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【ソーシャルビジネス図鑑】#1 NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ

こんにちは、ソーシャリア代表の水本です。

『ソーシャルビジネス図鑑』では、経済性と社会性を高いレベルで両立している企業や団体をご紹介しています。
日々多くのソーシャルビジネス領域を行脚する事業者と対話を重ねる私たちだからこそ、皆様に素敵な事業家・組織の想い・取組みを解像度高くお届けできると考えています。

第1回目は「認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」(以下、むすびえ)さん。
尚、むすびえでディレクターを務める遠藤さんは、3/4(火)に開催予定の以下イベントにも登壇されます
「社会をより良くする事業創りに挑戦したい」「これまでと違う角度でキャリアを考えたい」、そんな思いを持ちながら挑戦の機会を模索されている方々は、こちらも必見です。


はじめに

2012年に東京都大田区で誕生した「こども食堂」。この活動は現在、全国10,867(2024年度)箇所にまで広がりを見せています。

<グラフ1>こども食堂の箇所数と、全国の小学校/中学校数の推移(2024年度 確定値)
<グラフ2>こども食堂の箇所数と年間のべ参加人数(推計)の推移(2024年度 確定値)

この急速な広がりを支えているのが、2018年に設立された認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえです。むすびえは、こども食堂を直接運営するのではなく、全国各地で子供食堂を支える地域ネットワーク団体を支援し、こども食堂がさらに広がるための環境づくりを担っています

むすびえが目指すのは、「こども食堂の支援を通じて、誰も取りこぼさない社会をつくる」こと。この理念に基づき、こども食堂を地域のインフラとして確立し、子どもたちの居場所づくりを推進しています。

子どもから高齢者まで。多世代交流拠点「こども食堂」ー認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえー (2024年度版)


事業概要:全国のこども食堂を支えるエコシステム

むすびえの活動は、大きく3つの柱で構成されています。

地域ネットワーク支援事業

子ども食堂を支えるためには、地域に根差したサポート体制が不可欠です。むすびえは、全国各地でこども食堂を支える中間支援活動を行う地域ネットワーク団体の設立・運営を支援しています。

むすびえ資料より抜粋

これらの中間支援団体は現在全国に約300団体存在し、それぞれの地域でこども食堂の立ち上げ支援、運営者同士のネットワークづくり、行政や関係団体との連携、寄付物品の仲介などを担っています。

各地でこども食堂運営者たちの意見交換、スキルアップや広報啓発のための地域ネットワーク団体が生まれています」と、むすびえの遠藤さんは語っています。

むすびえは全国の地域ネットワーク団体をパートナーとして、全国の各現場の現状や課題を学び、地域ネットワーク団体に全国各地の状況を伝え、寄付やプログラムの仲介を行っています

企業・団体との協働事業

全国のこども食堂への支援を拡充するため、むすびえは企業・団体との協働にも力を入れています。

例えば、ファミリーマートやイオンとの協働による基金の設立、スターバックスとの「Be a Santaドネーションプログラム」の実施など、企業の特色を活かした支援プログラムを展開しています。

むすびえ資料より抜粋

これらの協働により、全国のこども食堂に対する資金や物資の支援、子どもたちへの体験プログラムの提供などが実現しています。2023年度には約700社の企業からの支援を受け、資金支援約5億円、物資支援約4億円を全国の子ども食堂に届けました

調査・研究事業

こども食堂の価値や課題を可視化し、適切な支援策を検討するため、むすびえは定期的な調査・研究も実施しています。

むすびえ資料より抜粋

「こども食堂全国箇所数調査」「こども食堂実態調査」「こども食堂の現状&困りごとアンケート」などを通じて、こども食堂の現状を捉え、こども食堂への理解促進や政策提言の基礎資料などに活用しています

むすびえ資料より抜粋

2023年の調査では、全国のこども食堂全体が約73億円の資源で成り立っていることが明らかになりました

“強制力のない協働”がもたらす新たな社会変革~「自分ごと」が生み出す、こども食堂の特徴~

こども食堂の特長として、「強制力のない協働」による社会変革のアプローチが挙げられます。12年で全国10,867箇所にまで増加したこの現象は、人々の善意と主体性を引き出すこの仕組みが大きく影響していると考えています。

「発想はちょっと町づくりに近いんですよね。住民自治みたいな、住民は住民による自治をすべきだみたいな、一番地域のことを知っている当事者として、自分たちで考えて動いた方がいいんだという発想がベースになっています」

むすびえ ディレクター 遠藤さんインタビューより抜粋

むすびえは全国のこども食堂や地域ネットワーク団体と資本関係や上下関係を持たず、各団体の自主性を尊重して支援する事を大切にしています。
営利組織では、ちょっと考えにくい組織の関係性では無いでしょうか…?

各地域のこども食堂運営者の皆さんは、それぞれの地域事情に合わせて柔軟に活動を展開し、時には地域の反対意見や行政の慎重な姿勢も自分たちの力で乗り越え地域の多様な資源(人、物、場所、知識など)をこども食堂という「ハブ」に集め循環させる仕組みも自然に生み出しました

むすびえ資料より抜粋

商店街の余剰食材、高齢者の料理スキル、空き公共施設、企業の支援意欲など、それぞれの地域に眠っていた資源がこども食堂を通じて活性化し、新たなコミュニティが生まれています。
むすびえはこれらの自発的な循環を「地域資源内循環」と呼び、各地域の力でこども食堂が支えられる状態を目指しています。

人々が内発的な動機に従って挙動したからこそ、同時多発的にこれだけ多くのこども食堂が誕生しているのではないでしょうか・・・?

このモデルは特定の条件下で再現性を持つ可能性もあると考えています。
特に多くの人が「何かしたい」と思っている課題領域専門性の高い知識がなくても参加できる活動、小さく始められる取り組みなどがその条件と考えられ、こども食堂の事例は、自主性と分散型のアプローチが社会課題解決において持つ可能性を示しています。

むすびえ説明資料より抜粋

理念と目指す社会:誰もが「居場所」を得られる社会の実現

むすびえのビジョンは「こども食堂の支援を通じて、誰も取りこぼさない社会をつくる」こと。この理念のもと、彼らが支援する「こども食堂」は、単なる食事支援の場ではなく、人と人とのつながりを生み出す「居場所」としての役割を持っています

むすびえ資料より抜粋

この「居場所」の価値は、年齢を問わず全ての人に及んでいます。こども食堂は、その名称からは子どものための場所というイメージがありますが、実際には多世代が集い、それぞれが居場所を見出す空間となっています

各世代にとっての居場所としての価値

子どもたちにとって

  • 多様な大人や他の子どもたちとの自然な交流機会

  • 「あまり話したことのない友達と知り合える」といった新たな関係性の構築の場

  • 不登校気味だった子どもが「他の子と交わることができるようになった」例も

子育て世代にとって

  • 育児の孤立感から解放される息抜きの時間

  • 同じ子育て世代との出会いによる新たなコミュニティ形成

  • 子どもを安心して遊ばせることのできる場所

高齢者にとって

  • 料理や話し相手など、自分のスキルや経験を活かせる活躍の場

  • 「受付が楽しい」など、社会との繋がりや役割を持てる喜び

  • 高齢者サロンより参加しやすい自然な世代間交流の機会

むすびえのディレクター遠藤さんも、都会での孤立した子育てを経験した一人だったと言います。
「私と息子が今家で倒れても誰も気づいてくれなさそうだな」という不安を感じていた彼女は、地域のつながりの重要性を肌感覚で理解していました。「そんな地域のみんなが近くにいたら私も嬉しかったな」という気持ちから、今は地域のみんなの居場所となる、こども食堂を支援する側へと立場を変えています

おわりに

こども食堂の取り組みは、かつては子どもの貧困対策というイメージもありましたが、実際は地域のにぎわいづくりや高齢者の生きがいづくり、孤独孤立や貧困などの課題の改善にも寄与するなど、新しい形の社会課題解決モデルとも見受けられました

すでに全国10,867箇所に広がった子ども食堂は、まさに市民の力で社会課題に向き合う可能性を体現しています。遠藤さんの言葉を借りれば、「日本は捨てたもんじゃない」という希望を感じさせる動きを、皆さんも垣間見ることができたのではないでしょうか。

私たちソーシャリアが関わる企業・団体には、彼らのように社会課題の解決に真摯に取り組む素晴らしい方々が沢山存在します。そして、そんな企業との出会いを、多くのビジネスパーソンに創出することが、私たちの使命です。

ソーシャリアの募集を探すページでは、「ソーシャリアに相談する」というリンクから、私たちとのオンライン面談を設定することができます。
カジュアルな場ですので、むすびえのような素敵な団体について、また他のソーシャルベンチャーについても、お気軽にご相談ください。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!
この世界にはまだまだ多くの、見聞きしているだけで熱くなってしまう事業家が存在します。
そんな次の事業家を皆さまにお届けできるのが、今から楽しみでなりません。
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