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やさしさにふれて
母が亡くなった時、なんて娘だったんだろうって、その後悔はたとえることができないほどだった。
心のよりどころを失ったとも言えるだろう。
日本で葬儀を終えてからも、私のその辛い思いはあまり言えなかったし、また、言ったところで誰にも理解してもらえた気がしなかった。
韓国に帰って来て日常がまた始まった。
何クラスか担当している日本語の授業も再開しなくちゃいけない。哀しみをこらえて休講したお詫びなどをしながら仕事を始めた。
そんな時、あるクラスの生徒さん(おばさん)二人が、
「先生の辛い気持ちに寄り添いたいです」と言って、封筒を差し出してくれたのだ。
金額も覚えてないし、お金が欲しかったわけでもない。
ただ、ほかの誰もがかけてくれた慰めよりも、
封筒と共に控え目な表情で言ってくれた言葉、言葉というよりも私を心配してくれる思いが伝わってきて…
なによりも、やさしく伝わってきた気持ちが今でも忘れられない。
その封筒をしばらく傍においていた。
その二人はなぜか、その後、何ヵ月もしないうちに日本語の勉強をやめてしまって、私の前からいなくなってしまった。
いつまでも大切にしたい人たちだったのに。
今思うのは、
この言葉もやさしかったけど、封筒の中のお金。
お金にも慰めが、やさしさがこもるもんなんだと実感している。