
【レビュー】被カウンターのリスク管理 第11節 レアル・ソシエダ - オサスナ
レアル・ソシエダは現在勝ち点12で11位。
開幕から続いていた不調も今や過去のもので、内容はどんどん良くなり結果もついてきている。
一方のオサスナは勝ち点15の8位。
大した差は無い。ここで勝ってそろそろ順位を一桁に上げたいところ。
10節終了時の順位表。

前節、ジローナ戦はこちらから
チームコンディション
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— Real Sociedad Fútbol (@RealSociedadEUS) October 26, 2024
レミーロが帰ってきた。大事に至らず本当に良かった。
スターティングメンバー

注目の右WGにはオヤルサバルを起用。
試合結果
0ー2
チームスタッツ

支配率75%でビッグチャンス2…
リーガではコーナーからの得点がまだ無い点も引き続きの課題。
それにしても、オサスナのこの内容は試合巧者すぎる。
シュート位置

アゲルドは毎試合ヘディングで競り勝ってる。

前後半ともに、CFで起用された3人のシュートが無い。継続的な得点力アップのためにも、CFがシュートを打てるパターンは必要に思える。
個人スタッツ

やはり1点くらい取れていてもおかしくなかった。
オサスナのGKエレーラの活躍も大きい。
試合内容
すっかり改善されたビルドアップ
ソシエダはここ数試合で定番となってきた4バック型と、3バック型の2パターンのビルドアップを切り替えながらボールを運ぶ。
4バック型

オサスナもソシエダと同じく4−3−3をベースとしているため、中盤はマンツーの関係になっている。
それを利用するためか、スチッチとブライスはあまり中央に寄らず、オスカルソンに縦パスを入れるためのスペースを作っている。
オスカルソンはダイレクトのポストプレーが上手いので、落としをスチッチやスビメンディが前向きで受けて展開、というパターンはとても良い。
3バック型
続いて3バック型。

スビメンディがディフェンスラインに下りるのをきっかけに、両SBが高さを取る。WGのバレネチェアとオヤルサバルが絞って各レーンに人を置く形。
あるいはブライスが右に落ちるパターン。

それまでブライスのマークについていた6番トロが所在なさげ。
マンツーのディフェンス側が一人浮くということは、ソシエダはどこかにフリーないしは守備の薄いところが生まれているということ。
4バックと3バックを入れ替えながら、そうしたギャップを作る。
ロングボールで逆サイドを使ったり、縦パスを差し込んだりしながら、最後は左のバレネチェアという展開がスムーズに作れていた。
バレネチェアの1対2
前半に何度もあった、左サイドでの1対2のシーン。

前を向いているバレネチェアは1対2でもお構いなしに仕掛けていく。毎度セルヒオ・ゴメスがサポートの位置にいるものの、基本は使わない。
おそらくソシエダはこの局面を、バレネチェアの仕掛けを、崩しの起点に設定していたのだろう。そしてそれを何度も何度も再現した。
前半に関しては、この最後の崩しの部分でビッグチャンスが作れなかった。
でもそこに至るビルドアップから前進までは問題ない。
オサスナがある程度ソシエダのポゼッションを許容していた点を差し引いても、開幕から苦しみ続けた、後方〜中盤を経由しての展開は完全に改善されたと考えて良いように思う。
あとは崩しだけ。
それはこれから。
強いソシエダはそのうち帰ってくる。(はず)
被カウンターのリスク管理
直前のEL第3節テルアビブ戦から良い感じで使われている3−1−5−1システムのウィークポイントに関して少し言及したい。
ウィークポイントはもちろん、SBが上がったところ。

攻撃と守備のウェイトはトレードオフであり、前に人数を置いて攻撃的になれば、必然守備は手薄になる。
それでもこの図の場合、後ろは3対2なのでソシエダは充分なケアをしていると考えられる。

問題はオサスナに、スピードと縦への推進力を併せ持つ19番ブライアン・サラゴサがいるところ。
おそらく、オサスナのカウンター設計のスタートはクリアボール。

中央よりもややソシエダの左サイド寄りに17番ブディミルを配置。
ブディミルは、クリアボールの即時奪回を狙うソシエダ守備陣のプレスと目線を集めたところで、10番アイマールに落とす。
ブディミルが作った時間で、ソシエダの右サイドをサラゴサが駆け上がってくる。そのスペースにアイマールが合わせるというもの。
オサスナは攻撃陣の長所を上手く生かしている。
このカウンター対策で考慮すべきは、アランブルとサラゴサの位置関係。
先ほど、3バック型のビルドアップで使った図をそのまま転用する。

このように、アランブルがサラゴサを押し込めている時は問題ない。
でもバレネチェアの1対2の時に使った図はそうではない。

アランブルがサラゴサを押し込めていない時は、カウンターを受けるリスクが高い。
実際のシーン。

ここではアランブルとサラゴサは同列にならんでいるが、トップスピードの差でカウンターをくらう。
その後ソシエダは、アランブルを後ろに残した3バック型を展開。

カウンター対策を打つ。
だがコーナーからの先制点を許してしまったことを機に、それまで以上に攻撃的にならなければならず、また度々アランブルを上げる。
やはり右サイドで際どいカウンターを何度か浴びた後、これまたカウンターで追加点を許してしまった。
久保で被カウンター対策
後半頭から久保を投入。
右サイドを起点とした攻撃面での活性化が際立ったが、ここでは引き続き、被カウンターという観点から考察を続ける。
久保が後半早々から続けざまにチャンスを作ったことを受け、オサスナは明確な1対2のダブルチームを形成。
サラゴサがこの2人目の役割に充てられる。
加えて、後半はアランブルが一度たりともオーバーラップを仕掛けない。

カウンターのキーマンであったサラゴサを守備に奔走させたことで、ソシエダはオサスナのカウンターを完全に封じた。
久保投入は攻撃面だけではなく、被カウンター対策という守備的な側面においても絶大な効果を発揮していることが分かる。
これは前回のマッチレビューで完全に見落としていた要素だったので、いまさらながら付け加えておきます。
「久保の右WG起用には、相手左SHの攻撃面での脅威を削ぐ効果がある。」
そういえばアトレティコ戦でも、左SHにいたグリーズマンが久保のプレスにきていたから、アトレティコの攻撃のスイッチが全然入っていなかった。
なぜ久保を左WGに回したのか
もうここまでくれば、その疑問に対する答えは難しくない。
久保が左WGに移るその少し前、オサスナは選手交代を行なっている。
入ってきたのは23番アベル・ブレトーネス。ブレトーネスは本来左SBの選手であり、久保1対2のために起用された。
そしてサラゴサを右に移す。

オサスナは久保に対するケアを厚くしつつ、逆サイドでワンチャン、サラゴサを使ってのカウンターを狙える体勢を作った。
点差と時間を考えたら、もしかしたらセルヒオ・ゴメスの上がりを牽制するだけだったかもしれないが。
それを受けてソシエダが採った変更が、久保の左WG。
左よりも右を得意とするベッカーを右に回し、左は久保の1対2で再びサラゴサを引き付け、オサスナにカウンターのチャンス与えないプラン。
キレッキレの久保なら左でもやってくれるという発想も理解できる範囲内。
ちなみに23番ブレトーネスは左利きの左SB選手であり、久保の移動を受けて、またサラゴサとポジションチェンジを行うということはありえない。
2点を追う展開とはいえ、攻撃一辺倒はあまりにリスキー。3点目でジ・エンドになるからこそ、最低限の被カウンター対策を講じる必要がある。
それをWGの入れ替えという一手でリスク管理を行い、攻撃の人数を削ることなく攻守のバランスを取ったアルグアシルの手腕は、むしろ評価されるべきではないかと思う。
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— レアル・ソシエダ 🇯🇵 (@RealSociedad_JP) October 24, 2024
この推察に妥当性を与えるのは、久保が再び右サイドに移ったこと。
その少し前にようやくサラゴサが退いたことで、カウンターをくらうリスクが完全に無くなっていた。
ベッカーが右でも振るわなかったことも考慮したかもしれないが、とにもかくにも、久保を右に戻して最後の追い上げをはかった。
試合結果はご存じのとおり。
総評としては、オサスナが序盤にシュート2本で2点決め切ったことを褒めるべきであって、決してソシエダの内容が悪いわけではなかった。
オサスナのGKエレーラが当たりすぎていたのもある。
黒星を喫したが、全然心配することはない。
これからまだまだ良くなる。
でも点が取れなければ、試合に勝てなければ叩かれるのはFWと監督の常。
まぁ仕方ない。
サッカーってそういうものですよね。
今後の見どころ
被カウンターの話に関連して、あと少しだけ。
23-24シーズンのアルグアシル監督が頑なにSBを上げずに攻撃を展開していたのは、カウンター対策のためだったと思っている。
可変システムが主流の現代において、SBを上げずに固定するシステムはクラシカルな印象が否めなかった。
それでもシーズンを通しての失点は39。リーグで3番目の少なさという結果を残している。その堅守を武器としてシーズン6位の成績を収められたわけだが、最近はだいぶスタイルが違う。
攻撃面に比重を置くのは見ていて楽しいが、去年よりも失点のペースが早まりそうな気がしないでもない。
両SBを上げ切る戦術が今後どのように変化していくのかは、見どころのひとつだと思う。
最後にハイライト載せておきます。
点取られたから仕方ないけど、ブディミルのサムネで終わるのは嫌だ。
Atzoko 📸 #RealSociedadOsasuna
— Real Sociedad Fútbol (@RealSociedadEUS) October 28, 2024
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。