アポロは恋に落ちるのか
「空に落ちる」
歌詞を考えていたらふと浮かんだフレーズ。かなり聴き馴染みのあるフレーズですけど、どこで使われてたか考えてみても出てこなかった。
おもしろい言葉。空に落ちる。詩的な表現で、かなり好き。本来、空へは『昇って』いくのに、『降って』いく表現が使われる。あえて矛盾させるところがポイントとみたね。
つまり、俺たち人間にとって『落ちる』とは『重力に従って落下していく』こと。天は上で、地は下。なのに『空に落ちる』から面白いんだ。
でも上と下って表現も不思議。だって地球は丸いのに。極端に引いて見てみれば、俺たちの下はブラジル人の上だ。
結局、重力を基準に上とか下とか決めてるってワケ。
ところで話は変わるんだけど、「恋に落ちる」っていうじゃない?これもまた素敵な表現。
なんで恋に『落ちる』のか。恋にも質量はあるのだろうか。たぶん昔の人が酒瓶とか落とした時に、そのスピード感と衝撃がまるで恋のようだったんじゃないかな。そうだと仮定する。俺がいま決めた。
それでは、重力加速度が小さい月面では、酒瓶を落としても(地球と比較すれば)大した速度は生まれない。これはつまり、月面常識における『恋に落ちる』とは、まったくもって突発的なものではない。落下するさまを眺めている状態なのだ。
地球よりもゆっくりと、ゆっくりと時間をかけて、落下していく。
これはもう恋じゃない。愛だ。
人は月面で恋に落ちない。愛に落ちていくのだ。
「I love you」を「月が綺麗ですね」と表現した夏目漱石の真意はコレだったのか。