【レビュー】久保を左WGに置く是非 EL第3節 マッカビ・テルアビブ - レアル・ソシエダ
"マジカルナンバー7" という言葉をご存知だろうか?
これは人が短期記憶で覚えられる情報の量を示していて、だいたい7つ前後が限界と言われている。
だから8月末に行われたヨーロッパリーグ(EL)抽選会の日、ソシエダの対戦相手となる全7チームは全て頭に叩き込めた。
でもあれから2ヶ月、もうかなりあやふやになっている。
それもそのはずで、長期記憶には ”マジカルナンバー3" という別の法則が働いてしまう。保存しておける情報はせいぜい3つ前後だという話。
だから興味がなくても「世界3大〇〇」みたいなのはわりと覚えられるのに、興味があっても「プレミアBIG6」とかはなかなか覚えられない。
つまりELの対戦相手をついつい忘れてしまうのも、普通のことなんですね。
たまにはつかみなんてものを書いてみようと思った次第でした。
ちなみに次節はチェコのヴィクトリア・プルゼニです。
さてさて。
ソシエダはここまで1分1敗。ELではまだ勝ちがない。
それでも開幕から不調続きだったチーム状況を考えれば、リーガでの試合を重視した選手起用は的確な判断だったと評価できる。
結局リーガでもELでも結果が出てないじゃないか、と言われればそれまでだが、チーム状況が悪いんだからある意味当たり前ではある。
でもそんな状況もここらでおしまい。
リーガでの直近4試合の成績は2勝2分。内容も伴っていて、確実に潮目は変わった。
そんな中で迎えるEL第3節は、イスラエルの名門マッカビ・テルアビブFC。
テルアビブは国内のリーグ、カップ戦ともに最多優勝回数を誇り、UEFAコンペティションの常連でもある。
とはいえ、それでも戦力的にはソシエダが上。
ソシエダとしては勝ち点3を獲得しつつ、チームの調子をさらに上向かせていきたいところ。
前節アンデルレヒト戦はこちら。
(久保の話はだいぶ後なので、目次からどうぞ)
チームコンディション
レミーロとスベルディアは膝に違和感があるとのことで休養。
スターティングメンバー
久保が左WG!
今季初どころか、昨シーズンにも無かったパターン。
パチェコ&アゲルドのレフティCBコンビも初。
試合結果
2ー1
得点者:パチェコ(CK)、セルヒオ・ゴメス
チームスタッツ
試合をコントロールしている時間が長かったことを考えると、データ的には良い感じ。
シュート位置
個人スタッツ
左でも久保の数字が際立ってる。
試合内容
序盤の狙い
テルアビブは守備時4−2−3−1。
なのでソシエダの4−3−3とマンツーがきれいに噛み合う。
お互い後ろ(水色の枠内)が2対1となる。
テルアビブの守備の特徴は、ここからサイドを絞り、中央でコンパクトなゾーンを組むところ。
マンツーの相手をケアするよりも、自分たちのディフェンスの形と距離感を重視している。ソシエダのSBとWGには、パスが出てからプレスを掛けるという対応。
これに対しソシエダは、WGのさらに裏のスペースを突くという攻撃パターンを用意してきた。
久保が引いてきてパスを受ける。
引き出したSB4番の裏にブライスが抜け出る。
CB13番を釣り出すことで、中央のサディクのマークを手薄にできる。
ちなみにテルアビブのスペースへの対応が遅れた時に、ダイレクトで中央のサディクにクロスが入れられるよう、左利きのブライスを左インテリオールに起用したものと思われる。
もし最初の段階で、テルアビブのSB4番ではなく、ハビ・ロペス担当のSH17番がきた場合は…
プレスバック(後方からのプレス)の形になるため、久保は前を向いてドリブルを開始できる。
こうしたサイドからの崩しのパターンを何度か見せていたところで、コーナーキックから先制点をあげる。
パチェコ、ナイスヘッド!
進化する4−3−3
得点直後の変化はまずソシエダのディフェンス面。
ソシエダはそれまでミドルブロックを組んで対応していたが、ここぞとばかりに先制点直後からハイプレスへと切り替える。
時間にして5分ほどだったが、テルアビブが序盤から前へ前へと積極的に押し上げてきていた姿勢を挫くには充分だった。
テルアビブの守備陣を相手陣内へ完全に押し込め、試合の主導権を握る。
そこで、次のフェーズ。
スビメンディをCB間に落とし、後ろ3枚の構成。
トゥリエンテスをピボーテに置き、久保とオヤルサバルの両WGが内に絞る。
そこから両SBを押し上げた3−1−5−1のような形。さっきまでのサイド起点と違って、今度は中央でポイントを作れるように人を集める。
ゾーンとマンツーの併用で守れると思っていたテルアビブにしてみれば、さぞ混乱をきたしただろう。
前半27分。
テルアビブはゾーンで守ろうとする選手と、マンツーで守ろうとする選手が混在しているのが見て取れる。
ちなみに。
この試合に限った話かもしれないが、ソシエダは中央で起点を作った後は逆サイドへ展開してクロス、というパターンを志向していたように思われる。
続きのシーン。
ニアにオヤルサバル、ファーにサディク、マイナスに久保。
なんだかとても可能性を感じる。
こうした3−1−5−1と、始めの4−3−3を使い分けながら、危なげなく前半を終える。
1番のハイライト
後半開始早々。
テルアビブのハイプレスと、不慣れな芝に手を焼きながらも、コーナーからサディクが追加点をあげる。
オフサイドポジションにいたアゲルドが、テルアビブのディフェンスを妨害していたというジャッジで幻のゴールとなってしまったが、サディクのゴールをチームみんなで喜ぶ姿はこの試合1番のハイライトだったように思う。
サディクは去年までとは打って変わって、とてもがんばっている。
特にディフェンス面での貢献度は見違えるほど高くなっていて、EL前節アンデルレヒト戦でも先制点のきっかけを作り、アシストを記録した。
この試合でゴールが取り消された後も、腐らず追加点に絡み、最後の最後までチェイシングを続ける姿には心を打たれてしまった。
トラップは収まらないし、ポストもイマイチだし、ツルツル滑るし、クロスはファー待ち一択で味方に怒られているけど、それでもサディクが好きだ。
結果が出ていなくても、献身的にがんばる選手はやっぱり応援したくなる。
ひたすらサディクの話をしている記事も良かったら。
久保を左WGに置く是非
マッチレビューはおしまい。
ここからは緊急企画。
これまで右サイドのエースとして活躍してきた久保が、今回の試合で今季初めて左WGに配置された。この変更がどのような効果を生んだのか。ソシエダにとって、久保にとってアリなのかナシなのか。
その是非を考察してみたい。
デメリット
まず久保が右WGで起用されなかったことでもたらした変化は、右サイドで圧倒的な質の違いを見せていた攻撃力がスポイルされてしまったこと。
これが唯一にして最大のデメリットだろう。
右のワイドで受けて1対1、時に1対2からでもチャンスを創造し、得点をあげてきた。そのパターンが無くなる。
これは前半のシーン。
ボックスの角で受けたところから縦に突破して左足。強烈なシュートでしっかりニア上を捉えたのは流石だが、それで入らないのだから望みは薄い。
そしてこっちは後半。
左サイドからカットインして右足を振り抜いた場面。
久保が右足も蹴れるのは誰でも知るところだとは思うが、シュートとなるとやはり左足のクオリティには程遠い。
外から巻いてファーのサイドネット、という右WGで得意としていた軌道も現実的ではない。
決定力という面で考えれば、当然ながらかなりのマイナスになる。
メリット
要はメリットがデメリットを上回れば、久保の左サイド起用はアリという結論になる。なのでとにかく考えうる限りのメリットを考えてみた。
1.ソシエダが得られる戦力的メリット
2.久保が得られる個人的メリット
3.視聴者が得られるエンタメ的メリット
というわけで、それぞれの立場から各7個ずつ挙げてみました。
計21個。
いくつ納得のいくものがあったでしょうか?
それらをデメリットと天秤にかけてみて、久保を左WGで起用する是非の論拠としていただければ幸いです。
最後にひとつ。
実は久保にはすでに左WGでの実績があります。
ソシエダに移籍してから5試合目となる、2022-23 EL第1節。
久保が躍動していてめちゃくちゃ面白い試合なので、WOWOWオンデマンドのアーカイブを見れる方はぜひお暇な時にフルでどうぞ。
こちらはハイライト。
本当のハイライト
テルアビブ戦のハイライトも載せておきます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。