
THE MAKING OF ‘THOMAS & FRIENDS’ ~「きかんしゃトーマス」制作の舞台裏~

1984年にイギリスでTVシリーズの制作が始まった「きかんしゃトーマス」。その撮影がどのように行われていたかについては、あまり公表されていません。今回は、イギリスでトーマスの撮影に使われたモデルの保存・修復を行っているTomsProps氏から情報をお借りして、それを日本語に翻訳しました。非常に奥深い「きかんしゃトーマス」の制作の舞台裏をお楽しみください。
「きかんしゃトーマス」(原題:Thomas the tank engine & Friends、もしくはThomas & Friends) は、1945年にイギリスでウィルバート・オードリー牧師によって生み出され、大ヒットを記録した絵本作品「汽車のえほん」(原題:The railway Series)を原作とした未就学児向けTV番組です。
初代プロデューサーは映像作家であるブリット・オールクロフト。彼女は映像化に際しさまざまな手法を検討した結果、オードリー牧師が趣味としていた鉄道模型を用いたライブ・アクション方式を採用することに決めました。ブリットはモデルアニメーション制作会社のクリアーウォーター・フィーチャーズ社(Clearwater Features)にショーの映像制作を委託します。バタシー(南ロンドン)を拠点とするクリアーウォーター社は、主にテレビコマーシャル用のアニメーションやモデルの制作を専門とし、数々の賞も受賞していました。また、そこで監督を務めていたのは1960年代に放映されていた、ジェリー・アンダーソンが手掛けた 「サンダーバード」 (Thunderbirds)においてモデルメーカーとして働いていたキャリアを持つデビッド・ミットン(David Mitton)でした。
35 years since the first ‘Thomas’ episode was broadcast, I’m thrilled to be able to finally announce a documentary on the classic series is currently in production. More details in the coming months… Watch this space! pic.twitter.com/C2HEBzZhfd
— TomsProps (@TomsProps) October 9, 2019
▲第1シリーズ制作時の、「ナップフォード駅」での撮影の様子。
「きかんしゃトーマス」 の撮影は、新しい挑戦の連続でした。後にトーマスの撮影は大規模な「シェパートンスタジオ」(Shepperton Studio)で行われることになりますが、当初の撮影に使われたバタシーにあるクリアーウォーター社のスタジオは比較的小さく、どのように映像を撮影するかについて多くのアイデアを必要としました。
基本的な撮影方法として、20フィート(約6メートル)のテーブルの上に撮影セット(ジオラマ)を作り、新しいものが必要になるたびに既存のセットを解体し、そこに新たなセットを作る方法が採用されました。
また、当初はトーマスたちの撮影用モデルを製作するにあたりOゲージ(縮尺1/43 - 1/48 ・軌間32mmの鉄道模型)の使用が検討されましたが、モデルの内部にある煙や目を動かすための装置を収めるには小さすぎると判断されました。最終的には映像に鮮明に映り、ギミック用の装置を収めるのに最適な大きさであるとして1番ゲージ(縮尺1/32 もしくは1/30.5・軌間45mの鉄道模型)が採用されました。
Here's a photo of the underside of the chassis, you can see it still says Marklin. I believe this is a photo from when we were unwrapping the model after having some work done on it. it's nerve wracking turning it over and we do it as little as possible pic.twitter.com/FC6CgOkkeN
— Thomas Merchandise (@ThomasTankMerch) August 16, 2020
▲第1シリーズで作られた「ジェームス」の撮影用モデルの裏側
シリーズ初期では原作絵本の挿絵をベースに、ドイツのメルクリン社(Märklin)から販売されていた一番ゲージ車両のシャーシ(動力装置)と、EMA Modelsという模型店で購入されたプラスチックの素材を使用して機関車たちの車体が製作されました。
しかし後のシリーズでは、車体に使う素材が変更されます。殆どのキャラクターの車体は真鍮を用いて作られるようになり、また一部のメインキャラクター達のモデルも真鍮で新たに作り直されました。
https://x.com/TomsProps/status/1195345913671278597?s=20
Thomas faces, as featured in the Series 12 face reference book. Sadly the famous 'O' face was long gone by this stage. 😩 pic.twitter.com/pA5GeOsV1J
— TomsProps (@TomsProps) November 15, 2019
▲第12シリーズ制作時の「トーマス」の表情一覧表
また、キャラクターたちの「顔」は、それぞれのキャラクター毎に、シーンに合わせて使えるよう様々な表情が用意されました。目を動かす装置はキャラクター達の模型に予め取り付けられています。
https://x.com/ThomasTankMerch/status/1627733212121206784?s=20
Edward chassis shots: a thread
— Thomas Merchandise (@ThomasTankMerch) February 20, 2023
We don’t often take the tv series models apart, but Edward had a lot of unique mods to his chassis during the show, including the added pickups to the front bogie and the weight bolted onto it. BR55 chassis next to it for comparison pic.twitter.com/8Wmk1cPd9C
▲第1シリーズで作られた「エドワード」のモデル内部の様子。
機関車たちが噴き出す「煙」の表現にも特殊な方法が用いられました。従来使用されていた石油ベースのスモークユニット(発煙装置)では、カメラで撮影したとき、蒸気のように映るほどの十分な濃度が得られませんでした。そこで空気に反応する液体ハロゲン化金属である四塩化チタン[TiCl4]という薬品を用いた方法が考案されました。車体に四塩化チタンの入った小瓶を取り付け、そこに車輪の動きと連動して空気を送り込むポンプを接続。送り込まれた空気によって反応した薬品は煙突から煙として吹き出します。

建物、風景、人物のフィギュア、アクセサリーの大部分は、モデルメーカーによって大部分がフルスクラッチで作られ、貨車や客車、線路の多くは鉄道模型メーカーTenmilleにて購入されたものが使用されました。後のシリーズでは、日本でも有名なPECO(ピィコ)、Slater’Plastikard、 Barrett Steam Models、S&D Modelsなどから購入されたアイテムも登場しました。1984年から20年以上続いたライブ・アクション版「きかんしゃトーマス」は、2008年に公開された第12シリーズと、その直後に公開された長編「トーマスをすくえ!ミステリーマウンテン」(原題:The Great Discovery)をもって制作が終了しました。2009年にCGIアニメーションへと制作フォーマットの移行が行われ、現在も引き続き制作が行われています。
THE MAKING OF ‘THOMAS & FRIENDS’~
「きかんしゃトーマス」制作の舞台裏~
原文 (The Original Text): Tom(Twitter@Tomsprops)
翻訳 (Translation): SodorMail1992