創薬の流れ、課題
ソシウムはこのたび、株式投資型クラウドファンディングによる資金調達への挑戦を決めました。 このnoteでは事業の裏話やビジョン、ソシウムの展望についてお伝えしていければと思います。今回のnoteでは、「新規医薬品開発の流れ」や「開発費用」、「開発における課題」についてお伝えします。
※ソシウムのクラウドファンディングは、2024年6月9日(日)10:00から開始します。募集ページは以下のURLからご覧いただけます。ぜひ一緒に事業を推進していただける仲間をお待ちしています。
開発の流れ
新規薬品の開発は、大きく分けて6つのフェーズに分かれています。一つの医薬品を販売するために9~17年もの長い期間を要する新規医薬品の開発について、各フェーズでの動きをご説明します。
1. 医療的ニーズの発見・市場見込み調査
医薬品の開発プロセスは、まず医学的なニーズや未解決の問題の発見から始まります。医学的なニーズは、特定の疾患や症状の治療・予防が困難であること、あるいは既存の治療法による副作用や効果の限界などが背景にあります。また、開発費用を回収するため、その疾患の市場見込みの調査も行います。
2. 基礎・探索研究:2~3年
特定の疾病に対する有効物質の発見から始まります。植物や微生物などの天然素材だけでなく、合成成分やバイオテクノロジー、ゲノム情報の活用など、科学技術を結集して成分の発見と研究をします。また、疾患が引き起こされる原因の特定も含まれます。
3. 非臨床試験:3~5年
動物実験または、培養細胞を使って新薬候補である物質の有効性や安全性を確かめる段階です。候補物質の吸収や代謝、排泄の過程の観察、品質や安全性に対する実験も行います。
基礎・探索研究と非臨床試験は明確な線引きは無く、両者を往ったり来たりしながら、より安全性・有効性が高く、患者様のQOLを改善する新薬候補を創り出していきます。
4. 臨床試験:3~7年
臨床試験ではヒトを対象に、非臨床試験をクリアした成分を使って、安全性と有効性を確認します。この臨床試験は通常、第I相から第III相までの段階で行われ、段階的に対象となる患者の数が増加します。
第Ⅰ相
少数の健康な方を対象に、副作用が発生しないかなど成分の安全性を確認する試験です。
第Ⅱ相
少数の患者様を対象に、成分の有効性や安全な投与量、適切な投与方法などを確認する試験です。
第Ⅲ相
多数の患者様を対象に、成分とプラセボ(本物の薬と見分けがつかないが有効成分が入っていない偽の薬)を比較した、安全性や有効性を確認する大規模な試験です。
5. 承認申請と審査:1~2年
臨床試験が成功し、医薬品の安全性と有効性が確認されると、製薬企業は医薬品の承認を申請します。規制当局(日本においては医薬品医療機器機構:PMDA)が、提出されたデータを詳しく審査し、医薬品の安全性と有効性を確認します。この審査の結果、学識経験者などで構成する薬事・食品衛生審議会の審議を経て、厚生労働大臣によって承認されます。
6. 市場への投入・モニタリング:投入後随時
承認が得られると、医薬品は市場に投入されます。市場への投入後は、医薬品の使用状況や効果、副作用の有無などを定期的にモニタリング(製造後販売調査といいます)し、必要に応じて情報の更新や追加的な試験が行われます。
このように新規医薬品は、長い年月と多くの方のご協力があって初めて誕生します。
開発費用と成功率
製薬企業各社は、優れた医薬品を継続的に開発し、安定的に供給することを通じて、世界の人々の福祉と医療の向上に貢献するとともに、健康で質の高い生活の実現に寄与することを使命としています。しかしながら、医薬品製造業は他業種と比較して開発費用が高い(売上高に対する研究開発費率は全産業平均で3.4%、医薬品製造業で9.7%に達する)という性質上、経済性の観点でやむを得ず開発中止に追い込まれる場合もあります。ここでは、医薬品の開発にかかる費用とその成功率について解説します。
直近のデータによれば、1つの医薬品の開発において、数百億~数千億円規模の開発費がかかっています。別のデータによれば、創薬ベンチャー企業における基礎研究・非臨床試験のフェーズにて約30億円、臨床試験の第Ⅰ相で約23億円、第Ⅱ相で約60億円、第Ⅲ相で225億円の開発費がかかっています。
一方、基礎研究から承認までの成功確率は、2010年頃で2万分の1、2024年現在では3万分の1といわれており、年々難易度が上昇しています。各フェーズにおいては、基礎研究・非臨床試験では約40%、臨床試験の第Ⅰ相では54%、第Ⅱ相では34%、第Ⅲ相では70%の成功率です。
特に創薬ベンチャー企業においては、臨床試験の第Ⅱ相における数十億円規模の開発費用と低い成功率は大きな壁といえるでしょう。成功率が低い原因はいくつか理由がありますが、多くは、基礎研究や非臨床試験での細胞・動物と、臨床試験でのヒトとの違いが根本にあります。いかに基礎研究・非臨床試験において、ヒトでの有効性が見いだせる成分を選択できるか、そして、この第Ⅱ相試験をクリアできるかが、承認への成功のキーポイントといえるでしょう。
開発における課題
ここでは、創薬ベンチャー企業における新規医薬品開発の課題と、その課題に対応するための研究体制や技術について説明します。
1. 高い開発費用
新規医薬品の開発には非常に高いコストがかかります。これは、研究開発のための実験関連費や人件費、治験薬製造費用、臨床試験費用など様々です。さらに、開発化合物がやむを得ず開発中止に追い込まれる場合もあります。
2. 長期間の開発期間
新規医薬品の開発には長期間がかかります。特に臨床試験の段階では数年から数十年かかることもあります。この長期間の開発期間は、開発企業にとって負担となるとともに、患者様にとっては医薬品がすぐに手に入らないといった不利益が生じます。
これらに対応するために、いくつかの開発方針があります。例えば、「ドラッグ・リポジショニング」という考え方です。ドラッグ・リポジショニングは、既に承認されている医薬品を、別の疾患でも有効性があることを見出すことです。ドラッグ・リポジショニングに使われる医薬品は、すでにヒトでの安全性や薬物動態の試験が済んでいることが多いため、臨床試験の第Ⅰ相などのいくつかの試験をスキップできるとともに、副作用の有無といった情報も充実していることから、臨床試験において開発中止してしまう確率を下げることが期待できます。三菱総合研究所によると、開発に必要な期間を 3~12 年、費用を 50~60%削減できるとの報告もあります。このように、開発期間・費用ともに大幅に削減できることが期待されるドラッグ・リポジショニングは、患者様へ迅速に医薬品を届けることができる戦略の1つです。
最後に
ソシウムでは、「薬のない人に薬を、薬の効かない人に薬を」をビジョンに掲げ、患者様に一日も早く治療薬を届けることを目指し、新しい創薬技術の開発と並行して、新規医薬品の自社開発も行っています。
現在、ソシウムにて実施中の新規医薬品の開発は、このドラッグ・リポジショニングの考えに着目し、開発期間を短縮すると同時に、開発費用を抑えた開発フローにより、医薬品を創出しています。また、私たちが目指す世界の実現に向け仲間を増やすことを目指して、株式投資型クラウドファンディングを開始します。ぜひ一緒に事業を推進していただける仲間をお待ちしています。
(株式投資型クラウドファンディングは2024年6月9日(日)10:00から開始します)