「誰もやりたくないことをあえてやる」。ハードシングスのすすめ。
僕は新卒で入った会社でめちゃくちゃ苦労して、次の会社では左遷され、その次の会社ではまるで劇団みたいな営業組織の立ち上げが待っていました。
これまでの話はマガジンにもまとめています。
ただ、いま思うと、どの経験も財産になっている。一つでも抜けていたら、いまの自分はないんじゃないかと思っています。ジョブズが大学の卒業式で言っていた「コネクティング・ザ・ドッツ」ってこういうことなのかもしれません。
よく「ハードシングス」という言葉が使われますが、若いときにキツイ経験を重ねれば重ねるほど後に自分の資産になり、レバレッジが効いてくる。
現にこれまで働いてきたどの組織でも、ハードシングスをくぐり抜けてきた人たちは強かったです。メルカリやスマートニュースでは過去に起業してきた人たちが社員として活躍していましたが、彼らはみんな壮絶な経験を糧にしていました。
「当時はなんで自分だけがこんな経験をしなきゃいけないんだと思っていたし、なんてついていない人生を歩んでいるんだろうと思っていたけれど、いま振り返ると、若いときのハードシングスが後の資産になっている」と語る人が多いです。
僕もささやかながらハードシングスを体験してきました。どうせやるなら若ければ若いほどいいと思うんですが、じゃあいまの時代、このリモート環境で、働き方改革も叫ばれるなか、どうやってハードシングスを経験できるのか、あるいはさせてあげられるのか。
これはけっこうむずかしいと思います。
いろんな会社さんが苦労しているでしょう。
誰もやりたくないことを、あえてやってみる
僕がメルペイで営業のマネージャーをやっていたとき、100人以上の営業メンバーがカテゴリごとにチームにわかれていました。すると、上手くいっているカテゴリもあれば、そうじゃないカテゴリもあって、成果は顧客対象によってバラバラでした。
そうなるとエース格のメンバーに対しては「いまこのグループはすごく順調で結果も出しているから、こっちのうまくいっていないグループに異動して何とかしてくれないか」みたいな感じで声がかかるんです。
ただ、そういうときって100人いたら99人は行きたがらないんですよね。
あとは最近、僕が起業してからよく見るシチュエーションで言うと、たとえば支援先に新規事業に力を入れている会社があったりします。たいていは子会社を立ち上げて事業をゼロからはじめるんですけど、そこのメンバーはたいてい社内公募です。ある意味チャンスなんですけど、あまりみなさん、異動したがらないんです。
たしかに、そのチャレンジをすること自体はすごくマイノリティだと思いますし、きっとすごい苦労もあって、自分の短期的なキャリアとしては遠回りになるかもしれない。けれど、そこで得られる経験は後になって生きてくると思います。
それに仮に失敗したとしても、そこで得られる経験はプライスレスです。他では得られないものなので、機会があれば挑戦したほうがいいんじゃないかなと僕は思っています。
目の前にどこからどう見ても「茨の道」に見える選択肢が提示されたら、そこに乗っかってみると意外と、自分の財産になるかも、という実感があります。ハードシングスって要は「誰もやりたくないことをあえてやる」なんです。誰もやりたくないからこそ、「やること」に価値がある。
これまでいろいろな組織でたくさんの人と仕事をしてきましたが、結果的にチャレンジをした回数が多い人のほうが得をしていると思っています。
これって歴史的に見てもそう感じますね。大きいことを成し遂げた人って若い頃にとんでもない不遇にあったり、途中でどこかに飛ばされて死ぬような目にあってたりします。
ってことを考えると、会社員が遭遇するハードシングスなんて、まあ死なないだけマシというか、「100人中99人が行きたがらないようなシチュエーション」とはいえ、ちゃんとお給料はもらえるわけですからね。
マイノリティ戦略が根底に
実は僕もメルペイでそういうシーンに直面することがありました。とあるカテゴリの営業グループがほぼ崩壊していたことがありました。
僕のチームはすごく順調で、最高の結果が出ていました。「今回のクォーターも達成が見えてきたぞ」というところだったんですけれど、突然「崩壊しているチームに行ってくれない?」と言われたのです。
正直、すごく行きたくなかったです。
というのも僕は入社してから半年間くらい、ずっと終電まで働いていました。毎日9時に出勤して終電で帰る、という状況です、人数も増え続けるし、マネジメント工数も大変な中で、営業に関するデータ基盤も自分でつくっていたので、とにかく忙しかった。それがようやく22時には帰れるようになってきたところでした。
そのタイミングで「崩壊しているチームに異動してくれ」と言われて、正直「いやだなあ」という気持ちがありつつも、本能的には「これはたぶん100人中99人がやらない仕事だな」と思って、結果やることにしたんです。
要は「これはいわゆるハードシングスだな」と思ったので、あえて乗っかっていきました。
リスクなんて、そのクォーターの自分の評価とか次の賞与とか、そういったものに過ぎません。短期的な目線ではその話に乗らないほうが得をしますが、長期的に見てハードな経験を選び取りました。
異動してみると、完全に修羅の道でした。ただ、挑戦するときには「これを乗り越えた後どうなるのか」ということをメンバーに対して実体験として語りました。まずメンバーには前を向いてほしかったからです。
先が見えないハードシングスはとても嫌ですけれど、この先に何が待っているか、1年後でも予見できると希望が湧きますよね。
結果、大苦戦したんですけれど、最後の最後で上手くいったんです。
その当時、一緒にハードシングスを乗り越えたメンバーの多くは、現職、あるいは転職先でも大活躍しています。
グループ会社の立ち上げで異動とか、不振のチームのヘルプに行くのって、手軽に選べる茨の道だと思います。別にそのとき給料がガクンと下がるわけじゃないので、そこをチャンスと捉えて、100人中99人がやらないことに飛び込むかどうか、というところがその人の成長速度を決めるかもしれないですね。
「みんながやりたがらないことをやる」
そういうマイノリティ戦略が僕の根底にあって、それが会社の社名にもなっています。