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Elis&Tom

released in 1974
Elis Regina,Antônio Carlos Jobim

〈偏見良い曲〉
M1 "Águas de Março"
M11 "Fotografia"
M14 "Inútil Paisagem"


M1 "Águas de Março"
アルバム中恐らく一番有名、このアルバムを知るきっかけになった一曲。
きらびやかなピアノ、ブラシのリズムに乗ったエリスとジョビンのツインボーカルが輝いている。
中盤間奏のピアノは、高音域と口笛が重なることで複雑な倍音感がある。
終盤にかけて半音ずつ下がっていく展開も素晴らしく、最終盤の掛け合いは映像らでの見応え抜群。


M2 "Pois É"

M1と打って変わり怪しげな音階で進む曲、短くまとまっている。
本アルバムは単純な落ち着いたbossa novaアルバムではないことを匂わせる役割に思える。


M3 "Só Tinha de Ser com Você"
ミディアムスローに落ち着いて進んでゆく。エレピが心地よく進む静かな水を思わせる、bossa nova然としたナンバー。


M4 "Modinha"
ストリングス、オーケストレーションを主にした一曲。
M2と同じく怪しさを内包した進行。


M5 "Triste"
フルートの美しさを随所に感じる有名な一曲。
終盤のギターソロの尖った入り方が耳を引く。


M6 "Corcovado"
オーケストラをバックにスローテンポで奏でられる哀愁が美しい。ジャズコンボとしてのボサノバとオーケストラが噛み合った名曲。
後半のボーカルの絡み、ストリングスが美しい。

M7 "O Que Tinha de Ser"
ピアノと女性ボーカルが基本の短いナンバー。
クラシック調のピアノ、静かな歌声がアルバムの転換点を思わせる。
短調の最後、♭3を♯してメジャーで終わらせるピカルディー終止を使用。

M8 "Retrato Em Branco E Preto"
ミュージカルの一曲に選ばれそうなドラマチックさを感じる。より昔ながらのメロディー(ブラジルでの民謡のような)なのだろうと予想される。


M9 "Brigas, Nunca Mais"
bossa nova的なリズムを強調したアンサンブルで、終盤のエレピのフレーズはイパネマの娘を思わせる。


M10 "Por Toda a Minha Vida"
ストリングスから始める落ち着いたナンバー。
本アルバムはbossa novaとオーケストラを1曲毎に行き来するような内容で、オーケストラをバックに据えた曲は哀愁を主題にしている印象。

M11 "Fotografia"
4ビートのベースラインとくぐもったギターの音色がjazzを感じさせる。
ホールトーン+ウィンドチャイムで展開→ダブルタイムを一瞬挟んで4ビートに戻る、飽きさせない展開。再度ダブルタイムでbossa nova特有のスウィング感を進める、豊富な曲、個人的お気に入り💫


M12 "Soneto de Separação"
男性ボーカルが久しぶりに帰ってきた印象。
ピアノ、ストリングスでやはり哀愁や淋しさを感じる。
後半は女性に引き継ぎながらも、終始哀愁を携える。


M13 "Chovendo na Roseira"
3拍子,ワルツのbossa nova、ブラシワークによりスウィング値がより強く出ている。また、後半のピアノフレーズに四度進行がみられる。
Bメロに値する部分の後、下降する伴奏を重たくするアレンジや、四度進行の不可思議性等を随所に盛り込んだ曲。


M14 "Inútil Paisagem"
アルバム中一番静かに流れていく曲。
ピアノ伴奏と女性ボーカル、静かに流れる水や夜を思わせる美しい曲。
静かな最後を飾るに相応しいナンバー。


〈アルバム俯瞰〉
 M1の印象がかなり強いのは紛れもない事実だが、
アルバムとしては単にbossa novaをなぞるだけの構成ではなく、重厚感に満ちた内容。

ストリングス等を豊富に扱うオーケストラチックな曲と、bossa nova特有の軽快なぬくもりを持つ曲を交互に織り交ぜる選曲が前半に続き、後半も概ねそのように構築されているのが特徴。

シャンソン/カンツォーネ/ショーロ…ジョビン及びこのジャンルの根を感じられるような、実は哀愁を帯びた名盤。

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