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山本粧子の Hola! ジャガイモ人間   ~ペルーからコンニチワ~┃ 第2回

ブエノスディアス! 山本粧子(やまもとしょうこ)です。
これを書いている8月現在、私は長野県の海外協力隊訓練所で、長期派遣のための合同合宿訓練に参加しています。

今日、長野県伊那市にあるペルー料理店「La casa de Jimmy(ジミーの家)」というお店で食事をしたのですが、やはり、ジャガイモの発祥の地の料理にはジャガイモがこれでもかというくらい沢山添えられていました。
しかも、ジャガイモの味がすごく濃厚で、添えれられているソース(チーズと唐辛子と牛乳とクラッカーやオリーブオイルなどをミックスして作られたまろやかな黄色いソース)も絶品でした。
初めて食べたペルー料理の美味しさにびっくり仰天でした。
みなさんのお住まいの地域にもペルー料理店があったら、是非一度お試しください!
 

ジャガイモ料理 パパ・ア・ラ・ワンカイーナ


ペルー料理については現地に着いてからたっぷりレポートするとして、第二回は、日本のジャガイモについてのお話を書いていきたいと思います。

日本食でもすっかりおなじみ

みなさんは、人生の中で「これが、ジャガイモなのか!!」とジャガイモを認識した瞬間や、初めて食べた時のことを覚えていますか? 私は正直覚えていません。
ジャガイモは、コロッケ、カレーライス、ポテトサラダ、肉じゃがなどの料理にドーン! と入っていて、当然のようにそこにありました。
ジャガイモって、主役でも脇役でもどちらともいえない、なんともいえない存在感があると感じているのですが、みなさんにとってジャガイモはどのような存在でしょうか。
主食なの? おかずなの? ほんとはどっちなの?
と聞きたくなる感じもまた魅力的だなと思います。

アンデスから日本へ

 今では日本でも当たり前に食べられているジャガイモですが、南米のアンデス山脈のあたり(ペルー南部のチチカカ湖のほとり)で生まれ、日本へは、江戸時代初期の1598年にオランダ人がインドネシアのジャガラタ港(現在のジャカルタ)から長崎に運び込んだのが最初と言われています。
それで、「ジャカルタから来たイモ」が「ジャガイモ」と言われる由来となったと。ただし、これは諸説あるそうです。

実は、すぐに日本列島全土で食用として普及するわけでもなく、最初は観葉植物として広まりました。
当時、新しいことに挑戦してみようというイノベーション精神を持った人々が、幕府の許可をもらってジャガイモを取り寄せて、地域で栽培を奨励していたという話もいろんな地域であるにはあるのですが、お米と違ってジャガイモは年貢として納められないし、新参者だし、よっぽどの先見の明かチャレンジ精神がないと、なかなか生産に前向きになれなかったのかもしれません。
いつの時代も、新しいことに挑戦するのはムズカシイのですね。

しかし、江戸時代の飢饉の際に、飢えをしのぐための作物として多くの人々の命を救ったことが高く評価され、明治以降、本格的な栽培が始まったのだそうです。

サツマイモに後れを取りながら

ちなみに、同時期に日本に入ってきた「サツマイモ」は、スピーディーに日本各地に普及しました(確かに、日本史の教科書に青木昆陽氏の名前が出てくるのは1700年代・・・)。
ジャガイモは、サツマイモに比べて甘みが少なく味が淡白だったので、それが日本人の口には合わなかったのかもしれません。たしかに、蒸したり焼いたりするだけでいいサツマイモに比べて、ジャガイモを沢山美味しく食べるには調理方法をきちんと知る必要がありそうですよね。

一方で、傾斜がきつかったり、他の作物が作りにくい厳しい環境でもジャガイモは育つため、重要な食糧として重宝されました。
ジャガイモは強いですね。
さらに、他国との交流の中で新しいジャガイモの調理方法も伝わったことも後押しになり、積極的に生産されるようになったとか。
そんなこんなで明治以降急速に普及が進んだジャガイモは、現在の日本ではイモの中でもっとも多く食べられています。

ホクホク男爵、ねっとりクイーン

現在、日本では20品種ほどのジャガイモが栽培されているそうですが、やはり「男爵」と「メークイン」の2種類が生産のほとんどを占めています。
私も、ジャガイモといえば「男爵」と「メークイン」がパッと最初に思い浮かびます。

ホクホク系のジャガイモ「男爵」は、明治時代に北海道函館へ渡った川田男爵(川田龍吉)が、イギリスからアイリッシュ・コブラーという品種を導入し栽培したことから「男爵イモ」と呼ばれるようになったそうです。
川田さんの爵位が伯爵だったら、「伯爵イモ」になってたんですかね。

川田男爵像

一方、ねっとり系のジャガイモ「メークイン」は、大正時代にイギリスから入ってきたそうで、煮崩れしないため重宝されたようです。中世の春の村祭り(メーデー)の際に、村の娘の中から選ばれる女王、5月の女王を意味する「MAY QUEEN」からメークインとなったと言われています。
たしかに、肉じゃがやカレーなど、日本のジャガイモ料理は、食材を「煮る」ことが多いですもんね。

ジャガイモの旬っていつ?

現在では、ジャガイモは1年中スーパーマーケットで購入できるので、旬をつい逃しがちですが、旬と言えるのは5月〜6月の春期と9月〜12月までの冬期の2回。
一般的に新じゃがと呼ばれるものは、5月〜6月頃に九州から出荷されるものを指します。
「メークイン」は春頃が美味しく、「男爵」は秋頃が美味しいそうで、品種によって美味しいピークが異なるのもおもしろポイントですね。
 
ジャガイモは、ナス科の植物というポイントも、これからペルーのナスカ付近に行く私にとってはなんだかジャガイモと縁があるな〜と感じてしまいました。(ナスはインド原産で、ナスカとはなんの関係もないんですが)

最後に、ジャガイモ豆知識をひとつ。
ジャガイモの芽には毒性のある成分が含まれているため、食中毒の原因になるので食べない方がよいと言われています。そこで初芽を抑えるためには、ジャガイモにリンゴを一つ忍ばせて保存すると良いそうです。リンゴのエチレン作用で初芽を抑えてくれるそうですよ。
 
以上、今回は日本のジャガイモ事情をご紹介しました。
それでは今日はこのあたりでアディオス!

【おもな参考文献・ウェブサイト】
アンドルー・F・スミス著、竹田 円訳『ジャガイモの歴史』原書房
日本いも類研究会 https://www.jrt.gr.jp/potatomini/potatomini_rekishi/
ジャガイモ博物館:ジャガイモ品種「メ-クイン」(MAY QUEEN) https://potato-museum.jrt.gr.jp/mayqn.html
じゃがいも品種詳説:メークイン https://www.jrt.gr.jp/var/mayqueen.html
JAきたみらい:じゃがいも栽培の歴史https://www.jakitamirai.or.jp/nousantop/potato/potato2/
函館ゆかりの人物伝(函館市文化・スポーツ振興財団)
http://www.zaidan-hakodate.com/jimbutsu/02_ka/02-kawada.html

〈プロフィール〉
山本粧子(やまもと・しょうこ)

神戸市生まれ。大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻芸術学コース卒業。卒業後、国境の街に興味があったことと、中学生の頃から目指していた宝塚歌劇団の演出家になる夢を叶える修行のため、フランスのストラスブールに2年ほど滞在しながら、ヨーロッパの美術館や劇場を巡る。残念ながら宝塚歌劇団の演出家試験には落ち、イベントデザイン会社で7年半、ディレクターとして国内外のイベントに携わる。また、大学時代より人の顔をモチーフに油絵を描いており「人間とはなんだ」というタイトルで兵庫県立美術館原田の森ギャラリーや神戸アートビレッジセンターにて個展を開催。趣味は、旅行の計画を立てること。2016年からは韓国ドラマも欠かさず見ている。2023年秋より南米ペルーのイカ州パラカスに海外協力隊として滞在し、ペルーとジャガイモと人間について発信していく予定。