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美しき生命から宇宙の肯定について

2008年。
当時中学生だった僕がテレビで観たあるCMはとてつもないインパクトを残した。
壮大な物語が始まりそうなAメロから世界観に引き込まれ、サビで一気にエネルギーは爆発し、感情が突き上げられたまま静寂へと向かう。

画面には
COLDPLAY
VIVA LA VIDA
と表示され、最後にリンゴのマーク。

アップルのiTunesのCMに起用された、coldplayのViva la Vida。
同作、および同作が収録されたアルバム「Viva la Vida(美しき生命)」は第51回グラミー賞において年間最優秀楽曲賞をはじめとする複数の賞に輝いた。

この曲及びアルバムに対する日本の反応も大きく、海外アーティストを中心とした音楽フェスのサマーソニック2008においてもcoldplayはヘッドライナーを務め、熱狂的なライブを披露した。
かく言う僕はフェスに行けず、テレビの録画を何度も何度も観た。
そして、上記のグラミー賞を受賞後の来日公演のチケットも外し、これもまた家で録画を何度も観た。
いつ観ても、この時にLovers in Japanは最高だ。演出が美しすぎる。
会場でこれを観れた人たちが羨ましい。

ここまで書いておいて言うのもあれだが、僕はcoldplayが好きだ。
中高生時代に聴いていた音楽というのはどうしてこうも大好きでい続けられるんだろう。
とにかく、僕にとってとても大事なバンドだ。

当時中学生だった僕はViva la Vidaのアルバムを何度も聞いて、特に好きだった曲は和訳もしてみたり、和訳を手伝ってくれた英語の先生に勧めたりした。
なんで壮大なスケールの曲をこうもいくつも生み出せるんだろうと思った。
そして、Viva la Vidaについてはどうしてこんな歌詞を書けるんだろうとも思った。

美しき生命ってどんな意味なんだろう。
こんな美しいものを生み出せる人がこの世にいるってほんとにすごいな。

そんなことを思っていたのをよく覚えている。
今にして思えば、盛者必衰で命の限りや爆発も含めた人間賛歌だったのかなと思う。
これでもかってくらい美しさを魅せてくれるバンドは後にも先にもこのバンドしかない。

2017年。
coldplayが8年ぶりにスタジアム単独ライブをやることになった。
場所は東京ドーム。なんと1日程のみ。
僕はまたチケットを外した。21歳だった。
まだタイミングではなかったんだろう。

そして2023年11月26日。東京ドーム。
僕はやっとcoldplayのライブに行けた。ライブ前に不安に襲われるくらい緊張していた。

ライブは、素晴らしかった。もうそれ以上の言葉が見つからない。
今まで見てきたライブの中でも最高だった。

coldplayのライブは光や紙吹雪の演出によって元々エモーショナルな曲がさらに強いエネルギーを持つ。
今そこにしかできない瞬間を作り出し、ライブとかそういうのを超えた「作品」のようなものと出会う
hymn for the weekendとか、もう分っていたんだけど、それでもその美しさに感動せざるを得なくなって泣いてしまった。

ちょうど公式から今回のツアーのライブ動画で、A Sky Full Of Starsが公開されていたので、ぜひ見てみて欲しい。
一人一人の光、星で作り上げる光景がもう最高ですよね。

そして、この日は奇跡のような瞬間があった。

ボーカルのクリスがファンが掲げるメッセージボードの一つを読み上げ、ファンの親子連れをステージに上げたのだ。
ボードには「天国にいる父のために"Everglow"を演奏して」と書いてあり、クリスは「もちろんいいよ。きっと宇宙にいるお父さんに届くよ。」となんとその場でピアノ弾き語りをしてくれた…。
もうこっちからしたら何が起きてるんだという状態で、彼らの優しさにというかもうこの状況が素敵すぎて、涙が止まらなかった。
二人にとっても、僕らにとっても忘れられない思い出になった。

クリスはライブ中に日本語で「日本に来れてうれしい」「みんなと一緒に歌いたい」など、頻繁に話を振ってくれてたくさん準備・勉強してくれたんだなぁと嬉しくなった。

そしてクリスはしきりに愛と宇宙についてMCで話していた。
今回のアルバム「music of the spheres」も銀河や宇宙がコンセプトになっていて、全体を通じて人の肯定を徹底的にしている。
コロナもあり、重苦しい空気が流れる今において、これほどポジティブなメッセージを発信し続けてくれることは難しいことだったと思うし、何よりありがたい。
ライブ中でも愛を感じるための時間をつくってくれたり、ライブ全体も宇宙との繋がりや愛についてのテーマを持ったセットリスト・演出だった。
美しき生命を歌っていた頃から、人の肯定は変わらないんだなと思った。
バンドとして世界的になり、色んな文化とも関わる中でもその姿勢は変わるどころかより大きくなっていった。
coldplayの曲はみんなで歌える曲が多かったり、ドラマチックな展開を魅せてくれるのも、会場の一体感をつくるのに大きな影響を与えている。

こうして書いている今もcoldplayを聞いている。
正直、ライブ始まる前は「このライブ終わったらもう楽しみがなくなる」と思って消失感がすごいのかと思っていた。
けど今、とても良いエネルギーに満たされている。
美しいものをもっと見に行きたいし、僕も自分なりの美しさで人に感動を届けたいと思った。彼らほどではないにしても、感動を通じて人と繋がりたいと思った。

そして何より、もう一度彼らのライブに行きたい。

ありがとう、coldplay。
また会える日まで。

おわり。

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