージアムのみなさんの温かさに感動して涙が出ました。
「仕事で恩返しできるようにがんばろー!」と思いました。

思ってもみなかったサプライズに、不覚にも写真を撮り忘れてしまいました。
大きなホールのチョコレートケーキでした!

 それからみんなで朝食タイム。この日は、私に気を遣ってくださったのか朝食もみんなでそろって摂りました。
オリーブを塩水でつけたものをパンに挟んで食べたのですが、これがかなり美味しく、クセになる味でした。スペイン語でオリーブの実の塩漬けをAceituna(アセイトゥナ)というそうです。

ふと見ると、パンと一緒に同僚2名が、牛乳にコーラを入れてごくごく飲んでいるではありませんか。

牛乳のコーラ割り、COCA CON LECHE(コカ・コン・レチェ)。

「マジか!」という感じでしたが、彼らによると、とてつもなく美味しいらしいです。「試す?」と言われましたが、丁重にお断りしました。
なんでもチャレンジした方がいいと考えるタイプですが、これは一生試さなくてもいいかなと思ってます。

ようやくお仕事!

それから、先ほどコカ・コン・レチェをごくごく飲んでいた館内管理担当のホセに、館内を解説付きで案内してもらいました。

パラカスミュージアムには、紀元前700年から紀元後200年の間に存在したパラカス文化のテキスタイルや陶器の出土品、ミイラをはじめ、パラカス文化にまつわるありとあらゆるものが展示されています。
日本でも有名な「ナスカの地上絵」のナスカ文化の一つ前の時代が、パラカス文化になります。

展示物は古代文明のものですが、ミュージアムは現代的なデザインです

それから、隣りまちのイカから小学4年生55名が校外学習でミュージアムにやってきたので、ホセの展示説明にあわせて、私は彼らの誘導を担当しました。
前半女子チーム、後半男子チームの二手に分かれて展示を見てまわります。
やはり、展示に興味がある人とない人に大きく分かれまして、私はホセの説明を全く聞いていない人たちと話をしたりしました。

私は日本人だと自己紹介したら、一緒に写真を撮ってほしいとか、ピンで写真撮ってもいいかなどと口々に言われ、まるでファンミーティングみたいな感じになり、とても不思議な気持ちでした。
ペルーは日系の人も多いはずですが、やはり外国人と会うのは珍しいのでしょうか。
初仕事の最大の収穫は、小学生のスペイン語は早すぎて理解することが難しいということです。前進あるのみ、¡VAMOS!(さあ行くぞ!)

またまた食べる

小学生たちを見送ったら、待ちに待ったお昼ご飯!
Cau Cau de pollo(カウカウ・デ・ポヨ)をみんなで食べました。

カウカウ・デ・ポヨ、こんな感じの料理です!

「カウカウ」は肉と野菜の炒め煮のことで、ケチュア語のアカカウ(=熱い)が変化した言葉とも言われているそうです。

本来、カウカウは牛モツを使うことが多いらしいのですが、今日は若鶏(polloポヨ)を使うため、カウカウ・デ・ポヨ(若鶏のカウカウ)。
本日の調理担当はホセです。ホセが牛肉嫌いのため、ミュージアムのランチで出てくる肉は問答無用で鶏肉になるそうです。
その鶏肉と、ジャガイモとにんじんを細かく角切りにしたもの、グリーンピースを、クミン、味の素、塩、ニンニクパウダー、胡椒などの調味料で炒めて煮た料理で、ご飯と一緒に食べました。
カウカウに使うジャガイモはパパ・ブランカ(白ジャガイモ)だそうです。

初めて食べたカウカウ・デ・ポヨは、とても優しい味で、ペルー風肉じゃがといったような感じでした。
なによりみんなで食べる食事は、美味しくて、温かく、楽しいです。

 ちなみにペルーでは、味の素をめっちゃ使います。みんな、「アヒノモト」って言っています。
次回は、日本とは一味ちがったペルーのクリスマスの過ごし方についてご紹介したいと思います。

 それではこの辺りでアディオス!


~編集Oが選ぶ、今週の一(?)枚~

〈プロフィール〉
山本粧子(やまもと・しょうこ)
神戸市生まれ。大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻芸術学コース卒業。卒業後、国境の街に興味があったことと、中学生の頃から目指していた宝塚歌劇団の演出家になる夢を叶える修行のため、フランスのストラスブールに2年ほど滞在しながら、ヨーロッパの美術館や劇場を巡る。残念ながら宝塚歌劇団の演出家試験には落ち、イベントデザイン会社で7年半、ディレクターとして国内外のイベントに携わる。また、大学時代より人の顔をモチーフに油絵を描いており「人間とはなんだ」というタイトルで兵庫県立美術館原田の森ギャラリーや神戸アートビレッジセンターにて個展を開催。趣味は、旅行の計画を立てること。2016年からは韓国ドラマも欠かさず見ている。2023年秋より南米ペルーのイカ州パラカスに海外協力隊として滞在し、ペルーとジャガイモと人間について発信していく予定。