大学におけるWhiz運用定着までの道のり~成功のポイントは現場スタッフの愛着~
大阪・茨木市に2015年開設された立命館大学 大阪いばらきキャンパス。6,892人もの大学生が通うこのキャンパスでは、除菌清掃ロボット「Whiz」が2台活躍している。
導入に至るまでのどのような苦労があり、どう乗り越えたのか。そして、導入の決め手とは。学生ら若い世代からの反応はどうだったのか。
立命館の久米氏、そして立命館の施設管理を担当しているクレオテックの奥本氏にお話を伺った。
<お話を伺った方>
学校法人立命館 財務部 契約課 課長
久米 達也 氏
株式会社クレオテック OIC業務部 OIC業務課 課長
奥本 一成 氏
<施設・会社概要>
立命館大学
京都の衣笠キャンパス・朱雀キャンパス、滋賀のびわこ・くさつキャンパス、大阪の大阪いばらきキャンパスの4キャンパスを持つ。学部だけでも、文系・理系合わせて16ある総合大学。
大学としてのロボットを活用した取り組み
——Whiz導入までの経緯を教えてください。
久米氏:
ロボットを使ったキャンパス管理に関する効率化に取り組んでいますので、その一環としてWhizを導入しました。ロボットを活用する取り組みは、「人とロボットが協業する社会は必ず来るので、キャンパスで先取りして社会問題を解決していきましょう」という理念のもと、大学全体で行っています。
——なぜロボットを活用した取り組みに注目されたのでしょうか。
久米氏:
年々清掃費や警備費に関わる人件費が上がっていたことから、学内で「なんとかしなくては」という声が上がっていました。たまたま会議の場で「ロボットならどうやろ」という意見が出たことがキッカケでしたね。調べていくと実用的なロボットがもう市場に出ていて、これなら活用できるな、と。
——数あるロボットの中から、Whizを選んだ理由を教えてください。
久米氏:
以前、他社の清掃ロボットの実証実験を行ったことがありましたが、ルートの設定はメーカーの方しかできず微調整にも時間がかかりましたので、実用的ではありませんでした。
ダスキン経由で契約したWhizは、ティーチングによるルート設定も操作も手軽で簡単なので、現場スタッフが無理なく活用できるという点が、決め手となりました。
学生がよく通る通路には掲示物などが置かれる。
ルートの変更が手軽にできることは大きな利点
Whizに適している条件とは
——清掃現場のお話を伺いたいと思います。これまで、清掃面で課題は感じてらっしゃいましたか?
奥本氏:
人によって清掃のムラがあったことですね。廊下自体も広いので、人の手ではWhizのようにまっすぐ進んで塗りつぶすように全面を清掃することは難しい環境です。
Whizは安定感があっていいですね。
——実機をキャンパスで動かしてみて、いかがでしたか。
奥本氏:
Whizの導入のためにはいくつかの条件をクリアする必要があるなと感じました。
まずは、施設として適しているかどうか。活用できるスペースがあるかどうかなど、建物としての条件ですね。
次に、フロアの用途・都合で適しているかどうか。Whizの音が響いてしまうため、講義のある日中の教室前では稼働できません。図書館も音の観点から同様ですね。
一方、研究室棟では日中は人が少ないため、稼働できます。
最後に、時間をずらした清掃ができるかどうか。教室前も図書館も、早朝や深夜のように人がいない時間帯であれば動かすことができます。
学生がいる時間・いない時間に分けて、稼働できる場所を選定して清掃するようにしました。
特に研究室前の廊下は障害物や段差もなく、Whizに適した環境
「ここがダメ」ではなく「ここまでできる」という考え方
——Whiz導入までに苦労したことを教えてください。
奥本氏:
最初はWhizが発売され間もない時期であり、清掃ロボットの認知度も低い状況でしたので、社内理解を得るのに時間を要しました。
「今後ロボットが当たり前になるだろうが、今じゃない、まだ早い」「雇用を奪うのではないか」「掃除は人がするものだからロボットに任せて大丈夫なのか」など、さまざまな意見がありました。
——どのように乗り越えられたのでしょうか。
奥本氏:
まず最初は自分でWhizの清掃能力の検証を徹底的に行いました。自分のデスクのすぐ横にホームロケーションコードを設置して、Whizを稼働させる。それを1ヵ月間行って、どこまでの清掃能力があるのか、私自身が詳しく説明できるようにしました。
それでも、粗探しのようにできないポイントを指摘されましたね。
しかし、「ここができないからダメ」ではなく「ここまでWhizができるからあとは人がフォローすれば良い」という考え方に変えないと、ロボットの導入という新しい取り組みは成功しないと思っています。シミュレーションしてみても、それでも効果が出ることがわかっていたので。
図書館へ続く通路の休憩スペース。
周りはWhizが清掃し、中のスペースを人が清掃する体制
現場からのクチコミを武器に社内理解を獲得
——社内理解を得るための一番のポイントは何だったのでしょうか。
奥本氏:
数値を基にした説明もそうですが、一番は現場からの声でした。
ネットで商品を購入するときもそうですが、愛着を持って実際に使っている人の声というのは説得力がありますよね。
——具体的にはどういった声があったのでしょうか。
奥本氏:
最初は現場スタッフも、言われたから使ってみる程度の意識からスタートしましたが、経験を積んでいくと、自分たちのものとして愛着が湧いてきたようでした。
自分でティーチングしたルートを完走したときの嬉しさ、障害物に引っかかってもルートを再作成して改善したときの達成感など、より良いルートを設定して成功した体験を積み重ねていきました。
良いルートができると、自分たちがフォローすべきところも明確になるので、細かい部分まで清掃できるようになったという声もありましたね。
積極的に現場で活用できている、清掃品質も向上している、ということは十二分に伝えることができました。
試行錯誤の末、
柱や本棚のある通路でも効率的に清掃できるルートを確立できた
学生への影響と他キャンパスへの展開
——Whizの取り組みについて、学生に対してはどういった思いがありますか。
久米氏:
キャンパスではロボットが動いているのかと驚いてほしいですし、大学が進んだ取り組みをしていると感じてほしいですね。そして、新しいテクノロジーに積極的に触れてほしいと強く思っています。
特に理工系の学生はどうやって動いているのか、どんなセンサーで感知しているのか、自身の研究への刺激としても見てほしいです。
——実際にWhizをご覧になった学生の反応はいかがでしたか?
久米氏:
もっと写真を撮ったりして盛り上がるかと思っていましたが、意外とすんなり受け入れられていますね。
今の10代後半~20代前半の彼らにとっては、もうロボットのある風景を当たり前だと感じることができる世代なのかもしれません。
——今後は他キャンパスへも導入を進めていくと伺いました。
久米氏:
はい、滋賀や京都のキャンパスでも、もう2台ずつ導入して検証を始めています。この大阪いばらきキャンパスで結果を出せているからこその展開です。
他キャンパスの学生がどういった反応をするのか楽しみですね。
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初めてのロボットは、使ってみないとわからないことが多いですよね。ぜひ、まずは実機を触ってお試しください!
著者プロフィール
岡田 亮
ソフトバンクロボティクス プロジェクト推進本部
除菌清掃ロボット「Whiz」事業開発部所属。2020年2月にソフトバンクロボティクスに参画し、現職に。前職は旅行ガイドブックの編集者として図書制作や営業企画に従事。その経歴を活かして、現在は導入事例の取材や記事制作を担当している。