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羊をめぐる冒険
オーディブルで村上春樹の「羊をめぐる冒険」を聴いた。朗読は染谷将太。
めちゃくちゃ面白かった。それは染谷将太の朗読によるところが大きい。染谷将太の朗読は、かなり良かった。単調に朗読しているようでいて、キャラクターごとに微妙に読み方を変えているので、とても聴きやすかったし、終盤、主人公と鼠のやり取りと、主人公とジェイのやり取りで泣かされてしまった。多くを語らずとも、キャラクターの感情の動きが伝わってくる素晴らしい朗読だった。もともと染谷将太は好きだったけれど、更に好きになった。
原作を読んだのは高校生の頃だから、20年くらい前。当時は、なかなか面白いじゃん、くらいにしか感じなかったと思うけれど(その証拠にあまり読み返していない)、40歳を前にすると、物語のテーマが胸に迫る。時の流れは誰にも止められないし、いつかは誰もが大人にならなければならない。例え大切な人や物を失ったとしても。
鼠の「俺は俺の弱さが好きなんだよ。苦しさやつらさも好きだ。夏の光や風の匂いや蝉の声や、そんなものが好きなんだ。どうしようもなく好きなんだ。君と飲むビールや・・・」という言葉が、20年前は「洒落たセリフだなぁ」くらいにしか感じなかったのに、今では、鼠の気持ちがよく分かる。自分は完璧ではないし、不完全な存在だけれど、自分自身や、自分の見てきたもの、感じてきたこと、それらを肯定したいんだ、ということなのだろう。
とにかく、良かった。まだシリーズでオーディオ化されていない「風の歌を聴け」と「ダンス・ダンス・ダンス」の朗読もぜひ染谷将太にお願いしたい。
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