彫師修行17日目 「針を変えた方がいいね」
日付が変わって昨日は、彫師修行17日目。
10時にスタジオに行き、修行部屋で針の練習。
師匠は朝からお客様の対応。相変わらず忙しそうだ。
お客様が帰った後、師匠が修行部屋に顔を出した。練習した俺のパッドに描かれたキャラクターを見て、「針を変えた方がいいね」と言った。
「目のところが潰れちゃってるもん。それにキャラクター物はパキッと仕上げた方が良いと思う。細い針を使ってみなよ」
「途中で針を変えるんですか?」
「そうだよ。一番の目的は綺麗に仕上げることだからね。そのために最適な針を選ぶ。針を何本使っても構わない」
「何本も使ったら針がもったいない気がしちゃって」
俺が言うと、師匠は表情を変えずに「綺麗に仕上げなきゃ」と言った。
確かに、針がもったいないとか言ってる場合ではない。目的を見失っている。
「分かりました。ありがとうございます」
「師匠っぽいアドバイスだったでしょ?」
師匠は笑いながら部屋を出て行った。どうやら真面目な雰囲気に耐えられなかったようだ。
今、俺はキャラクター物のイラストを針の練習に使っているのだけれど、師匠のアドバイスの通り、針を使い分けてみたら、仕上がりの雰囲気がだいぶ変わった。プロはこうやって絵に対する最適な針を選んでいるのだろう。
針を選ぶのは、スケボーのパーツ選びに似ているなぁ、と思った。こういう路面ならウィールはこれにして、そういうセクションなら板はそれにして、という感じで。
そのうち俺も好きな針ができたりするのかなぁ?