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Magic of Straw in リトアニア⑫今に生きるソダス
藁フェス5日目、7月26日金曜日。早いもので初日から全力疾走の藁フェスも、残すところ今日を入れて2日。一日ワークショップ三昧の次の日は外出の日、という緩急つけたメリハリあるプログラムのおかげで飽きずに、何より遠出の日は神様がご褒美をくれたかのように天気がいいのも手伝って毎日これ以上ないコンディションで過ごせている。
今日はまた、一昨日のように朝食後貸し切りバスで日帰り遠出の一日。ザナヴィカイという、ヴィリニュスから200キロ西の村にある荘園博物館を見学し、リトアニアの伝統料理を楽しみ、今回の参加者のひとり、ヴィダが夫のアルーナスと運営する、自宅兼博物館に立ち寄り帰ってくるという日程だ。
学食での朝食後、皆勝手知ったる様子でバスの席に着く。すでに縄張りができているようで、前回気に入った席は自分の場所だと着席者に移動を促したりする強者もいる。そんなちょっとした小競り合いもある中バスは出発。今日は総移動距離500キロ、迷ったり揉めたりしているヒマはない。
リトアニアって南欧と同じで夏は気候がいいのね、と勘違いしてしまいそうなくらい、連日晴れて気温もこちらにしてはかなり上がっている。地球温暖化の波はここでも顕著で、夏が暑いことが増えたし、雪のないクリスマスも珍しいことではなくなりつつある。クーラーもなく猛暑仕様ではない住宅環境のため、熱波が来ると高齢者など熱中症で搬送されたり亡くなる人が途端に出始める。本当にこれから地球はどうなってしまうんだろう。
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そんなことを思いつつも、のどかな車窓の風景を楽しみ、ひと眠りするとお昼前にザナヴィカイ博物館に到着。ここは中世に荘園だった領地を建物も含め保護し、ザナヴィカイ地域一体の歴史や人々の暮らしを再現、今に伝える郷土博物館として一般に公開されている。博物館を囲む、何百年も前からその歴史を見守ってきたであろう立派なポプラ並木が風に吹かれ、さらさらと耳に心地よい音をたてている。私たちがバスを降りるとすぐ、見事な織りが美しい民族衣装を身につけた男女が出迎えてくれた。
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博物館内ではリトアニアの昔の農村生活を今に伝える展示を見ることができる。
(↓豪農か領主の寝室だろうか、ヘッドの彫りとカバーが美しいベッド。天井からぶら下がった籠はベビーベッド)
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(↓リネンの材料、亜麻を収穫する農民たち)
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(↓収穫して乾燥させた亜麻)
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(↓機具を使って、亜麻をほぐし繊維を取り出す)
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(↓糸巻き機を使い、糸状に紡いでいく)
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(↓紡いだ糸を染め、機織り機でリネンに仕立てていく。気の遠くなる作業を経て、美しいリネンが完成する)
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博物館の中をガイド付きのツアーで回った後、再び外に出るとさっき見かけた民族衣装の男女が歌を歌い、収穫を祝う儀式を再現し始めた。その年の恵みからこしらえたリトアニアの食卓にになくてはならない黒パン、蜂蜜、チーズを捧げ、皆で口にし、歌を歌い収穫に感謝する。
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荘園の敷地内には、建物がいくつも点在していて、それぞれ展示があったり、事務所になっていたり、カフェレストランとして営業していたりする。私たちは大きな、元家畜小屋であろうか、ソダスやその他の伝統工芸品が展示されているという建物に入った。
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ここに展示されているソダスは、その風合いを見る限り、かなり古そうなものもあり、リトアニアで出版されているソダスの書籍などで見かけた印象的な作品がいくつもあって、見応えがあった。
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いわゆる、「こういうところに本来飾られていたであろう場所」で目にするソダスは、なんとも言えず幻想的で、天と交信できる気分になるのもうなずける。ソダスが吊るされていることで、ミステリアスな雰囲気で場が満たされている。
一体どれだけの藁と時間がこのソダスに注ぎ込まれたのだろう。薄暗い木造家屋の手編みレースのカバーがかけられたベッドの上に腰掛け、ひとり黙々と麻糸にライ麦の藁を通し、気持ちと手の赴くまま、ソダスを編み上げていく小さな丸い背中のボブーテの姿が想い浮かんでくる。
(↓ここまでくると、どれだけあちこちから角度を変えて眺めても、何がどうなっているのか、崩れかけているのかはたまたそういうものなのかも分からないが、その存在感にただただ圧倒される)
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ただ、一つだけ残念だったのが、1階の、ホールにもなっている屋内の照明が蛍光灯だったことだ。スポットライトを設置するとか、そこはもうちょっと工夫が欲しい。せっかく、とても文化遺産的にも貴重なソダスをいくつも飾っているのだから。それを差し置いても、あそこのソダスたちは存在感があったのだけど。
それとは対照的に、2階のカオスな展示場は、展示を見るには暗すぎる位明かりがなかった。写真もフラッシュがないと何も写らない。特に日の光を浴びると劣化しそうなものは見当たらないのだが、この辺の適当さは、まあ、「ならでは」なのかもしれない。展示されたソダスがこれからも傷つくことなく無事に残されていくことを願うばかりだ。
(↓2階は1階に比べるとキワモノが多く並んでいた。電話ボックスに見えて仕方がない一種狂気に満ちたこれは祭壇だろうか。誰かの念がしこたま籠っていることは間違いなさそうである。)
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(↓傘・・・。ふと魔がさして作ったのだろうか。)
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(↓木彫りの糸巻き飾り、ヴェルプステ。こういったキワモノ以外の伝統工芸品も暗がりに展示されている。)
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照明問題はあるものの、展示されている品々は圧巻の、展示館であった。
外に出ると、ボブーテたちは草原で休んでいたり、公開されていなさそうな古屋を覗き込んだり、白樺並木をバックにポーズを決めて自撮り大会をしたり、思い思いの時間をみな、気持ちの良い風に吹かれながら過ごしている。
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午後2時からは隣接したレストランで、遅めのリトアニア伝統料理の昼食の予定だ。みんなお腹が空いて、レストランの前に集まり始めた。
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(⑬に続く)