ソファで待つ春、巡りあう生活
夫と2人で暮らしていた街で、希望条件にあうマンションが見つかったのは本当に偶然で、とにかくすぐにと申し込みをしたのが4月8日だった。天気も空気も、その日に見かけた知らない人の鮮やかなシャツの色まで覚えている。
どうしてかというと、この日は娘が生まれた日でもあったから。分娩台の上からLINEで「申し込みは頼んだよ!」と夫にメッセージを送ったのだ。忘れられない記念日。マンションは新築で、その1年後に建ち、2023年の4月に入居。4月、私たちにとっては巡りあわせがつまっている月だ。
2021年の夏にお腹に赤ちゃんがいることがわかり、2年住んだ賃貸から引っ越すことを決めた。いまの家の決め手はリビングの大きな窓と、そこからのぞく空が広いこと。家族があつまるリビングは「心を込めてつくろうね」と夫と決めた。
子どもが伸び伸びと過ごせるようにものは置きすぎずシンプルに。家族が集まって過ごしやすいといえばソファで、これだと思うものに出会えるまでに半年かかった。もともとは娘の安全性を考えてローソファを考えていたがなかなか見つかず、これもまた半年経つ頃にぽんと見つかった。何の気なしにふらっと寄ったショールームで、座り心地抜群のものを発見。夫と娘といたので時間がかかり、後日1人で行き最終決定した。そしてこのソファが届いたのはなんと4月18日。4月にはなにかと縁ある我が家だ。
いままでは「お昼寝は寝室に移動して」だったのに、いまはお日様があたってまどろめばそのままうとうと。ソファに寝そべって窓の外をぼーっとみている時間も好きだ。雲ひとつない青空をみると、大きな海にゆらゆら揺られている気持ち。夏には少しだけ、打ち上げ花火もみえた。
マイブームの口癖が「おいしー!」のぽっこりお腹のキューピーちゃんな娘は、近頃よくキッズ向けの動画をみながらオットマンの横でダンスをしている。膝で屈伸運動のようにこまかくリズムをとり、手をひねってきらきらさせていく。まるで昼間の星みたいだ。雨上がりの朝、大きな二重の虹が窓からのぞいたとき、自分1人だったことがとても悔しかった。娘の“きらきら星”とぜひ共演させたいところだ。
年があけて、あと3ヶ月もすればまた4月。家族3人でソファから眺める春の空が待ち遠しい。
【物語に登場したソファ】
Decibel C4 3人掛け両ひじ
F1ランク SIシリーズ SI-SHN
Illustration by fujirooll
Text by SAKO HIRANO (HEAPS)