刺身、煮付け、焼き鳥で晩酌。最後のシメは“ソファ”
湘南の中海岸でのマンション暮らしがはじまった時、思い切ってどーんと設けたのがソファだ。ワイド3人掛け片ひじに、同じ種類のソファで2人掛け片ひじをセットで購入。かなり広々としている(同じ種類のソファを2種買う、というところでは少々妻と揉めた)。大家族というわけではなく、私と妻と11ヶ月になる息子と、そして犬1匹。両親や友人が遊びにきた際にみんなで座れるようにしたかったのだ。
自分が育った家をふくめて、我が家の食後の家族団欒の場所はずっとソファだ。妻と二人暮らしのときも、息子が産まれてからも(そして犬がうちにやってきてからも)。みんなで座ってくつろいだり、それぞれ好きなことをしている。なにをするわけでもなく一緒に過ごしている、それを肩肘はらずにつくってくれるのがソファなのだと、今回のソファがうちにやってきて改めてそう思う。
3年前には思い切ってサラリーマンを辞め、仲間とコンサルの会社を立ち上げた。やっと軌道にのってきたいま、日々の家族との食卓、そして団欒があるから頑張れると強く思う。
毎晩家で晩酌するのが好きで(といっても、食事をしながらゆっくり1、2杯程度だが)、肴はもっぱら魚ものだ。刺身も煮付けも焼き、なんでもいい。寒い季節になると、魚の鍋物もうまい。季節を問わず、最後はたいてい卵かけご飯でシメ。最近育児休暇中の妻は、時々なかなか凝ったものもだしてくれる。ここのところのブームは自宅で焼き鳥だ。我々二人の大好物。店にいけば軟骨、ちょうちん、セセリ、ハツ、ねぎまは必ず頼む。家での焼き鳥は種類が限られるものの、思い思いの味変を試せるのがいい。妻は大の辛いもの好きなため、勇敢な味付けに挑戦している。最近ハマっている卵かけご飯でのシメは、これがまた焼き鳥とよく合う。
と、大絶賛しておきつつ。我が家の本当の“シメ”は、実はほかにある。
シメのあとの大シメ、それは“食後のソファ”だ。胃が満たされ、心がほぐれた状態でゆっくりと身を預ける。背クッションは柔らかめ、座クッションは硬め。この座クッションは長時間座っているとだんだんと馴染んでくる。長い時間座ればわかる座り心地のよさは、まるで噛めば噛むほどなんとやら。寝ころんでブランケットを纏えば、とろりとはちみつに包まれたように優しい時間がやってくる。
そして匂い。世界中のなによりも安心する、我が家の匂い。一人のときでも十分いい寛ぎタイムだが、なんといっても家族がなんとなく集まってここで過ごすこと。満腹で幸福の身体のまんなか、心を幸福で満たしていく時間だ。
11ヶ月になる息子の成長もこの団欒の時間に気づくことが多い。届いてから4ヶ月ほどでいつの間にかつかまり立ちをし、よじのぼってくるようになった。いつのまにかおもちゃやボールも引っ張ってくるようになった。呼んだわけでもないのに、いつでも愛犬のショコラもいつの間にかいる。息子の隣に、自分のおもちゃを広げて。
息子のおもちゃ、愛犬のおもちゃ、妻の本、私の漫画.....今夜もこの“シメのプレート”にはいろいろのっている。賑やかで暖かい心地よい小さな散らかり。こんな幸福のシメ、毎日でも飽きない。食後のソファ、まごうことなきの「星五つです!」。
【物語に登場したソファ】
Decibel Professional ワイド3人掛け片ひじ
Decibel Professional 2人掛け片ひじ
Illustration by fujirooll
Text by SAKO HIRANO (HEAPS)