山本粧子の Hola! ジャガイモ人間~ペルーからコンニチワ~┃ 第13回
ブエノスディアス!山本粧子です。
私が今働いているパラカスミュージアムは、ペルー人はもちろんですが、海外からの来館者がとても多く、ウユニ塩湖で有名なボリビアから来たファミリー、フランス人カップル、韓国の団体旅行客など、今日も様々な国からお越しになられていました。
日本では、ナスカの地上絵に隠れてパラカスの知名度は無いに等しい(?)かもしれませんが、世界を見渡すとちょっと違うのかもしれません。
アジアの中ではダントツで韓国からの来館者が多いです。
2016年から韓国ドラマ鑑賞は私の生活の一部なので、韓国語のドラマ頻出単語は頭に入っているのですが、それがなんとペルーでとても役に立っているのです!
いつか日本人にもここで会えたら嬉しいなと思っています。なんと言っても私は日本語が一番堪能ですからね(笑)
とはいうものの、どの国のお客さんとの会話もとても刺激的で、少しの時間でも「あ、そんな人生があるんだ!」というような話も多く、さらにスペイン語の勉強にもなり、私にとっ て一石三鳥くらいの日常アクティビティとなっています。
ところでパラカスミュージアムでは、毎月第一日曜日に、パラカス文化の理解を深めてもらえるようイベントを行っています。
私の業務の中で最も大きなウエイトを占めるのが、このイベントの企画と運営です。
しかも、イベント当日は全員無料でミュージアムに入ることができるんです! なんて素晴らしいルールなんでしょう。
おかげで、イベント日には特に多くのお客様がミュージアムを訪れます。
海外の来館者が多いと書きましたが、このイベントの日にかぎっては、ペルー人のファミリーが圧倒的に多いですね。それも子だくさんのBIG FAMILYが多く訪れます。それだけに、楽しいプログラムを提供できるか、責任重大でもあります。
今回は、先日開催した私の初企画イベントについてレポートしたいと思います。
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初めてのイベント企画
初回は、パラカスミュージアムに来る前から私がここでやってみたいなと思っていたことをやらせてもらいました。それは展示室の中で、展示物の目の前でワークショップをする、というものです。
パラカスミュージアムには「タジェール部屋」という、イベントを行うための専用のお部屋があるのですが、今回はそのお部屋ではなく、ミュージアムの展示空間をイベント会場にし、来館者が展示を全部見終わった後に、ここで見たもの感じたことを絵を描いてもらうワークショップを計画しました。
というのも、大学生の頃に欧米のミュージアムで、子どもたちが素晴らしい絵画の前に座って絵を描くワークショップに何度か遭遇し、「ホンモノ」の目の前で絵を描く体験っていいよな、とずっと思っていたのです。
イベントのタイトルは、ミュージアムとアートの融合ということで「MUSEARTE」と題し、告知しました。
きっとおもしろいワークショップになると思って企画してはいるのですが、みなさんが果たして絵を描いてくれるのかは実は心配で、当日まではお声がけの仕方を何パターンも考えました。
ところが蓋を開けてみれば、なんと予想を遥かに超える400人もの方々がワークショップに参加してくださったのです!
「ホンモノ」を見ながら絵を描こう
展示を見終わった方に、私が「今日印象に残ったことについて絵を描いてみませんか?」と声をかけると、みなさん快く、代わる代わる次から次へと絵を描き始めてくれました。
1時間以上もかけて、集中して絵を描いている人も多くいました。
おかげで、朝の9時から夕方5時までノンストップで、ペルーのあらゆる地域からやってきた子どもたち(もちろん大人も)と一緒に、パラカスにまつわる絵を描くことができました。
パラカス文化をよりよく知ろう
パラカスミュージアムには、開頭術(頭骨に孔を開ける外科手術)の跡が残った頭骨や、変形頭蓋(上部後方に頭部を延ばしたもの。頭部の変形は頭の柔らかい幼児の頃から行われ、頭骨をヒモで強く縛って変形させていく。)が展示されています。ちなみに、古代アンデスでこの風習が最初に見られるのはパラカス文化だと言われています。
また、当時の埋葬方法の解説や、ミイラと一緒に埋葬されていた副葬品やマントも展示されています。
まさに、「パラカス時代を生きた人とはどんな人たちなんだ?」ということを分かりやすく学べるミュージアムで、参加者はそれらをモチーフに絵を描いてくれました。
大人も子どもも夢中でお絵描き
しかも! パラカスミュージアムが砂漠のど真ん中にあるという立地もあって、子どもたちは必ず大人と一緒にミュージアムを訪れるのですが、子どもの付き添いで来た親御さんやご家族の大人たちまで、全力でワークショップに参加してくれました。
大人が傍観者ではないのです!
そこに私は一番感動しましたし、ペルーの素晴らしいところだなと思いました。
当たり前と言えば当たり前のことなのかもしれませんが、同じ展示を見ても記憶に残ること、心に響くものが異なることが、参加者が描いてくれた絵を見て分かりました。展示物のなかから選んだモチーフも、できあがった絵も、人それぞれ全く異なっていたからです。
それに、ある少年が「今日絵を描いたから、パラカスの記憶は自分の中にずっと残ると思う」と言ってくれたときには、ちょっとウルッとしました。
大人からはとても感謝されたりもして、「なんかコレいい仕事だな」としみじみ感じました。
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イベントを実施しないと分からないことってたくさんありますね。
ここへきてイベントの力、イベントの価値をひしひしと感じています。
これからも毎月イベントはあるし、新しく企画もしないといけないので、みんなが楽しみながらパラカス文化を学べるハッピーなイベントを今後も続けていきたいと思います。
それではこの辺りでアディオス~!