レッドゾーンってどんな場所? ~コロナウイルス感染者受け入れ施設レッドゾーン立ち入り体験談~
長かった緊急事態宣言がついに解除されました。リモートワークから通常業務に戻るなど、早くもコロナ後の生活に戻る動きが加速し、街で見かける人も増えてきました。
コロナウイルスの脅威が今より高かった4月末と5月上旬に、東京都江戸川区が管理するコロナウイルス軽症者受け入れ施設を訪問しました。目的は2つあり、ウイルスが存在する施設においてAI清掃ロボットWhizの清掃を行うための導入支援、そして、「Whiz」と薬剤用スプレーを組み合わせて薬剤で壁やドアノブなどを消毒しながら床の清掃を行う効果の検証です。
この時の検証結果については、前回の記事「新型コロナウイルス感染症対応「シーサイドホテル江戸川」での第三者環境評価」でバイオメディカルサイエンス研究会(BMSA)の瀬島理事長から紹介いただきました。
今回はレッドゾーンってどんな場所なのか、実際に現場に行って感じたことをお伝えしたいと思います。
ゾーニングという言葉。昨今のコロナウイルス感染拡大を受けて初めて耳にした人も多いのではないでしょうか。病院では清潔レベル別に区域を分けることによって、施設内で感染拡大を防ぐという管理手法を用いています。軽症者受け入れ施設でも、感染者の居室エリアをレッドゾーン、その他の清潔なエリアをグリーンゾーンに区分けしています。感染者はレッドゾーン内でのみ生活し、運営スタッフは極力グリーンゾーンで業務をすることになっています。
レッドゾーンに立ち入る際にはマスクに加えて、手袋やガウンなどの個人防護具を着用することが求められます。今回の私たちの訪問では、検証作業中に膝をつく必要があることもあり、全身を覆う防護服を着用しました。テレビで防護服を来た作業員が消毒液を噴霧する映像を度々目にしてきましたが、まさか自分が着ることになるとは想像していませんでした。
やや緊張しながらレッドゾーンに立ち入ったものの、建物の機能的にはあくまでホテルなので、ゾーンの判別は床に張られた赤いビニールテープのみ。当然ながら汚染度は肉眼で確認できないため、コロナウイルスの脅威を実感することは難しかったです。
作業は昼過ぎから夕方にかけて行いましたが、頭のてっぺんから爪先まで防護具で覆われているため、とにかく暑くて仕方がありません。また、一度防護服を着た後はトイレに行くこともできないことが大変でした。コロナウイルス患者と向き合う医療従事者が、いかに厳しい環境下で日々の業務に励んでいるか、僅かながら体感することができました。
一番緊張したのは作業終了時に防護服を脱ぐ瞬間でした。防護服の着脱には正しい手順、作法があります。ウイルスが付着している可能性のある表面に指が触れない様に注意深く脱ぐ必要があるのですが、事前に勉強し、江戸川区保健所の方に指導いただきながら臨んだものの、始めての現場だったので動きはぎこちなかったと思います。巷でも防護服を脱ぐ際にウイルスが付着している箇所に触れてしまったことが原因の一つとして考えられる医療従事者の感染例がニュースになったのは記憶に新しいです。せっかく息苦しさに耐えて防護服を着たのに、最後の最後でウイルスに触れては元も子もありません。ちなみに、脱いだ防護具は感染性廃棄物として適切に処理されます。
レッドゾーンに持ち込んだ資機材は隅々まで消毒します。施設外にウイルスを持ち出してはいけないので、ここでも手抜きは許されません。もちろん自分自身の消毒も必要です。手指消毒する手にいつも以上に力が入りました。
今回の訪問でレッドゾーンという人の立ち入りが極度に制限された場所の清潔度をいかに保つかという課題を改めて感じました。この課題解決の一助になればとの思いから、ソフトバンクロボティクスでは軽症者受け入れ施設向け清掃ガイドラインを6月1日に発表しました。
以上、コロナウイルス軽症者受け入れ施設のレッドゾーンについて、私が感じたことをお伝えしました。今後もアフターコロナの施設清掃に有益な情報を発信していきます。
著者プロフィール
張替 賢一
ソフトバンクロボティクス プロジェクト推進本部
AI清掃ロボット「Whiz」デプロイ(導入支援)チーム責任者。2016年にソフトバンクロボティクスに参画し、Pepper、NAO、RS26のアフターサービス企画、Pepperの医療業界展開の営業企画を経て、Whizチームへ異動。全国各地50以上の施設への導入支援対応を経験し、2020年度よりデプロイチームの責任者として従事。
常に前のめりに新しいことにチャレンジする姿勢で、前職では専門コンサルティング会社の起業を経験。