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【科学者#023】金持ちの中で最も偉大な科学者【ヘンリー・キャヴェンディッシュ】

莫大な遺産によって屋敷の中に実験室をつくり研究に没頭し、さらに人間嫌いなためその生涯が謎に包まれている科学者。
今回は、そんな科学者の中で一番の金持ちであり、金持ちの中で最も偉大な科学者と言われたヘンリー・キャヴェンディッシュを紹介します。


ヘンリー・キャヴェンディッシュ

名前:ヘンリー・キャヴェンディッシュ(Henry Cavendish)
出身:イギリス
職業:自然哲学者、化学者、物理学者
生誕:1731年10月10日
没年:1810年2月24日(78歳)


業績

水素の発見

1766年キャヴェンディッシュは、亜鉛・鉄・スズに硫酸や塩酸を加えると燃える気体が発生すると発表しました。

キャヴェンディッシュは、この気体をフロギストンだと考えていました。
実際反応で発生する気体は水素なので間違ってはいるのですが、今では水素を発見した最初の人とされています。
さらに気体を調べていき空気と比べて質量が11分の1くらいしかないことを発表します。
(実際は空気と水素分子の質量比は約14.4:1)

ちなみにフロギストンとは燃素と言われることもあり、当時はフロギストン説という燃焼についての考え方がありました。

フロギストン説とは、『燃焼はフロギストンという物質の放出の過程である』という考え方です。

このフロギストン説は、酸素説が提唱されると次第に忘れ去られてしまいます。


論文の発表

キャヴェンディッシュは生きている間に、18編の論文を王立協会の『哲学会報』で発表しています。

しかし、実は膨大な未発表の実験を記録した原稿を残したままキャヴェンディッシュは亡くなってしまいます。

このことにより、のちにキャヴェンディッシュのほうが先に発見していたものが判明しました。

今回は、一部紹介します。

スウェーデンのカール・ヴィルヘルム・シェーレ(1742ー1786)より10年も前にヒ酸を発見

シェーレ

スコットランドのジョゼフ・ブラック(1728-1799)とは別に比熱の法則と潜熱を発見

ブラック

蒸気圧測定をジョン・ドルトン(1766-1844)よりも前に行う

ドルトン

気体の膨張についての法則であるゲイ=リュサックの法則をジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサック(1778-1850)より前に発見

リュサック

1879年にはジェームズ・クラーク・マクスウェル(1831-1879)がキャヴェンディッシュの研究を公表します。

マクスウェル

これにより、クーロンの法則、オームの法則、ファラデーによる誘電率の概念などが、発見者よりも前にキャヴェンディッシュが発見していていたこと分かりました。


生涯について

キャヴェンディッシュは、寡黙で人間嫌いな性格で、女性嫌いでした。

さらに、政治的な名誉や経済的な成功は望まずに生活も大変質素で、研究成果も気が向いたときだけ発表していました。

使用人ともほとんど話さなかったので、生涯については分からない点が多いです。

祖先はジョン・キャヴェンディッシュで、1366年にエドワード3世によりイギリスの首席裁判官に任命され、ナイトの爵位(しゃくい)を得ます。

そして、父親はチャールズ・キャヴェンディッシュで、物理関係の研究を行っていました。

母親は、次男のフレデリックを生んだ後に亡くなっています。


1749年、18歳でケンブリッジ大学のトリニティカレッジに入学し、物理学と数学を学びます。

しかし、学位を取ることなく1753年に退学します。
これは、学位授与式における宗教上の問題を回避するためではないかと言われています。

退学後は、ロンドンに住む父親の居住で生活します。


1760年から50年間王立協会会員になり、毎週欠かさずに出席していました。


王立協会では『哲学会報』で、

1760年 水素(フロギストン)の発見について
1784年 水の合成について(水素と酸素の反応)
1798年 地球の密度の測定

など18編の論文を発表しています。


1783年に父親が亡くなると、長男であるヘンリーに多額の遺産が入ります。

これにより、屋敷の中に作った実験室にこもり、さらに研究へ没頭します。



キャベンディシュという科学者

生涯が謎に包まれている科学者である、ヘンリー・キャヴェンディッシュ。

イギリスの化学者で発明家のハンフリー・デービー(1778-1829)はキャヴェンディッシュが亡くなった後に次の言葉で讃えています。

デービー

「ニュートンの死以来、キャヴェンディッシュの死ほどイギリスが大きな損失を被ったことはない」


さらに、フランスの物理学者で天文学者、数学者のジャン=バティスト・ビオ(1774-1862)はキャヴェンディッシュのことを次のように言っています。

ビオ

「キャヴェンディッシュは科学者の中で一番の金持ちであり、金持ちの中で最も偉大な科学者」


生きている時からその才能に他の科学者が驚かされ、さらに亡くなってからも未発表の実験記録から色々な科学者よりも先に発見していたことが分かり、さらに私たちを驚かせた偉大な科学者。

歴史上キャヴェンディッシュ以上に謎に包まれ、驚きを与えた科学者はいないのではないでしょうか。
そして、その素晴らしい業績なのに、あまり有名ではないのもまた謎のひとつなのかもしれません。

そんな科学者の中で最も金持ちで、生涯が謎に包まれた偉大な科学者であるヘンリー・キャヴェンディッシュを知るきっかけになれたのなら嬉しいです。

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