現代資本主義の金融経済(1)
まえがき
世界の金融経済をどのように把握すべきか考えるためには、現代のいわゆる「カネあまり」現象が、どのように発生してきたのかを振り返ってみることが必要だろう。現代資本主義が持つ病理として「カネあまり」は観察できるが、現代の世界資本主義の資本蓄積過程においてそれが不可避なものだったのかは、検討に値する。
筆者は現在の「カネあまり」現象の起点は、第一次オイルショック以降の先進資本主義国の経済構造によって基礎づけられていると考えている。もちろん、これは現代資本主義が避けることのできない道であったといえるかもしれない。つまり、政策によって選択することができなかった問題であるかもしれない。しかし、どのような資本蓄積の過程から「カネあまり」現象が発生してきたのかを跡付けてみることは意味のあることであろう。
「カネあまり」現象は、一般的には金融緩和政策のもとで、おカネがあまって投機を助長したりして経済をかく乱すること、といったように理解されている場合が多いようだ。確かに具体的な弊害として、いわゆる資産バブルを引き起こし、その後に金融危機を招くような事象が何回も起きてきた。筆者は、この現象の背後には「貨幣資本の過剰な蓄積」という問題がある、と考えている。つまり、金融政策における一時的な緩和の行き過ぎや、流動性の供給の過剰といった短期的な政策の誤りに起因するものではなく、現代の資本主義が避けて通れない資本蓄積の在り方の問題としてとらえるべきとの観点である。
この観点から、現代世界経済の動向を振り返り、現代資本主義の構造の問題点を浮き彫りにしていきたい。