社員を辞めさせない!職場環境を良くするためのコミュニケーションとは?
ビジネスや家庭、学校、友人関係など、人々が生活するさまざまな場面で欠かせないのがコミュニケーションです。声や文章によるものはもちろん、近年ではデジタルツールを使った動画でのコミュニケーションも一般的になってきました。
人々の生活の中心に位置するコミュニケーションですが、ビジネスにおいても重要な役割を果たしています。
適切な意思疎通が行われないままビジネスを進めると、誤解や業務上のミスが生じ、その結果としてチーム内に不和が生じたり、不信感などの感情を抱いたりすることがあります。さらに、コミュニケーションの軋轢は社員の業務態度にも影響し、責任転嫁や他の社員との関係悪化といった複雑な問題に発展することもあります。
では、なぜビジネスの現場では規則や社内ルールが設けられているのにも関わらず、コミュニケーションの問題が頻繁に発生するのでしょうか。
コミュニケーションの良くある悩み
まずは、ビジネスの現場で発生しがちなコミュニケーションの問題について見ていきます。
ミスコミュニケーション
コミュニケーションにおける問題の一つは、ミスコミュニケーションの発生です。「説明したはずなのに伝わっていなかった」「指示通りに行動したはずなのに間違っていると言われた」というような状況が当てはまります。ミスコミュニケーションは、誤解を招いて社内の人間関係を悪化させたり、手違いや勘違いによって業務の進行を妨げたりしてしまいます。
ハラスメントやジェネレーションギャップ
社内のコミュニケーションの悩みには、ハラスメントやジェネレーションギャップの問題がからみ合っている場面があります。たとえばハラスメントが絡んでいる場合、上司が部下に対してパワーハラスメントを行っていると、部下は上司の言動を恐れて業務上必要な報連相などを行わなくなり、必要なコミュニケーションが不足して業務に支障が出る場合があります。さらに、萎縮して積極性を失い、社員同士が協力をしないといった、必要な連携がとれなくなる可能性もあるでしょう。
コミュニケーションが不足した結果孤立する
社内のコミュニケーションにおいて、よくある問題は、社員同士の雑談や相談が不足し、特定の社員が孤立してしまうことです。特に、以下のようなコミュニケーションの場が不足している場合には、注意が必要です。
・業務上の些細なことを相談できる場
・雑談を行うための場
・業務上の情報共有、近況報告がフラットに行える場
・悩みや問題を率直に吐き出せる場
雑談や相談の場が不足すると、一人で業務を抱え込んでしまい、業務上の悩みや不安が大きくなり、孤立感が深まる要因となります。
部門間の連携不足
雑談や相談の場が不足すると、業務を1人で抱え込むことになり、業務上の悩みや不安を大きくし、孤立を深める要因となることがあります。テレワークなど、出社しない形の業務形態が普及している現在、企業や組織では「コミュニケーションの困難さ」と「社内連携の課題」という問題が生じています。
離れ離れで働いている状況では、社員同士のつながりが薄れてしまい、特に部門間の連携不足が深刻化し、サイロ化のリスクも高まります。この問題に対処するためには、オンラインコミュニケーションの活用と部門間連携の強化が必要です。さらに、リアルタイムで収集したデータの分析を通じて、コミュニケーションや社内連携の頻繁な仮説検証を行うことが求められます。
忖度や暗黙の了解が不正の温床になる
日本企業の特徴として、内向き志向と行き過ぎた配慮により、社内には暗黙の了解や忖度が広がり、深刻な問題が生じています。終身雇用の崩壊や企業の組織体制の見直しは進んでいますが、年功序列や同質性による見えない圧力や不文律はまだまだ存在し、それらに基づいた濃い人間関係も依然として根強く残っています。
近年のグローバル化が進むビジネスにおいて、この日本企業特有のコミュニケーションは、大きなマイナス要素として取り上げられ、多様性や働き方改革などの側面においても、障害となっていると言わざるを得ません。
とくに、上層部への配慮により、ミスや事故の隠ぺい、不正行為を社内政治のために押し通すなど、行き過ぎた対応は日本企業のコミュニケーションにおける重要な問題となっています。
また、同質性がもたらす違反や不正行為を知りながら黙って見過ごすという風潮も課題です。個人のポジションや立場を守るために、見て見ぬふりをする忖度は日常的に行われています。
コミュニケーションを取る上で必要なマインド
コミュニケーションには問題が付きまとい、万能ではありません。適切に効果を発揮するためには注意点があります。ここからはコミュニケーションを取る上でのマインド(心持ち)について解説します。
コミュニケーションは「郵便」
ポストモダンの哲学者デリダは、人と人とのコミュニケーションを「郵便」に例えました。
郵便物が届くためには、必ず2〜3日の遅れがあり、発信者と受信者の間に必ず時間的なずれが生じます。デリダはこれを「遅延」と表現しました。
さらに郵便は、配達中に手違いが生じ、誤って住所に届けられることもあります。デリダはこれを「誤配」と呼びました。
現代のメールやチャットで時間的な遅れを最小限に抑えても、既読の表示がないことや、既読スルーという「遅延」にモヤモヤしたり、マイナスの感情を抱いたりしてしまうことがあります。テクノロジーは変化しても、本質的な部分には何も変わっていません。デリダが言うこの「遅延」と「誤配」こそが、人と人とのコミュニケーションそのものなのです。
発信者のメッセージが、100%完璧に受信者に伝わることはありません。確実に遅延や誤配が発生し、それを完全に解消することは不可能なのです。
だからこそ、各個人が常に誤解の可能性を意識し、自分のメッセージの全てを相手に理解してもらえるという思い込みを捨てることが、良質なコミュニケーションの土台であることをデリダは述べています。
ハラスメントはミスコミュニケーションが原因?
企業とは、年齢や価値観、性別といった要素が多様な人が集まって成り立っている集団です。そのため、ジェネレーションギャップや価値観の違いが生じてしまうのは当たり前の場所であると捉えることが重要です。
前提となる価値観が全く違う中で、受信者次第ではハラスメントと受け取られてしまう場合もあるでしょうし、この事態を避けることはできません。ジェネレーションギャップもハラスメントも完全に無くすことは不可能です。
重要なのは撲滅の努力をするのではなく、ハラスメントの発生をスムーズに申告でき、申告された側も感情的にならずに、ミスコミュニケーションや価値観の違いが生じてしまうのは仕方ないことだと受け止め、上で述べた遅延や誤配が起きている可能性があるのではないかと反省材料にしていくことです。その周知徹底は、経営トップの管理の仕方によるところでしょう。
コミュニケーションができている=業績の向上ではない
ビジネスにおいてコミュニケーションは重要ですが、コミュニケーションを取ることが業績の向上に直結するわけではありません。コミュニケーションは、業務上の問題や課題解決、意思決定、社員同士の相互理解において非常に役に立つものですが、以下の条件に当てはまらない場合、ビジネスで有効に活用することは難しくなります。
・コミュニケーションによって得た情報を活用し、適切に行動に繋げることができている
・コミュニケーションすることで部署、チームで共有するべき目標やビジョンが明確になっている
・コミュニケーションにより社員同士、メンバー同士の信頼関係が構築されている
・コミュニケーションによって、課題や問題解決のために必要な意思決定プロセスが確立できている
以上の条件が揃って初めてコミュニケーションが機能していると言えます。
ビジネスにおけるコミュニケーションは、業績や企業・組織の経営運営にプラスの効果をもたらさなければ意味がありません。仕事の一部として取り組みましょう。
ビジネスに必要なコミュニケーション能力と場
ビジネスにおけるコミュニケーションでは、「伝達する力」が求められます。前述したとおり自分の伝えたいことが100%相手に伝わることは無いとは言え、業務上のミスや失敗のリスクを低減するためには、状況や相手の特性・立場に合わせた伝達手段を選択し、わかりやすい表現にすることが必要です。言葉遣いや表現の工夫を通じて相手の理解を深め、生産性や業務効率の向上など、成果に結びつける必要があります。
加えて、相手の言葉や文章を「理解する能力」も必要です。自分が提案や意見を出した際には、相手からの返答に対処する場合もあります。そのような場合には、相手の言葉や仕草を観察し、共感しながら内容や要望の意図を正確に理解する必要があります。相手の意見を尊重することで円滑なコミュニケーションが可能となります。
メラビアンの法則によれば、コミュニケーションにおいて言語情報は7%、聴覚情報は38%、視覚情報は55%とされています。このことから、動画を簡単に送ることができるSNSを活用した企業内コミュニケーションが非常に有用であることが分かります。動画は文字情報よりも遥かに多くの情報を伝えることができるので、経営者はSNSによる社内コミュニケーションの促進を図るべきです。
しかしながら、SNSが登場してから10年が経過した現在でも、その使用方法についての規範が明確になっているわけではありません。社内SNSの規範を策定する前に、考慮すべき点をいくつか挙げてみましょう。
たとえば、LINEの場合、既読がどのような意味を持つのかという点です。それはメッセージを開いて読んだことを意味するのか、それとも理解したことを意味するのか、規範が不明確なままだとツールとしての完全さに欠けてしまいます。
「いいね」についても同様です。いいねがつくことは、単に見たことを意味するのか、本当に共感したことを意味するのかは、人によって異なります。社内SNSを効果的に活用するためには、これらに関するルールや規範をある程度決めておくことが重要であり、円滑なSNSの運用に役立つはずです。SNSのルールや規範を策定することは難しい一面もありますが、これを明確にしておかなければ、誤解からハラスメントが発生する可能性もあることを留意しておきましょう。
まとめ
コミュニケーションは、短い言葉のキャッチボールでは全てが理解されるわけではありません。誤解を最小限に抑えるためには、コミュニケーションを重ねる努力をすることが求められます。それを社員一人ひとりが実感することが大切で、職場の円滑なコミュニケーションはビジネスの利益にも繋がるのです。性別や年齢、経験、人種に関係なく、コミュニケーションが重要であることを意識している職場は、成功が約束されているでしょう。