福祉から平和を(12)渋谷バス停殴殺事件
2020年11月、東京・渋谷区のバス停でホームレスの女性が殴り殺された事件を頻繁に思い出す。生前の彼女を偲ぶ記事に触れて以来、「彼女の心を支えていたものは何だったのだろう」と思うようになった。
経済的、身体的、精神的…どの面をとっても辛い状況にも関わらず、弟にも友人にも助けを求めず必死に生きていた彼女。対照的なのが逮捕・起訴された被告(2022年4月死亡)の生活環境と犯行動機。食うに困らない資産家の息子の犯行動機は「邪魔だった」。周りに迷惑をかけないよう努めた彼女とは正反対に、迷惑に感じる雑念を抑えられず衝動的に人を殺めた男。
8円しか所持していなかったけど彼女の心はとても豊かだった、食うに困らない男の心はとても貧しかった、のだ。そして男は自分を殺めて真相がわからなくなってしまったが、この事件から学ばないといけないと思うのだ。
自分を殺めなかった彼女は、他人も自分も尊んでいた。
他人と自分を殺めた男は、他人も自分も尊んでいなかった。
解明すべき課題はたくさんあるが、そのなかでも最も重要だと思うのは、自分を尊ばなくなる原因の究明だ。その要因は社会構造にあると思っている。
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