見出し画像

山本粧子の Hola! ジャガイモ人間~ペルーからコンニチワ~┃ 第11回

ブエノスディアス! 山本粧子です。

クリスマスが終わるとすぐに特大イベント、ニューイヤーAño Nuevo(アニョ・ヌエボ)がやってきます。
またまた私はミュージアムの館長宅にお邪魔して、クリスマスと同じく、大勢のファミリーと一緒に過ごしました。
今回はその中から、特に印象的だったことをレポートしたいと思います!

***

黄色い下着をつけて年越しだ!

大晦日の夕方頃、リビングで館長のご両親と談笑していたら、館長から突然
「ショーコ、このパンツにはきかえておいで」と黄色のゴムパンツを渡されました。
反射的に受け取ったものの、「何事だ?」と頭にハテナマークをいっぱい浮かべていると、館長と館長のお父様が笑いながら説明してくれました。
ペルーで黄色は「幸運」を呼ぶ色で、年越しの際は黄色い下着を身につけると幸せが訪れるとされているのだそうです。
そういうわけで、その日は家族みんなまっ黄っ黄の下着をはいていました(見せ合ったわけじゃないけど・笑)。
翌日の洗濯機には黄色のパンツがたくさん入っていて、サイズでしか誰のものか判断できませんでした(笑)

部屋の中も黄色の風船をたくさん膨らませて、飾りつけをしましたし、頭にもペルーで流行っている黄色いひよこの髪留めをつけたり、黄色いカチューシャをつけたりして、とにかく見えるところも見えないところも、黄色に包まれて過ごそうという風習があるのです。

黄色で運気アップ!

ちなみに、「お金が欲しい!」という人は緑色、「愛が欲しい!」という人は赤色をはくと良いそうです。

2023年の要らないものは2024年に持ち込まない?!

夜になって、館長に「ちょっと見に行っておいで」と言われ外に出てみると、近所の空き地で近隣住民が集まって、大きな焚き火を焚いていました。
来るべき新年に向け、大晦日の夜に人形や古い衣服類を炎の中へ投げ込むのです。古いものを灰になるまで焼きまくり、悪運を退散させようということらしいです。

けっこう派手に燃えてます!

私はこの風習を知らなかったので何も投げ込むものをもっていませんでしたが、夜中に大きな焚き火をぼーっと眺めるのは結構いいものだなと思いました。なんとなく自分自身と向き合える気がしたのです。
2023年をじっくり振り返り、2024年の1年間、ここペルーの土地で何ができるのか、スペイン語力をどの程度のばすことができるのか。自分との戦いになる一年だなと、心を奮い立たせました。

月の数だけブドウを食べ、豆を撒く!?

クリスマスの食事もかなり夜遅くに始まりましたが、お正月もオールナイト。
22時頃から、年越しそばならぬ年越しポヨ・ア・ラ・ブラサ(丸鶏のグリル)と大量のフライドポテトを食べました。そして0時になった瞬間、みんなで乾杯。外ではガンガン花火の音が鳴り始めました。新年を迎えるとすぐに、12粒のブドウを食べるペルーの伝統的な儀式(?)をします。「今年は仕事がうまく行きますように」とか「健康でいられますように」など自分の願いごとを込めて、12粒のブドウを一粒ずつ急いで貪り食います。
しかも、未婚女性はテーブルの下で(!)食べるのが慣習だというのです!
しかし、郷に入っては郷に従え。私を含む割とデカめの女性たち+デカめの犬2匹とでテーブルの下でせせこましく肩を寄せ合いながら、願いを込めてブドウを味わいました。
12粒というのは、毎月の幸せを祈ってのことだそうです。日本の節分でお豆を食べる文化と近いものがあるかもしれませんね。お豆は歳の数だけ食べますけど。
私の祖母は今年89歳ですがとても元気なので、豆は89粒ペロッと食べるでしょう。しかしブドウを89粒食べるとなると少しキツそうだなと、机の下でブドウを噛みしめながら考えていました。だからというわけではありませんが、ブドウを食べ終わった後、まさかの本当に豆まきが始まったのです!

ペルー式豆まき

ペルーの豆まきは、日本の豆まきとは少しお豆の種類が違います。炒り大豆ではなく、そのままでは食べられない乾燥したレンズ豆をあちこちに大量にまき散らすのです。
各部屋にくまなくまくので、家中豆だらけです。誰がまいたのか知りませんが、トイレにまでまかれていました。
人に向かっても豆をまきますが、鬼役はいません。「鬼は外、福は内」的な掛け声もありませんでした。日本のように投げつけるのではなく、両手でレンズ豆を持って、頭の上から相手にかけてあげる感じです。私はロングヘアにパーマをあてているため、髪の中にレンズ豆がたくさんストックされていきました。全部取り除くのにはなかなか時間がかかりました。
レンズ豆まきには、金銭的に豊かになりますようにという願いが込められているそうです。レンズ豆がいっぱいストックされた分、財布にもお金がストックされるといいのですが。

締めはやっぱり朝までダンス

そして、やはり最後はダンス!
イベントの際には、乾杯、花火、そしてダンスで夜を明かすことが必須のようです。

ダンス練習の成果が問われる

クリスマスよりさらに長時間踊り、久々にオールナイトしました。朝の3時ごろまで踊り続けます。老若男女皆すべてオールナイトです。みんな元気です。たまに寝てる人もいます。しかも、さっきレンズ豆をまき散らした部屋で踊るので、床が粉々にくだけた豆だらけに。粉々の豆は、翌日に掃除するわけでもなく、しばらくそのまま放置されていました。

それから、16時ごろまでゆっくり寝て、イカの中心地から車で10分ほどで行けるHuacachina (ワカチナ)へ向かいました。ワカチナは、南米のオアシスとも言われており、砂漠の中にぽつんと小さな湖があるところです。360度砂だらけの世界は圧巻でした。

南米のオアシス、ワカチナ

砂の中に埋もれ、横になりながら沈む夕日を見ました。日の出は難しくても、元旦にワカチナで太陽が沈むところをみられたらいいなと思っていたので、念願叶って嬉しかったです。
一面砂の海で見る夕日は吸い込まれちゃうんじゃないかというくらい大きくて、太陽と自分の位置関係がちょっとバグった気がしました。
大晦日に焚き火を見つめていたときのように、今年は今まで以上に気合を入れて生きなきゃなと思ったのでした。

砂の海に沈んでいく太陽

そして、翌2日からはさっそく仕事。ペルーは日本のように年末年始休みがなく、休みになるのは元旦1月1日だけということにはちょっと驚きました。「日本は年末年始を大切にする国なんだな」と改めて気付かされつつ、いつもどおりミュージアムへ。
けれども、日本で皆に「あけましておめでとうございます」と挨拶するように、ペルーでも同僚たちに「アニョ・ヌエボ~」と言ってハグすることだけは、いつもと違う新年初の出勤日でした。

***

ご家庭よって、少しずつ習慣が異なると思いますので、みんながみんな同じように年越しをしているかどうかはわかりませんが、今回は私が体験したアニョ・ヌエボ)をお届けしました。
クリスマスと同様、老若男女オールで踊り続けるペルー人のパワフルさに驚きつつもとてもハッピーな一年の幕開けでした。

それでは、この辺りでアディオス~!


~編集Oが選ぶ今週の一枚~

〈プロフィール〉
山本粧子(やまもと・しょうこ)
神戸市生まれ。大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻芸術学コース卒業。卒業後、国境の街に興味があったことと、中学生の頃から目指していた宝塚歌劇団の演出家になる夢を叶える修行のため、フランスのストラスブールに2年ほど滞在しながら、ヨーロッパの美術館や劇場を巡る。残念ながら宝塚歌劇団の演出家試験には落ち、イベントデザイン会社で7年半、ディレクターとして国内外のイベントに携わる。また、大学時代より人の顔をモチーフに油絵を描いており「人間とはなんだ」というタイトルで兵庫県立美術館原田の森ギャラリーや神戸アートビレッジセンターにて個展を開催。趣味は、旅行の計画を立てること。2016年からは韓国ドラマも欠かさず見ている。2023年秋より南米ペルーのイカ州パラカスに海外協力隊として滞在し、ペルーとジャガイモと人間について発信していく予定。