【詩】長針
波のように迫ってくる長針は、僕のことを知らない。でもそれを、知らないふりをしているだけなのかもしれないって思うと、少しは頑張ろうと思える。高層のビルに屋根があったり、川に道があったりすることを想像して、僕の心は長針を飛び越えて走り出していく。本当に今、歩いているこの地面とは遠くへ、僕の心はとっくに行っている。そうして鳥になってまだ人間の僕をみて、テストの点数ばかり馬鹿にする。鳥もそうなのかと思って安心なんてしていると、また長針は僕を飲み込もうとする。はい、もう君は時間に負けたね、そう言って長針は僕を大きく包み込む。すると僕の視界は突然空からになって、そこでようやく僕は鳥になれる。体は乾燥してカラカラなはずなのに喉が乾かない。でもそれなら健やかなんだと開き直って、僕は続けて空を飛ぶ。地上にすごく小さく、長針が男の子を飲み込むのが見えた。