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Magic of Straw in リトアニア⑩争うボブーテたち
7月25日(木)。藁フェスも後半戦。昨日は遠出をしたので今日は腰をすえての終日ワークショップデー。いつも通り学食での朝食を終えたら、ワークショップ会場へ移動し、同じ敷地内のテックパーク内にあるカフェ、バルコダスでの昼食をはさんで午前と午後2つのワークショップが予定されている。
午前中最初のワークショップは、中国のアイリンによる藁で作るイメージ(平面)、日本からはリョウコさんによるオリジナル立体製作、セルビア4人衆による藁で作る花作り、ウクライナのライサによる藁で作るイメージ(平面)と、ウクライナのアンナによる藁で作るネックレス。
私は悩んだがセルビア4人衆による花作りに参加することにした。ロジカ、ネヴェンカ、、ヴェラ、ジョゼフィーナの4人のセルビア人ボブーテたちによるワークショップとのことだが、どうやら4人の中でたたずまいも大御所ナンバーワンのジョゼフィーナが先生で、他の3人がアシスタント、という設定のようだ。
参加してみて分かったことは、3人はアシスタントというよりただの参加者(というか旅友)だった。始まって間もなく、説明があるわけでもなくなんとなく周りを見ながら見様見真似で藁を花弁形に切り取るところまでいったあたりでわからないことが出てきだし、アシスタントのネヴェンカやヴェラに質問すると、「よくわかんないのよね、ジョゼフィーナに聞いてみて!」と同じ返答が。見ていると彼らも老眼鏡ごしにおぼつかない手つきでキョロキョロしながら製作している。
(↓レッスンするジョゼフィーナ師匠。手に持っているのはボンド。手元にある白い紙の上の粉状のものは麦藁をハサミで細かく切ったもの。花の中心部(おしべとかめしべとか)になる。左手前のリボンのついたのは師匠の作品。永遠の乙女なのである。)
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(↓製作中。透明の梱包テープに裂いてのばした麦わらを隙間なく貼り付け、花弁の形に切る。真ん中の軸(茎)は針金。がくも麦わらを丸めて作る。)
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(↓切った花弁をがくに貼り付けていく。バランスが難しい)
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(↓私の完成品。自分で作ったからいびつな感じも愛おしいけれども、いかにプロの作品の完成度が高いか、思い知らされる)
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(↓ジョゼフィーナ師匠の作品たち。気の遠くなる作業量であることがうかがい知れる・・・)
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完成したところで、他のワークショップ見学に隣の部屋へ。
すると、なんだかおかしな空気が漂っているテーブルが。リョウコさんのワークショップテーブルだ。とっても繊細な、細い藁で組み立てた多面体に、白樺の樹皮でできた細かいパーツをつなげていく、というもの。とてもとても繊細で、備品まで心が行き渡っていて、日本らしいワークショップ。参加者にも大人気。
さぞかし和やかに進んでいるのだろうと覗いてみると、何と、リトアニア人参加者がひとり、泣いているではないか。周りで何やらなだめたり議論したりする周りのボブーテたち。横で困っている様子のリョウコさん。どうしたのか聞いてみると、リョウコさんが持参した作品を吊り下げる計器や日本製の使いやすい糸切りバサミなどにボブーテたちが目を輝かせ、売って欲しいと誰かが言い出したらみんな欲しがったのだという。なかなか日本製品を手に入れる機会のないであろうボブーテたちをおもんぱかり、時間をかけ買い集めたそれらを破格の値段で譲ることにしたら、ハイエナのごとく奪い合いが始まり、全員に行き渡る数がなかったためケンカになったのだと。
驚いているとボブーテのひとりが、モモコも日本人だよね、何か持ってきていないのか、と声をかけてきた。そうか、ボブーテたちにとって日本製の手芸工作用品はクオリティが高いが値段も高い、なかなか手に入らない憧れの逸品なのだ。そういえば、ジョゼフィーナのワークショップで、ものすごく扱いにくいベタベタした黄色いボンド(乾いても黄色がちょっと残ったりする)に苦戦していたら、「日本製じゃないから扱いにくいわよねー」とジョゼフィーナが言っていたっけ。そうか。日本製のお手頃な手芸工作用品を持ってきていたら、最終日のマーケットにそれを出したら、みんなさぞかし欲しがっただろう。自分の航空券代の足しに販売云々ではなく、惜しみなく自分の技を日々さらけ出し教えてくれるボブーテたちのより良い作品づくりのために、持ってくればよかった。とはいえ、後悔しても後の祭りなのだけど。
(↓リョウコさんのワークショップテーブル。黒一点の男性参加者は熱いボブーテたちに押され気味)
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今回ケンカになっていたのは東欧圏の参加者たち。人は出身国よりも個人の個性がその人の人柄の大部分をかたち作ると、常日頃思っているけれど、藁フェスで印象的だったのは東欧出身者たちのたくましさ。それに比べ西欧出身者たちは基本的に他人に深入りすることはせず、さらっとしている。東欧は西欧よりまだまだ生活環境は過酷だろう。マーケットで藁作品を売り捌き、限られた材料を入手するのは西欧で同じことをするより色々大変であろうことは想像がつく。時にはなりふり構わず勝ち取らなければならないこともあるかもしれない・・・・そんなことを思わされるハプニングだった。
ひとつ言えることは、東京での日々に疲弊していた私は、東欧出身者たちのエネルギッシュで、年齢に関係なく藁でものを作るということに目をキラキラさせて楽しそうに打ち込む姿と、時には圧倒されるたくましさやおせっかいさに、明らかに元気をもらっている。
そんな気づきの後の、バルコダスでのランチ。鶏の胸肉の下には雑穀。そういえば、藁フェスが始まってから、昨日のベジタリアンランチ以外は毎日鶏の胸肉を昼食に食べている。
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(午後に続く)