『ダレモイナイ街』で、出会った先輩
大学時代、友人と絵本を作った。
私が絵を描き、友人が文章を書く。
タイトルは『ダレモイナイ街』。
実家の本棚かは、自分で製本したハードカバーの絵本が出てきたのだ。
懐かしい。
大学3年の時、せっかく作った絵本を、いくつかの出版社に送りつけてみた。
全く無名の大学生の絵本なんて、棒にも箸にも引っかからないかと思ったが、いくつか連絡が来た。
共同出版のお誘い。
話を聞いてみたら、製作費を作者と出版社が折半して出版する方法。
出版社によりマチマチだが、50万から100万円ほど費用が掛かってしまう。
「な〜んだ。そういうビジネスだったのか。。。」
そんな風に、大人の世界を垣間見たような気もした。
しかし自分が作ったモノに、ちょっとでも興味を持ってもらえただけでも嬉しかった。
相手にしてもらえただけでも、やってみた甲斐があった気がした。
その中のひとつの出版社は、担当者がついた。
確か、井上さんという、お名前だった気がする。
20代後半の男性。
今思えば、若手。
しかし、大学生の私からしてみたら、ずいぶんと大人に感じた。
そんな井上さんの会社は、東京の出版社。
当時、京都の大学に通っていた私は、結局、一度もお会いすることも、顔を見ることもできなかった。
しかし、井上さんと電話をするときは、いつも濃密だった記憶がある。
出版のことだけを話していたのではない。
井上さんは、プライベートな悩みや、将来の不安など、色々と話を聞いてくれた。
特に、その当時の私は、海外で仕事をしたくて仕方がない頃。
「どうにか、海外に行きたい!」
そんな悶々した思いを受け止めてくれたのだ。
井上さんも、海外に挑戦した人だった。
アイスホッケーかなにかのスポーツで、ヨーロッパに挑戦をし、そして失敗をしていた。
詳細はぼやかしていたが、チーム内で何か『信頼』を失う出来事があったらしい。
海外で一度『信頼』を失うと、それを取り戻すことは本当に難しいということを、しきりに話してくれた。
コミュニケーションが困難な状態での、『信頼関係』の回復は不可能に近い。
井上さんの言葉で、とてもよく覚えている言葉。
『信頼』ということが、海外挑戦で最も大切なことの一つだということを、私の心に刻み込ませてくれた。
それは今でも、イギリス・カンボジアに住んだ私にとてつもなく大きな影響を与えてくれている。
結局、出版はしなかった。
製作費折半とはいえ、学生の身でもある私たちにとってはとてつもなく高額だったのだ。
とはいえ、自分の絵本を通じて、社会人の先輩、そして海外挑戦の先輩でもある井上さんとの交流は貴重なもになった。
何より、楽しかった。
カンボジアで絵本を出版した、今の私と話したら、井上さんは何と言ってくれるのであろうか?
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