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営業がお客さんの予算をかんたんに把握するテクニック
こんにちは。マイノリティという会社で代表をやっている柳澤です。
営業の現場、商談ではお客様の予算を把握するのがすごく大事です。でも、ストレートに「予算はいくらですか?」って聞いてもあまり意味がないのは前回の記事でも書いたとおり。
じゃあどうするか。
営業がお客さんの予算を把握するためには、いくつかのテクニックがあります。
私が以前、広告営業をやっていたときのこと。広告メニューを提案する時、相手から問い合わせが来た場合でも、こちらから売り込みに行く場合でも、お客様の予算を直接聞くのはけっこうハードルが高いものでした。
特にテレアポでアポを取って訪問する時なんて、売り込みに行ってるようなものなので、お客様の興味も薄いし、直接予算を聞き出せるシーンはほぼなかったのです。
そういうとき、私はこんなふうにしてお客様の予算を探っていました。
お客さんの予算を把握する方法
まずはお客様に挨拶したあと、いま出稿している広告のことを聞きます。これはアイスブレイクも兼ねています。
「今日はお時間いただきありがとうございます。実は事前に勉強させてもらったんですけど、御社は◯◯という媒体でこんな広告を出してたり、展示会にも何回か出てましたよね。いま、デジタルマーケティングってどんな媒体を使ってるんですか?」
みたいな感じで切り出します。
こうやって事前に調べたことをチラッと見せると、「おっ、この営業マン、うちのことわかってるな」という印象を与えられます。
そして、「◯◯さんとか△△さんに出してる広告も見させてもらいました。こんな感じのクリエイティブですよね。他にはどんなチャネルで出してるんですか?」って聞いていく。
あるいは、「広告の目的ってどんな感じですか? リード獲得が目的なのか、ECサイトで買ってもらうのが目的なのか、それとも認知度向上が目的なのか」みたいな感じで掘り下げていきます。
「広告を出す時に参考にしてる指標はありますか? たとえば、リードを1件獲得する単価とか」なんて聞いたりもします。
で、「いま一番、力を入れてる媒体ってどれですか?」って聞いて、たとえば「Facebookですね」って答えが返ってきたら、「Facebookだと、どれくらい問い合わせが来るんですか?」みたいな感じでどんどん詳しく聞いていきます。
こうして質問を重ねていくと、お客様のいまの広告の状況とか成果が見えてきます。
もちろん事前にお客様のことを調べているので、どんな広告を打ってるかはほぼ把握しています。すると、「なるほど、こういう広告も出してますよね」みたいな感じで、お客様の取り組み内容を確認しながら、深く理解してることをアピールできます。
こんな会話をしてると、たとえば「Facebookだと月に100件問い合わせがあって、1件獲得するのに5万円かかります」みたいな情報が出てきます。
そしたら単価と獲得件数を掛け合わせて、だいたいの予算規模が見えてくる。この場合だと、Facebookの月の予算は500万円くらいかなって推測できますよね。
そうしたら、「Facebookは月500万円くらいの予算でやってるんですね。それくらいだと、けっこういい成果が出てそうですね」みたいな感じで、こちらが推測した予算をポロッと出して、お客様の反応を見ます。
このとき大事なのは、否定的な態度は取らないようにして、むしろ「すごいですね、素晴らしい成果ですね」みたいに褒めること。そうするとお客様は心を開いてくれます。
お客様のやっていることを頭から否定して、うちに乗り換えませんか?と言っても絶対に聞き入れてくれません。そうではなく、「その取り組みはうまくいってます」と積極的に認めるようにしましょう。
そのほうがもっといろいろなことを教えてくれます。「かなりうまくいってますね。ちなみに他の媒体はどうですか?」みたいな感じで、どんどん情報引き出していくわけです。
基本的にこちらから電話して売り込みに行く場合は予算は教えてもらえない前提で、準備してきた仮説をどんどん出していきます。
お客様は、私が予算の総額を知りたくて質問してるとは思いません。「勉強してきたんで詳しく教えてください」「御社のことをもっと知りたいんです」という態度で接して、お客様のやってることをどんどん褒めていく。
「すごいですね、やっぱりうまくいってますね」「へー、そんな工夫してるんですね」「このクリエイティブ、CVRが高そうですね」。絶対に嫌な気分にさせないように気をつけましょう。
こうやって聞いていくと、デジタルマーケティング全体の予算規模も見えてきます。さらにオフラインの展示会などについても聞けば、お客様の年間の予算規模まで推測できます。
ここからが営業の腕の見せどころです。
問い合わせではなく、こちらから売り込みに行ってる場合、まずはいまやってる施策と予算の配分を変えてもらう提案をするといいです。
たとえば、「FacebookのCPAはこれくらいならいい感じですよね。ただ、5つくらいチャネルがある中で、◯◯の広告はちょっとパフォーマンス悪そうですね。そこで◯◯の広告予算を今回うちの媒体で試してみませんか?おそらくCPAが◯◯の広告より低くなって、もっと効率よく獲得できると思います」といった提案をします。
こうすれば予算を直接聞かなくても、いまある予算の配分を変える提案ができます。これは実はかなり受け入れてもらいやすい提案方法です。
ここまでで私がやっていることを整理すると、
事前に調べてお客様のマーケ施策の仮説を立てる
その仮説を元にだいたいの予算額を想像する
想像したマーケ施策をお客様に確認していく
判明した予算額の配分を変える提案する
となります。これが私が広告営業をやっていた時の営業スタイルです。
あらためて、仮説立てることの大切さ
上記の方法は、このnoteでは何回も言っていますが、「営業が仮説を立てることの大切さ」を示しています。
普通に「予算いくらですか?」と聞いてしまう営業は、そもそも調査不足・仮説不足と言ってもいいかもしれません。
予算を聞いてもいいケースは、相手から問い合わせ来た場合のみ。そこはストレートに聞いてもいいでしょう。相手にニーズがあって問い合わせしてきてるので、自然に「どれくらいの予算感ですか?」と聞けます。
でも、こちらから営業をかけに行く場合は、ニーズがないことが多いので、ニーズを作るところから始めなければいけません。
そうすると基本的にはいま使ってる予算をざっくり把握して、その中から一部を分けてもらうか、稀にすごく提案が刺さった場合には新しく予算を取ってもらうか、です。
前回の記事でもありましたが、逆にお客様から「とりあえずいくらぐらいですか?」って聞かれた時の対応も、問い合わせが来た場合と、こちらから営業に行く場合で違います。
問い合わせが来た場合はある程度ストレートに答えてOK。営業に行く場合は、さきほど説明したように調査した上で仮説を立て、それを当てながら、いまある予算や施策について聞いていくのがいいでしょう。
必要性を感じてもらうアプローチも
さきほどの営業の例はインターネット広告というある意味、コモディティ化した商品の場合でした。ほとんどの会社ですでに予算はあるので、その振り分け先を変えるところに注力すればいいわけです。
一方で「そもそも予算が存在しない商品」の場合は別のアプローチが必要です。
いままで世の中になかった新しいプロダクトをつくるスタートアップはこれに直面します。
たとえば建設業の現場管理をデジタル化する提案だと、これまで紙で管理していて、現場には特に不満もないので、そもそもデジタル化する予算がありません。
「いまは紙でやってますし、そこに対しての予算は特にないです」とか「そこにいくら出すかは見当もつきません」みたいな答えが返ってくることがよくあります。
こういうケースの場合は、デジタル化することで得られるメリットを具体的に示して、予算を作り出すための必要性を感じてもらうアプローチが必要になるんです。
例えば、「紙やエクセルへの転記で毎月30時間かかってる作業が半分以下になります」みたいな具体的な効果を示します。そこに、「働き方がこんなに変わりますよ」「いますぐ導入すべき理由はこれです」みたいなことをセットにして、価値を吹き込んだ提案をしていきます。
こうしたアプローチ、最近のSaaS企業ではよく見られます。
たとえば、SmartHRのような人事系のSaaSも、最初は紙で管理してた会社に対してデジタル化の価値を説明して、新しく予算を作り出してもらう必要がありました。
つまり、いままで世の中になかった商品やサービスの場合、付加価値を吹き込んで、いますぐ導入する理由を説明し、ただ紙からデジタルに変える以上のメリットを感じてもらえるようにする。
「月々10万円や20万円の投資で、こんなに大きな効果が得られますよ」みたいな感じで、コストじゃなくて投資として捉えてもらうよう心がけるといいと思います。
最後に
このように、すでに予算があっていろいろな取り組みをしているケースと、これから予算を作る必要があるケース、あるいはお客様の予算感がまったくわからないケースでは、予算の聞き方や作り方はまったく違ってきます。
いずれにしてもお客様の状況をよく調べ、精度の高い仮説を立てて、商談の場で深く理解し、適切なアプローチを選ぶことがとても大事と言えるでしょう。
※次回も営業と商談の話。「お客さんの本音を理解するテクニック」について書いていきます。
営業のノウハウについては、「法人営業の教科書」というマガジンにもまとめています。よかったら読んでみてください。