商談数を増やしたい営業マンがすぐにやるべき5つの工夫
このnoteではBtoBマーケティングの戦略の立て方から、個別の戦術や施策について順序をたてて解説しています。
こちらのマガジンにまとめていますのでご覧ください。
前回まではインサイドセールスの導入のタイミングとリード獲得について解説してきました。今回は獲得したリードをもとに「いかに多くの商談を実施するか」というお話です。
私がキーエンスの新規事業として立ち上がった会社で働いていたとき、営業は全員、毎月50件以上の客先訪問をしていました。当時はオンライン商談などはありません。訪問で毎月これほど商談をこなしていたのです。
商談数を最大化するためにはいくつかのポイントがあります。
1.日中に会議を一切入れない
ひとりの営業マンができる商談数を最大限に増やすコツは、まず商談のためのスケジュールを確保することです。そのためには「営業はコアタイムに会議を入れないこと」を徹底しなければいけません。
私がキーエンスグループで営業をしていたとき、9時から18時までは社内会議は禁止されていました。月曜の朝に30分だけ全社会議がある以外は、日中に会議が入ることがないのです。
その代わり18時以降に営業チームの会議をするので、帰る時間は定時を過ぎます。ただし、それほど残業が多いわけでもありません。
そもそも全社的に会議を極力減らす方針を採っていたので、管理職の会議はある程度ありましたが、営業マンは会議が少なかったんです。
とにかく9時から18時はお客様とコンタクトを取る時間。日中はすべてお客様のために使うべし、という考え方でした。
2.提案書の作成を効率化しておく
商談数を上げるには行動量も大切ですが、提案書の作り方も重要になります。1日5件の商談を週3日実施していくのですが、提案書に割く時間はありません。
そのため提案書のフォーマットをある程度作っておいて、どの顧客にも使えるよう汎用的にしておく必要があります。もちろん顧客ごとにカスタマイズすることもありますが、基本的にはテンプレートを使い、提案書作成の手間は最小限に抑えると良いと思います。
ベストなのは提案書の企業名を変更する程度で済むことです。これは非常に効率的です。
一方で提案書作成において最も時間がかかるのは、顧客ごとに適した導入事例を探してくること。どの事例が刺さるかは経験の浅い営業マンではわからないので、上司のアドバイスを受けながら選定することになります。事前準備にかかる時間のほとんどはこの作業でしょう。
ただしその作業は、経験を積んだベテランの立場になれば、あまり時間を取られません。先輩やベテランの営業マンがなぜ悠々と仕事をこなし、成果を上げてるのかといえば、経験値によって雑務から解放された分、訪問と商談に集中できるからです。
もしあなたが営業先に持っていく提案書をその都度作り込んでいるのであれば、そのカスタマイズ前提の提案書自体を見直す必要があるでしょう。
3.曜日単位で業務をわける
毎月50件の訪問営業をするといっても、毎日毎日営業だけをやるわけではありません。月曜から金曜のうち3日だけ営業にあてれば十分です。
たとえば曜日単位で業務をわけると効率的です。月火は内勤で事務作業、水木金は外回りに集中するといった形です。
外回りの日は8時半に会社を出るとあとは1日外出しっぱなしです。顧客と自社を何度も往復することはありません。そして顧客への訪問は、9時、11時、13時、15時、17時と決まった時間に設定します。
キーエンスでは必ず5件のアポを入れてから外出するルールがあります。1時間の商談の後、1時間の移動時間を取り、たとえば水曜から金曜の3日間で1日5件、週15件の商談を行うのです。
このように同じ業務はまとめて行い、外出する日は丸1日外出することで訪問の効率を上げています。
とはいえ、当たり前ですが、この日のこの時間にアポイントを入れたいのに、顧客の都合が合わないということもあります。
その場合は、既存の顧客の予定を後ろにずらしていました。顧客には事情を言わず、「その時間は他の案件で埋まっていたので、来週はどうですか?」と交渉します。でも、これはあまりやりたくないですね。
月火水でも、火水木でもいいので、3日連続して外回りのスケジュールを入れて、内勤の日は前週の事務処理とテレアポに充てると良いでしょう。1日5件ずつ商談をすれば、週3日15件、月に50件以上の商談が可能です。曜日ごとに業務をまとめることで商談を効率的に実施できるようになります。テレアポと事務作業と商談をバラバラと同じ日にやるのはおすすめしません。
4.電話とメールを組み合わせてスケジュール調整
月に50件の商談をセッティングするには、電話だけでアポを取るのは難しいかもしれません。そこでメールも活用します。たとえば火曜日から木曜日まで営業で3日間外出するとなると、そのあいだは商談以外の活動が取りづらくなります。
そこで月曜日の夕方に、翌週のアポイントを取るために10〜20社の見込み客にメールを送っておきます。すると火曜日から木曜日にかけて返事が来るので、随時、アポイントを埋めていきます。
私の場合、メールでアポを取る割合は全体の40%ほどでした。過去に商談したことあるお客様の場合は、「新しい提案があるなら聞く」という反応がほとんどです。
商談の受注率自体はどうやっても10%程度に収束してきます。そのため、まずは商談数を増やすためにメールでもアポを取りにいっていましたね。
現在はオンライン商談も増えてきましたが、当時は訪問営業がメインだったため、効率を高めるために地域ごとに担当営業を決めていました。いわゆるテリトリー制です。
顧客が点在していると移動時間がかかり、訪問効率が下がるからです。東京都内なら「千代田区担当」というくらい細かく決めていました。
地方は県単位の担当制でした。地方に営業所はなかったので、営業担当は見込み客の拠点がマッピングされた地図を頼りに、車で移動できる範囲で1日5件のアポを取ります。そのため東京より地方のほうが営業の難易度は高かったです。
5.遠方への営業は本当に必要か考えてもいい
実際、地方営業は大変です。当然、1日に5件のアポを入れてまわるのですが、お客様同士が数十キロ離れていることもザラにあり、アポイントに間に合わせるのに必死。予定通りに回れず、せっかく取ったアポイントをキャンセルせざるを得ないこともありました。
車移動は渋滞も予測できないのでなかなか難しいところがあります。
ちなみに営業職にとって運転免許は必須だと思います。当然、営業メンバー全員が運転免許を取得していました。スピード違反をして免許停止処分を受ける者もおり、その場合は営業を外れて別の仕事に就くなんてこともありました。
IT製品やSaaSの営業が車で客先を回るのは珍しい光景かもしれませんが、見込み客は全国に多数存在するのが実情です。遠方はオンラインのみとするのもひとつの方法です。
以前、おもしろい事例を見かけました。片道1時間以上かかる遠方の顧客とは取引をしないという会社の話です。
この記事にあるスズキ機工さんは、もともと全国の見込み客に営業をかけていましたが、遠方に行っても契約を取れないことが多く、非効率だったそうです。
そこで二代目社長の時に「片道1時間以上の顧客とは取引しない」と方針を転換したところ、顧客満足度が上がり売上が4倍に増えたとのこと。
これはランチェスター戦略の見事な実践例だと言えます。キーエンスの新規事業でも、営業担当をエリアごとに配置して、同じような取り組みを行っていました。
営業組織に「文化」を定着させること
今回は商談数を増やすために、どんな工夫ができるかを書いてきました。
このあたりは営業スキルとは別に、アポのスケジューリング力も重要になってきますが、何より大切なのは営業組織への文化の定着だと思います。
こうしたことが当たり前のこととして定着しないと、なかなか営業全体の成績は底上げされません。アポが取れた見込み客から順番に訪問するのがまだまだ一般的なので、内勤業務の合間に商談に出かけがちです。
しかし、本当に商談を増やしたいならそれなりのやり方を学ぶ必要があります。
もちろんキーエンスのようなやり方を完コピする必要はないと思います。こうしたやり方があることを意識づけることは大切ですが、各社の事情に合わせた方法を取り入れるのがよいでしょう。
次回は商談数最大化のポイントをさらに深堀りしていきます。
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