続・感情労働(2)「同時性」+「異質性」ゆえのストレス
対人サービスの特性には、
「無形性」形がないこと
「同時性」生産と消費が同時に行われること
「異質性」環境により接遇の品質が異なりうること
「消滅性」保存がきかないこと があります。
そしてその組み合わせでストレスが発生すると考えます。
「同時性」+「異質性」ゆえのストレス
製品の場合、品質基準はメーカーの所有物。原理的には製造コストを下げると品質と顧客満足度と売上が落ちる。そのバランスを取るのが品質基準。企業は品質基準を独自に定めて、それに則って製造販売する。
しかし対人サービスの品質基準は独自で決められません。接遇の品質基準はお客様の心次第。お客様にはいろんな方がいるし、その要求も状況も多様なので、要求される品質は時と場面で変化する。つまり、その場限りの個別品質基準しかないのです。
例外があるならば「短時間接遇」「教える接遇」「断れる接遇」ですね。
「短時間接遇」例えばコンビニの会計。流石に顧客もそこにディズニーランド並みの品質は求めません。簡単かつ早く済ませることが顧客要求だから紋切型な接遇の方が満足度が高いです。
「教える接遇」医者、先生、ジムのトレーナーなど専門技能を活かして指南するのが本分の職業では、顧客要求は技術を活かして施してほしい、すると提供側が優位(上位)になりやすく一方的に接遇品質を定めやすいですね。
「断れる接遇」顧客要求が過剰な時に「嫌なら他を当たってくれ」と言える商売も有利です。業種や地域によって顧客要求を無視しても商売に影響しない職業があります。その場合も提供側が接遇品質の主導権を持ってます。
しかしこれらに当てはまらない対人サービスのほうが多く、その接遇はストレスが多いもの。
たとえばトラブル対応。通常は起こらないトラブルに顧客が損害を被った場合、その賠償も含めて個別に対応する必要がありますし、当然そこには誠意という感情もセットで提供しなければ自体は収まりません。大概、こういう個別対応はハードな感情労働なのです。
感情労働は顧客の個別性とのせめぎあい。個別性の尊重が前提となる看護師や介護職は、感情労働のストレスが強い職業の代表です。ちなみに管理職が部下に接することも個別対応という意味でおなじですね。
いずれも「異質性」と「同時性」が共存することによりストレスが生じます。ゆっくりと推敲する時間はありません。発言や態度のひとつひとつが成果物で品質評価の対象になるから気を遣います。
異質で同時な感情労働は、こうして常に緊張を強いて、従事者にストレスを与えるのです。