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SDGs×アート・デザインで世界を変える!

MacBookProひとつでカンボジアに渡ってもう9年。

ノマドワーカーとしてプノンペンに来て、2014年には社会問題をアート・デザインで解決する「SocialCompass(ソーシャルコンパス)」を設立した。 

カンボジアに留まらず、ラオス、ミャンマー、日本を世界を飛び回り、ゆるキャラのアニメーションを作ったり、プロジェクションマッピングやプラネタリウムやVRなどの最先端プロジェクトをやったり、そして、アジアのクリエーター育成を目指しアニメーションやデザインの教えたりしている。

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夢は旅人、ぶらぶら自由に生きていく

学生時代、ギターひとつで弾き語りながら旅しながら生きていけたらと思いながらも残念ながら音痴で音楽は苦手。サッカーボールひとつで、旅先の子供たちと仲良くなりながら生きていきたいと思いながらも、運動も音痴。 

挙句、未だに英語だって苦手だ。なぜそこまで海外に行きたかったのか今思い返すとよくわからない。 

でもそんな自分でも、カメラのシャッターくらいは押せるんじゃないかと思い、美大の映像学科に入学した。

フォトジャーナリストになって世界の紛争地帯などに飛び込みたい。そんな思いで大学二年の夏、初めての海外一人旅に選んだのがカンボジアだった。
2001年9月12日、奇しくもアメリカ同時多発テロの翌日に出発。正直、かなりビビりながら飛行機に乗ったのを覚えている。

クレヨンしんちゃんは新しいコミュニケーション手段

思い出はほぼセピア色。
十七年前のプノンペンは、砂けむりが吹き上がる発展途上国のイメージ通りの街だった。トゥールスレイン強制収容所やキリングフィールドの生々しさが、ポルポト内戦の爪痕を強く感じさせた。

そんな旅の最中のある晩、ふらふらとローカルのクイティウ(カンボジア麺)の屋台に立ち寄る。 
指差し注文をテキトーにして、座席に着く。
すると屋台のカンボジア人のおばちゃんが  
「What your name??」  
とカタコトの英語で聞いてきたので、こちらからも聞き返す。 
おばちゃんは笑いながら、 
ミサエ、ミサエ」 
と答える。 
訳も分からず不思議そうな顔をしていると、おばちゃんは続けてその辺で走り回っている自分の息子を指差して 
シンチャン、シンチャン」  
と言い出した。  

それは、日本のテレビアニメ『クレヨンしんちゃん』の登場人物のみさえとしんちゃんのことを言っていたのだ。息子さんは野原しんのすけの様にいたずらっ子で、おばちゃんはいつもしんのすけの母・みさえのようにガミガミと怒っていると言いたかったのだろう。 

言葉の壁がある中で、日本のアニメーションを通じてカンボジア人とコミュニケーションが取れたことに、単純に感動した。 

これは写真なんかを撮っている場合じゃないと感じ、フォトジャーナリストからアニメーションの世界へと興味が移って行った。 

ロンドンで働いて、東京で新しいテクノロジーに挑戦して

美大卒業後、運良く英国ロンドンへ渡り、アニメーションスタジオで3年ほど働いた。 
その当時は憧れだったヨーロッパ生活。そんな憧れの生活も3年で平凡な日常になる。 

三十歳手前で日本に帰国して、ベンチャー企業で一年働いた後に、独立。 
まだ発売されたばかりだったiPhoneやiPadに興味を持ち、名刺にiPhoneアプリデザイナーと肩書きを書いたら意外と仕事が舞い込んできた。 

シリコンバレーのiExpoの受賞後

そして、東大内にあるベンチャー企業のアートディレクターとして、シリコンバレーへ行って賞も貰った。 

そんな時、震災が起きる。 

MacBook Proひとつで仕事ができるはずなのに、東京で働き続けるのに少し疑問を感じた。 
2012年、カンボジアで仕事をしないかと誘われる。ふらりと軽い気持ちで再び海を渡った。 

カンボジアじゃないとできないこと

カンボジアの首都プノンペンは思っていたよりも過ごしやすい。おしゃれなカフェも多く、wifiもフリー、コンセントも使い放題。ノマドワーカーには最高の環境だった。 

とはいえ、途上国でアニメーションやデザインの仕事を続けて行くのは簡単ではない。待っていても、誰もデザインの仕事なんて発注してくれない。
自然とインターネット経由で日本から受ける仕事ばかりになっていく。
  
とはいうものの、カンボジアに住んでいるのだから『カンボジアじゃないとできないこと』は何かないのか?カンボジア生活も長くなると、次第にそう考えるようになってくる。 
カンボジアの日本人コミュニティも狭い。日本ではなかなか接点がなかったNGOやJICAなどの、社会貢献や国際協力に従事している友人たちができた。
  
世界をよりよくするために、情熱を傾ける彼ら。それが、社会問題で溢れるカンボジアじゃないと出会えなかった縁だった。 

僕も彼らのようにカンボジアや世界のために何かできないのか?
そうは言っても、僕にできることはアニメーションやデザインを作ることくらい。 

だから僕は、アニメーションやアート・デザインで社会貢献をする
その思いをデザインしたのが『ワッティー』だった。 

啓発動画をワッティーでオモシロく

『ワッティー』は、カンボジアの社会問題をわかりやすく説明・啓発してくれる、アンコールワットがモチーフのキャラクターだ。 

クメール体操という伝統的な体操が、カンボジア内戦前にあったらしい。
ところが、ポルポト政権に多くの知識人や学校の先生の多くが殺さてしまったため、クメール体操をなんとなく覚えているカンボジア人はいたものの、しっかりと今に伝わっていないのが現状だった。

日本のNGOハート・オブ・ゴールドは、クメール体操をカンボジアの体育教育に再び取り入れるために、教員用の教科書にクメール体操の仕方を掲載した。とはいえ、体操を静止画では伝えづらい。 

そこで、ワッティーのクメール体操をアニメーションで作ろうという話になったのだ。

サンプルで作ったアニメーションはカンボジアの教育大臣にも興味を持ってもらえた。さらに、JICAの草の根協力で製作資金も確保でき、出来上がったアニメーションは国営放送で2017年まで三年ほど毎朝6:50から放映された

その後もワッティーは、ゴミのポイ捨て渋滞緩和下水道啓発農業灌漑林業公共バス促進算数教育教員養成交通安全など、JICAや財団、NGOなど様々な啓発動画のアニメーションに登場した。 

言葉だけでは伝えづらい社会問題を、アニメーションを交えてオモシロく伝える! 
それが我々、SocialCompassの活動のひとつだ。

作るだけではなく、広げていくこと

カンボジア人はみんなスマートフォンを持っていて、Youtubeやfacebook動画を見るのが好きだ。しかし、アニメーションを見る機会はいくらでもあるのに、アニメーションを作ることを教えてくれる学校はない。 

そこで、我々SocialCompassはカンボジアやラオス、ミャンマーなどで、アニメーションの作り方のワークショップ活動も行っている。 

テレビ持っていない、電気も通っていない田舎の村の子どもたちと一緒にアニメーションを作るのは僕らにとっても刺激的だ。いつも、僕らが想像しないような色彩やキャラクターを描いてくれる。

アナログなストップモーションから、AdobeAfterEffectsなどのデジタルまで、年齢やターゲットに合わせ色々なスタイルのアニメーションを教える。 

さらに、TBSが主催するアジア各国のクリエーターが参加する映像コンテスト『DigiCon6Asia』カンボジア大会の審査員も毎年務めてさせてもらっている。 先日もカンボジア代表に選ばれたアニメーターが日本へ招待され、様々な国々のアニメーターと交流して来たところだ。 

そして、作ったアニメを、テレビモニタやスマートフォンの小さなスクリーンで見るだけじゃつまらない。 

日本政府がODA支援して整備されたプノンペンの巨大な地下施設で、環境問題を考えるプロジェクションマッピングのイベントも行った。

子供たちが描いた魚や星、動物たちがリアルタイムでアニメーションになり、地下の大画面に映し出される。
それもゴミのポイ捨てを啓発するためのストーリーやクイズなど、一緒に楽しみながら環境について考えるアニメーションを上映するプロジェクションマッピングだ。

子供たちは口を開けて真剣に見入って、時にはマンホールが揺れるほど歓声が上がった。 見終わった後の子供たちは、実際に地下施設からゴミ拾い活動を行なった。

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このような活動を、これから色々な国々で展開して行きたいと思っている。今考えているのは、全方向スクリーンでになる移動式ドームを作って、そこにプラネタリウムのようなアニメーションコンテンツ投射する。 

途上国で宇宙を考えるのもオモシロそうだ。 

そして2020年からはアートの領域へも本格的に挑戦する。
カンボジア・タイ・スリランカで行われるアートコンペディション『WhiteCanvas』は、アジアの若手アーティストの発掘し、持続可能な活動支援を目的としている。そののために採用したのが、アート・ブロックチェーンとVR空間だ。

カンボジアのクリエイティブとこれから

ポルポトの内戦で学校の先生や文化人、芸術家が虐殺されて、カンボジアの文化は壊滅した。逆にいえば、今までのカンボジアは何をやってもパイオニアになることができた。 

カンボジアの若者は、ピカソもベートーベンも知らなかった。しかし、インターネットは世界と繋がっていてレディーガガは知っている。
  
逆に言えば、何のしがらみもない途上国に住んでる若者たちには、これからの時代は大きなチャンスになるかもしれない。 

一緒に働いているスタッフたちと共に、楽しく自由なクリエイティビティを持てることを大切にしている。楽しい仕事であったら、離職率が高いと言われるカンボジア人であっても、共に長く働いてくれる。 

時代はMacBookPro一台あれば、どこででもアニメーションやデザインを創ることができる。国境を気にせず、アートやデザインで社会問題を解決を目指して行くことができるのだ。 

クレヨンしんちゃんの話題で、全く言葉も文化も違う人間とコミュニケーションをとることができた。ビジュアルコミュニケーションには、言語の壁を超えてお互いを理解しあい、より良い世界を作ってくチカラがあると信じている。 



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