【インタビュー】ソーシャルベンチャー・NPOでの複業・転職のリアル~イベントでの出会いから複業開始まで vol2【プロジェクトマネージャー】株式会社TALENT
【画面右上】株式会社TALENT 代表取締役 佐野貴 氏
CROOZに入社後、ECコンサルタント・フリマアプリの担当を務めM&Aした後独立。
2018年に株式会社リオンを設立し、経営者や専門家を対象としたタレントマーケティング事業を創出。
2020年にCOTENに参画し、新規事業創出を担当した後に、社員全員の才能を最大化させることに責任を持つ役割(CGO)兼 取締役などを歴任した後、退任。
2023年に株式会社リオンを株式会社TALENTに社名変更。心理学者とともに人々の「才能」についての研究を行い、その成果をもとに、人材開発事業を展開。同時に才能プログラムを開発し1,000名以上に実施し、起業家の事業創出プロデュースも手がける。好きなことは、猫と新しい体験と人との出会い。
【画面右下】複業人材 大手IT企業 嶋津美穂氏
IT企業にて約20年勤務。WEBディレクター、ライター、広告運用を13年ほど行い、産休・育休を経て復職。
復職後はバックオフィスに異動し、総務・HR・社内広報を経て、2020年より経営企画業務、2024年よりIR業務も担当。社内プロジェクトマネジメント、PMOが主な得意分野。
本業以外には、「エール」サポーター、システム思考コミュニティ運営、ポッドキャスト制作なども行う。TALENT社の複業で自分の才能を発掘中。
ソーシャルキャリアフェスでの出会い
ーこの度は、ソーシャルキャリフェスに参加頂きありがとうございました。第一回目のソーシャルキャリアフェスに参加した理由を教えてください
佐野貴さん(以下、佐野さん):
ソーシャルキャリアフェスに参加した最初のきっかけは、以前からお世話になっているCarpeDiem株式会社の海野慧さん、合同会社Tasukiの郭翔愛さんのお二人に声をかけて頂いたのが大きかったのですが、一方でCOTENの深井龍之介さんも話しているように、優秀な人材が、社会に良いインパクトを与えようとしているソーシャルベンチャーにもっと集まった方が良いという思いがありました。
そのような活動しているこのイベントの世界観に共感し、参加を決めたというのが経緯です。
嶋津美穂さん(以下、嶋津さん):
ソーシャルキャリアフェスを知ったきっかけは、コテンラジオの深井龍之介さんのXでの投稿だったと思います。元々、コテンラジオの大ファンで、深井さんが東京でリアルイベントに登壇するのは滅多にない機会だと思いました。
また、佐野さんとの出会いのきっかけにもなるのですが、元々、佐野さんが配信しているPodcast番組「TALENT TALK」や「みんラボ」のリスナーでもあり、参加を決めました。
ーありがとうございます!ソーシャルキャリアフェスの良かった点、改善点など、感想をお聞かせください
佐野さん:
良かった点をいうと、やっぱり参加者の熱量が高かったことですかね。イベントのLPの内容が凄く良くて、参加者を情熱的にさせてというのがあったと思います。登壇者の方が、素敵な方ばかりでパーパスもしっかりされていて、社会をより良くしていこうという姿勢が凄く伝わったんだと思います。
また、トークテーマについても、抽象度が高く、答えを求めるのではなく、考え続けられるテーマだったというのもあり、その点も良かったと思います。
嶋津さん:
ソーシャルビジネスにリアルの場で触れることが出来る体験は中々ないと思います。50社の企業、500名の参加者が一同に介する場は初めてでしたし、熱量を感じることが出来たのが一番良かったと思います。
改善点というほどではないのですが、参加者、登壇者同士の交流の場がもっとあると良かったなと思いました。ブースでのセッションの後に、登壇者の方と名刺交換をしたりする場がもっとあれば良かったなと思いました。
ーソーシャルキャリアフェスのトークテーマの中で一番印象に残っているテーマはありますか?
嶋津さん:
「大企業のキャリアからスタートアップへ~飛び込んでみて初めて見えたそのリアルとは?」のセッションの中で、参加者から収入面についての質問をされた際に、コテンラジオのサーシャさんが話をされていた内容が印象に残っています。
転職を考える際に、「自分の大事にしている価値観」、「それを満たすための活動」と「活動にかかる費用」を洗い出し、「自分が幸せに生きるために必要な金額」を明確にすることにより、転職しても大丈夫だと判断し、決断されたという話をされていました。
世の中の一般的な基準で動いていると、お金はいくらあっても足りないというか、もっと稼がなきゃいけないという焦りみたいなものに、影響をされてしまうのですが、自分に大切なものを明確にして、それに必要なお金を洗い出す事で不安はなくなるという話は、凄く良いなと思って聞いていました。
ー今回、複業を開始するうえで、イベントでの出会いのきっかけについて教えてください
嶋津さん:
元々、佐野さんのPodcastで話を聞いていたので、ソーシャルキャリアフェスの15分面談ブースにまず行ってみて話を聞いてみようという感じで参加しました。
佐野さん:
15分面談では、法人向け事業の立上げを予定していたタイミングで、嶋津さんと話したところ、IRやHRの経験が長いという話も聞き、是非一緒に働きたいと、イベント後にこちらから連絡させていただきました。
その後、お試しで稼働する期間も設けたうえで、正式に複業をスタートしたという形です。
ー出会って直ぐに複業を決めた形だったんですね
佐野さん:
そうですね。イベントの中の15分面談の中で、一緒に働くイメージが湧いたのと、嶋津さんも何か出来ることを一緒にやりたいです、と言ってくれたので、イベント後に直ぐに連絡をとった形です。
嶋津さん:
丁度、自分のスキルが活かす事が出来そうな職種を募集されていたので、何か自分も貢献できるのではないか?という気持ちで話していましたね。
ソーシャルベンチャーでの複業について
ー一方で、本業も忙しい中、複業を行うことに躊躇はなかったんですか?
嶋津さん:
本格的な複業を開始するのは初めてだったのですが、あまり悩まなかったですね。
佐野さんが、私の都合を考えて、業務内容等を調整しながらやろうという話をしてくれていたので、本業と家庭との両立が出来るのかという点についてはあまり悩まずに開始出来たと思います。
ー複業人材を受け入れる際にコミュニケーションなどに注意されていたんですね
佐野さん:
私自身が複業人材の受入に関しては、過去10年で約200人以上の経験があり、複業人材と働くことが習慣化されています。
企業の方が、「複業人材を受け入れる土壌」を作ることが一番重要だと思います。事業変化が大きいかつ、事業モデルが確立していない段階は、特に優秀な複業の方々に助けてもらっているなと感じることが良くありますね。
ー複業人材が特に価値を発揮するのはどんな部分ですか?
佐野さん:
まずはプロフェッショナルの方々と出会えることです。現在、企業向けの開発サービスを提供しようと考えているのですが、HR領域に精通されていて、プロジェクトを纏める力を持った、嶋津さんと出会えることが出来ました。
また、スキル面だけでなく、パーパスに凄く共感してくださる複業の方も多く本当に凄い力を与えてくれるなと思っています。
正社員では、中々採用できないような優秀な方が複業で参画してくれるというのは本当に魅力的だなと思います。
ー実際に複業を開始してみてどうですか?
嶋津さん:
凄く働きやすいです。元々企業として、「複業受入の土壌」があったというのに加え、TALENT社独自だと感じるのは、チームの中で、「お互いの才能を活かしあうコミュニケーション」がある点です。チームメンバーの得意なこと、才能が一番発揮できる仕事に、割り振っていこうという考えがチームメンバー全員にあり、結果として働く中でチームに貢献できているという実感や、やりがいに繋がっていると感じます。
ーとても素晴らしい仕組みですね。「お互いの才能を活かしあうコミュニケーション」についてもう少しお聞かせいただけますか?
佐野さん:
「人的資本」という言葉は、組織の中で「成果を出すための投資人材」であると捉えられることもありますが、本来は、「投資人材」として捉えるのではなく、「個人が幸せになる前提」で組織を考えるべきだと思っています
その為には、「個人のWill」を前提としたビジネスモデル・組織体制が必要だと考えていて、その実現を本気で目指していきたいと思っています。
現在は、社会実験を行っている最中であり、嶋津さんには、逆に「才能を意識しなきゃいけない」と悩ませてしまっている部分もあるかもしれませんが、最近の行動を見ていても、嶋津さんがチームの心理的安全性を担保してくれているし、存在そのものが才能だなと感じています。
嶋津さんの人生が良くなることが前提で、この事業が成立すれば良いなと考えています。
ー「個人のWill」を前提とした組織設計というのは本当に素晴らしい考え方ですね!多くの複業メンバーも抱える中、意識していることはありますか?
佐野さん:
一つは、「仕組み化しないこと」ですね。「仕組み化」は、機能的すぎると感じますし、人間の感情も、事業も成長していけばそれに応じて変わりますよね。「効率化」はしますが、「仕組み化」はしないようにしています。勿論、単発の業務委託という関わり方では、「仕組み化」する場合もありますが、なるべく業務内容は仕組み化せずに、一人一人の才能を活かしてもらう形で関わってもらうようにしています。
もう一つは、「才能に寄り添ったコミュニケーション」を意識しています。「才能」とは、自分にとって得意なことで、自然な癖から出てくるものと定義しています。また、その人にとっての「働きやすい環境」、「人間関係」、「健康状態」、「キャリアアップ」、「お金」に対する考え等の「才能が活かされる条件」についても併せて意識して会話する様にしています。
嶋津さん:
凄く意識してコミュニケーションをとっているなと感じますね。一般的な大企業での複業では、「決められた業務の範囲を、お願いして委託する」という形かと思いますが、「事業立上げフェーズ」では、複業メンバーも含めて一つのチームという捉え方をして、ビジョン・ミッションを徹底的に共有し、日々コミュニケーションを密に取るということが非常に大事で、それが上手く回り出すと、TALENT社で出来ている様なチームワークとか働き方が出来るんだと思います。そこが一般的な企業の複業との違いだと感じますね。
複業という関わり方でも、コミットしている気持ちは本業と遜色ないですし、雇用形態に関わらず、同じビジョンを目指してビジネスを行っているという感覚がありますね。
佐野さん:
私も、正社員とか、業務委託とか分けて考える必要はないと思っています。働く本人が望む形であれば良いと思っていまして、雇用形態に拘る必要はないと思います。
ー最後に、「大企業人材」が「ソーシャルベンチャー」に「複業」で関わることの可能性について、一言お願いします
嶋津さん:
ソーシャルビジネスや社会課題を解決する仕事に自分が実際に貢献できている喜びがあります。
TALENT社での複業を通じて、本業の会社を外から見ることが出来るようになり、改めて自社の良い所などに気づく事が出来ました。
大企業、スタートアップ問わず、社会課題は共通で持っているものだと思うので、大企業にいる自分の立場からも、何かしら貢献することは出来るという感覚を今凄く感じていて、TALENT社で得た視点を元に、本業でも何か出来ることがないかと考えていて、本業と複業の行き来が凄くしやすくなるというか、もっとこの働き方が日本に広がると良いなと思っています。
佐野さん:
一言で言うと、「働くことが楽しい」ということが一般化されることが、社会へのインパクトだと思っています。現状、あるアンケートでは、働くことが楽しいと言っている人は30%しかいないので、それがみんな楽しいに変わったら、シンプルに幸せですよね。そんな状態を「複業」を通して変えていきたいと思っています。
【編集後記】
「お互いの才能を活かしあうコミュニケーション」
「個人のWillを前提とした組織設計」
これまで、多くの複業人材を受け入れてきたTALENT社ならではの、「複業人材受入のコツ」や、その前提となっている「組織やコミュニケーションの在り方」について伺うことが出来ました。
インタビューを通じて感じたのは、シンプルに複業受け入れ側、実践側双方が、終始笑顔で、「働くことを楽しんでいる」ということ。
ある調査では、働くことが楽しいと言っている人は「30%」しかいないという現実もある中、
「TALENT社の様な複業が、仮に日本で一般的になったとしたら?」
そんなことを考えつつ、「ソーシャルベンチャー×複業」という新たな可能性を感じるインタビューとなりました。
最後までお読み頂きありがとうございました!