【レビュー】ハイプレスがピンチを招く 第18節 セルタ - レアル・ソシエダ
2024年のラストマッチ。
レアル・ソシエダは現在7位。
前節ラス・パルマス戦に引き分け、連勝が5でストップ。
依然として6試合連続のクリーンシートを続けているものの、チャンスシーンが減ってきている。
良い流れをこの先もまだ継続させるためにも、勝利で1年を締めくくりたいところ。
前節、ラス・パルマス戦
チームコンディション
登録されているものの、スビメンディとアゲルドが怪我のため欠場
オドリオソラも怪我
スターティングメンバー
パチェコとトゥリエンテスを起用
右WGセルヒオ・ゴメスでのスタートは第7節マジョルカ戦以来
セルタはリーガでは珍しい3バック
試合結果
0ー2
チームスタッツ
自陣でのパス本数が多く、チャンスが少ない。
シーズン序盤の頃に戻ってしまったかのようなスタッツ。
シュート位置
前半
後半
個人スタッツ
試合内容
ハイプレスがピンチを招く
セルタのベースは3−4−3。
ビルドアップ時はここから非対称の形に変化する。
これに対してソシエダは、いつものようにマンツーマンでハイプレスを掛けにいく。
セルタが3バックかつCH2人(6&8)があることで、ソシエダの前線5人のマンツーは固定される。
後は右SBアランブルと左SBアイエンも高い位置を取ってマンツーマン完成。
ただ、ちょっと問題がある。
それがトゥリエンテスのマークする12番アルフォンソのところ。
12番アルフォンソはビルドアップの時こそトップ下の位置に下りてくるが、本来は右WGのプレイヤー。だからこのままトゥリエンテスがマンツーでついていくとおかしなことになってしまう。
ハイプレスでアイエンが前に出てきているため、必ずその後ろにスペースが出来る。そこを狙って12番アルフォンソが斜めに動くと、トゥリエンテスは自陣に戻りながらのディフェンスを強いられてしまう。
イエローをもらったのもやっぱりこの形。
あるいは、トゥリエンテスが引っ張られることで生まれた中央のスペースに、CF7番イグレシアスが入ってきてポストプレー。
しかもこの日はCF7番イグレシアスが絶好調で、ボールがよく収まる。
セルタはソシエダのハイプレスを苦にするどころか、むしろハイプレスをかけられた方が崩しやすそうにさえ見えてしまう。
失点シーンも構造はほぼ同じ。
前半39分。
アイエンが右SH5番カレイラのオーバーラップの動きに対して距離を縮めたところを、12番アルフォンソに狙われる。
12番アルフォンソの動きにトゥリエンテスが引っ張られることで、中央が手薄になり、ライン間にスペースが生まれてしまう。
ちなみに、この時CF7番イグレシアスはやや外にポジションを取って、スベルディアをピン留め。スベルディアが本来マークするべき18番ドゥランに対して、セルタは意図的にフリーを作っている。
トゥリエンテスのマンツーに関しては、もうひとつ、トランジションの面でも問題がある。
ソシエダのビルドアップに対する、セルタの守備はこう。
トゥリエンテスのマークをCF7番イグレシアスが担当している。
この状況でソシエダがビルドアップに詰まってロストすると、今度はトゥリエンテスがイグレシアスをマークせざるを得なくなる。
屈強な体格を持つイグレシアスに対して、パチェコではなくトゥリエンテスがマークにつくのはミスマッチでしかない。
この問題の解決方法としては2つ。
アルグアシル監督が選んだのは後者、システムの変更だった。
ソシエダは後半から3−4−3を採用する。
両チームの基本形は一緒。
なのでマンツーも乱れることなく、きれいに組めるようになった。
一方で、中央の人数を3人から1人減らし、ブライスとスチッチを横並びにしたことで、ビルドアップからの前進という面では不慣れな格好となってしまった。
怪我の功名?
後半6分のビルドアップのシーン。
左SHセルヒオ・ゴメスから斜めにパスが入るところ。
普段ならインテリオールが受けるような位置にオスカルソンが下りてくる。
この時、セルタのCB2番スタルフェルトは途中でオスカルソンのマークをCH6番モリバに預け、最終ラインに戻っていく。
セルタは、反対サイドにいるアランブルのマークを捨て、しっかりと4人でラインを形成している。
ただ、ここにオヤルサバルが顔を出し始めたことで様子が変わってくる。
セルタの右CB32番ハビ・ロドリゲスを引っ張り出すことで、大きなスペースが生まれ始める。
後半16分。
オヤルサバルが下りてくる動きに連動し、セルヒオ・ゴメスがスペースを狙い始める。
普段とは勝手が違いながらも、突破口が見え始める。
そしてそんなタイミングで、ソシエダは交代の時間(60〜65分)を迎える。
出てきたのは久保。
しかもいつもの右WGではなく、良い感じになってきた左WG。
こちらは交代直後の久保の立ち位置。
中に絞って、左の大外を空けようとしているのが見て取れる。
こちらは後半23分。
久保は中央のライン間にポジショニングしていて、もはやトップ下のよう。
その後も右の大外でボールを受けたり、左のポケットを取ったりと、ここ数試合には無かった自由さを得ていた。
そもそもは守備面での修正ということで変更された3−4−3だったが、前半の4−3−3よりも可能性を感じるシーンが多かった。
久保のこうしたトップ下的な起用法も、もしかしたら次節以降また見れるかもしれない。
結果も内容も良くない試合だったが、収穫が無かったわけではないと思う。
なぜスタイルを戻したのか
ところで、そもそもの疑問がある。
なぜソシエダは再びビルドアップ主体のスタイルでこの試合に臨んだのか。
なぜ結果の出ていたロングボール主体の戦術ではなかったのか。
ロングボール主体の戦術であれば自陣でのロストはほぼ発生しないため、トランジションによるミスマッチの問題もクリアできる。
しかもこの試合は、ビルドアップのキーマンであるスビメンディが欠場している。正確なパスとボールキープが出来るアゲルドもいない。
それでもビルドアップすることを選択したのだから、相応の理由があったに違いない。
定かではないが、考えられるのはセルタの守備設計によるもの。
セルタは自陣でミドルブロックを作る時、ソシエダのWGに対するプレスはSH(5&3)が担当する。
そのためセルタの3CBは常に中央を陣取っており、ゴール前がかなり堅い。
でもボールがソシエダの陣内にあって、セルタがハイプレスを掛けてくる時は両SH(5&3)が前に出てくる。
セルタのハイプレスを回避して上手くWGにボールを届けられれば、一気にチャンスとなる。
そうした目論見だったのではないだろうか。
結果として、ビルドアップはあまり上手くいかず、チャンスよりもむしろロストからのピンチを多く招いてしまう。
やはりビルドアップが課題であることと、スビメンディ&アゲルドの重要性を浮き彫りにしてしまった。
次戦以降、攻撃のスタイルをビルドアップ主体にするのか、ロングボール主体にするのかは大きな見どころ。
総評
主にシステム面での話ばかりしていたが、勝敗を決めたのはシステムよりも両チームのインテンシティにあったように思う。
ソシエダのプレスに、数試合前のような激しさはなく、プレスバックもほとんど見られなかった。
対するセルタは、プレスもトランジションもとても早く、プレスをかわされた瞬間のタクティカルファウルまで徹底されていた。
残念ながら、勝てる試合ではなかった。
2024年の勝敗の内訳
年内最後の試合は負けてしまったが、ともかくこれで全日程が終了。
この1年間で行われたソシエダの公式戦は53試合。
勝敗の内訳は以下のとおり。
今シーズンの序盤に負けがこんだ分、トータルの勝率はやや低め。
でも着実に上がってはきている。
わずかなオフをゆっくり休んでもらって、また来年よろしくお願いします。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。