【レビュー】ヨン・マルティンという才能 EL第1節 OGCニース - レアル・ソシエダ
24-25シーズンのヨーロッパリーグ(EL)が開幕。
初戦の相手は、去年リーグアン(仏)で5位の成績をおさめたOGCニース。
今季からUEFAの大会フォーマットが大幅に刷新されたが、大原則は変わっていない。勝てば良いだけ、勝ち点を積み上げれば良いだけ。
チームコンディション
ブライスは相変わらず復帰が早い
前節でサディクがハムストリングを負傷(軽傷らしい)
ちなみにUEFAの大会も当日の登録枠は23人で、ラ・リーガと変わらない。
ここは意外と各リーグに違いがあり、ブンデス(独)が20人だったりセリエ(伊)が25人だったりとまちまち。なお、リーグアンは20人。
スターティングメンバー
ニースの3−4−3に合わせて、ソシエダは5バックを採用。
過密日程ということで、直近のバジャドリー戦から8人を入れ替えた。
ブライス以外のフィールドプレイヤーが、みんな下部組織出身というのがなんだかとても新鮮。
試合結果
1ー1
得点:バレネチェア(アシスト:ブライス)
5試合ぶりのゴーーーール
チームスタッツ
データ上のビッグチャンスは0、でも決定機はあった。
シュート位置
先日、シティのハーランドがプレミアでの通算100ゴールを達成した。
その内訳はペナルティエリア内から94点、エリア外からはたった6点だったとのこと。結局そういうことなのかと納得させられた。
ミドルも良いけど、もっと侵入してゴールに近いところからも打ってほしいなぁという話でした。
個人スタッツ
ニースはPrgC、PrgPがどちらも多く、積極的に攻めていたことがデータにも反映されている。でもxG(ゴール期待値)は0.5とかなり低い。
これはつまり、ソシエダの最終ラインが良かったという証拠に他ならない。
試合内容
超攻撃型のニースとソシエダの5バック
ニースのビルドアップから。
3CB+1を低い位置で作り、残りの6人を前線に配置してしまう超攻撃型。
CBが幅を取り、サイドからドリブルで持ち上がる。
前線は15番ムココを一番高い位置に置き、その下のシャドーに2〜3人、両ワイドに2人というのが基本型。
20番ルシェの役割はセンターハーフ(CH)で、ビルドアップの中継点として少し引くことが多いが、19番ブアナニと29番ゲサンはシャドーとして常に前へ出る意識を持っている。
そんなニースのビルドアップに対してソシエダは、CB中央に31番ヨン・マルティンを据え、両脇にスベルディアとパチェコを配した5バック。
流動的なニースのシャドー(19、20、29番)に対して、誰を捕まえるではなく、自分の担当エリアに入ってきた相手を捕まえる、ゾーンディフェンスで対応した。
もしシャドーが3人とも上がってきてディフェンスの人数が足りない場合には、スビメンディかパブロ・マリンがヘルプに当たる。
オドリオソラとアイエンは、ニースのWB(26、92番)とマンツーマン。
ニースの前線6人に対して、ソシエダは後ろ7人なのでこれで数は足りる。
ヨン・マルティンという才能
脱線する。
どうしても言及しておきたいことがあるので。
まず、ゾーンディフェンスの担当エリアというのは、ボールの位置によって決まるということを補足しておく。
”基本は”ボールと自分たちのゴールを結んだ直線上を中央とする。
たとえば左サイドにボールがあればこんな感じ。
ここを軸であるマルティンが抑え、スベルディアとパチェコはマルティンの横をカバーする。あくまで基本的な認識の話であり、実際の試合ではチーム戦術やプレイヤー判断によりポジショニングに違いが出る。
この試合で中央を担っていたマルティンの活躍は素晴らしかった。
中央からラインブレイクされる(裏を取られる)ことはほぼ無かったし、マッチアップすることの多かった期待の若手ムココにも全然やられていない。
ライン間(システム上どうしても空きやすい)で受けたシャドーが、ドリブルで持ち込んできた時も的確に対処していた。
その他、こまめにラインを上下させる統率力や、ジャンプで伸び切った状態からでも強いヘディングでクリアできる上半身の強さなどなど。
英ガーディアン紙の『2006年生まれの世界で最も優れた選手の一人』として選ばれた素質は伊達じゃない。
ヨンマルくんはソシエダの宝ですね。
話を戻します。
435分ぶりのゴール
ソシエダは試合開始直後こそハイプレスの素振りを見せていたが、2トップ+ブライスではニースのビルドアップにプレスを掛け続けることは出来ないと即座に判断。
ブライスが中央にいるCH8番ロサリオをマークし、オヤルサバルとバレネチェアでサイドを限定させるプランに変更した。
ニースのビルドアップをある程度許し、分断されていた前線とDFラインを近付ける。ソシエダにとっては守備陣系がコンパクトになるし、カウンターを打つスペースが生まれるという点でもメリットはある。
前半17分。
ニースを左サイドに限定しているシーン。
ニースが中央へ入れたパスにブライスがプレスを掛け、8番ロサリオがロスト。ニースはビルドアップ時、もう1人のCHであるはずの20番ルシェをいつも上げている。
そのためここで奪えたソシエダは大チャンス。
オヤルサバルに釣られたダンテの空けたスペースに、ブライスが優しい優しいパスを送り、最後はダイレクトでバレネチェア。
久し振りに絶叫してしまいました。
ゴールシーンは 0:21 から
ブライスとダンテの頭脳戦
ニースは保持だけでなく、非保持でも攻撃特化の姿勢を見せてきた。
これはソシエダがゴールキックからのビルドアップを試みるシーン。
ニースは3バックの陣形にはこだわらず、完全マンツーマンでのハイプレスを仕掛けてきている。ニースの布陣に合わせていつもとは異なる守備的な5バックで臨んでいたソシエダは、終始このハイプレスに手を焼き、有効的なビルドアップを見出せなかった。
でもニースの素晴らしいハイプレスの話をしてもつまらない。
なので逆に、そんな状況を打開しようとしていたブライスのプレーをちょっとピックアップしてみたい。
前半32分のシーン。
ソシエダのビルドアップに対し、ニースはやはりマンツーマンで張り付いてハイプレスを仕掛ける。
ブライスはインテリオールのマリンと近い位置にポジショニング。
間にいたニースのCH8番がマリンのマークを選んだことを確認すると、フリーでいるダンテの方をちらちら見ながら、右サイドに寄ってくる。
ダンテはニースのマンツーマンの原則に従い、少しずつ距離を詰めてくる。
たっぷり10秒以上かけてペナルティ近くまで下りてきたブライスにレミーロからパスが出た瞬間、ダンテが猛プレス。
ブライスの狙いはレミーロに落としてロングボール。ダンテを誘い出して作ったスペースをオヤルサバル&バレネチェアに託したのだろう。
マンツーマンのハイプレスを逆手に取った頭脳プレーだった。
ちなみにこの後、ダンテは既にボールを持っていないブライスをあからさまなアフターで押し倒す。
審判に笛を吹かせ、ソシエダのチャンスを未然に防いだ。
ダンテはダンテで頭が良い。
ブライスのサイドフロー
ブライスの話をもうひとつ。
この試合のブライスは、リーガではあまり見せないサイドフローを頻繁に行っていたのが印象的だった。
サイドフローとはインテリオールの動きのひとつで、高い位置に配した右WBと、低い位置に配した右CBの中間に下りてくるというもの。
WBオドリオソラがニースの左WB(26番)を引っ張っているため、ブライスの動きに対応できるのはCH8番しかいない。
ただもしこのCH8番がブライスへのマークしたままサイドに流れると、ニースは中央にスペースを作ってしまうことになり、今度は縦パスを差し込まれやすくなる。
なので普通はそれを嫌がり、マークを放す。
結果ブライスはサイドでフリーになり、プレス回避の出口として機能する。というのがサイドフローの動きになる。
そんなブライスの頭脳プレーその2だったが、実際にはニースのCH8番はためらいとかまるでなく一緒にサイドへ流れてきた。(ニースらしい)
しかもスベルディアは素直にブライスにパスを出すし、オヤルサバル&バレネチェアも特に楔に下りてくる素振りも見えないしで、サイドフローの成果は得られていなかった。
5バックには成熟の余地があるということで。
ひとまず勝ち点1
オフェンス面での内容はあまり良くなかったが、ひとまず勝ち点1を得た。
ターンオーバーしながら、ニースの戦術に合わせながらのアウェイゲームをドローで終えられたことはとても大きい。
今後の日程やらELでの対戦相手やらを考えると、これで充分。レミーロとマルティンの活躍も素晴らしかったし、満足してます。
EL次節はホームで、ベルギーのアンデルレヒトと。
こちらは勝利必須なので、どんなメンバーと戦術で臨むのか楽しみですね。
終わり
前節のリーガ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。