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残念しっぱい雑記『ハクサイと詐欺』

連発しているしっぱい談。今日は大学時代に、詐欺にあった話を書きたいと思う。

大学の夏休みに長野の白菜畑に行ってリゾートバイトをして、そこで友人と合わせ総額30万円もの大金(1ヶ月のバイト代)を騙し取られてしまった。

ことの始まりは、友人が持ってきたバイト情報誌で知った長野の高原で働く優雅なリゾートバイト。大学に入って最初の夏を平凡に終わらしたくはなかった僕には、とても魅力的に感じた。しかし、バイト情報誌を持ってきた友人は早々に日和っていかないといいだす始末。仕方ないので同じ大学の友人日野君と、別大学に通っていた浪人時代から友人二階君の三人と共に長野へ行くことになる。2000年8月1日のことだった。

結論から言おう。

地獄だった。長野の白菜畑の仕事は、全く優雅なバイトではなかったのだ。

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毎朝4:00起床。トラックでドナドナのように、農作業現場に運ばれる。前日の晩、なぜ逃げ出して帰らなかったのか??と後悔しながらの出勤だ。毎朝トラックのラジオからまだ売り出し中の鬼塚ちひろの『月光』が流れていた。『月光』を聞くとあの頃の悪夢を思い出す。。。

5:00には現場について、地平線が見えるほど広大な白菜畑の収穫作業が始まる。僕は昼まで20kgの白菜の段ボールを永遠と運ぶ肉体労働。白菜はめちゃくちゃ重い。この貧弱な体の僕にとっては拷問のような時間だった。レタスだったらもう少し軽かったのに。

正午になり、そのまま畑でランチは弁当を食べると、午後には廃棄になり黄色くなった腐った白菜の処分。もう吐き気がする匂いの中、腐った白菜と一体化して片付ける。もう気分はスライムだ。

17:00には仕事を終えて、帰り道に缶コーヒーを飲んで家路に着く。
ブタ小屋みたいな宿舎に戻ると、砂まみれのまま泥のように眠りに落ちるのだ。

そして朝4:00起床。トラックでドナドナのように、農作業現場に運ばれる。そして昨日の晩、なぜ逃げ出して帰らなかったのか??と後悔を繰り返してしまう。

毎日がっつり食事をとっているのに、みるみるうちに痩せていく。。。一緒に来た日野くんは7日目に逃走した。

1ヶ月間のバイトだったが、8月15日のたった1日しか休みがなかったのを覚えている。(清里のカラオケに嫌嫌ながら先輩につれられて行ったなぁ。)

現在だとこのようなリゾートバイトは、技能実習生などカンボジア人などのアジア人が働くような現場になっているようだ。夢を持って日本に行ったカンボジア人があのような現場で働いていると思うと、真剣に考えずにはいられない。

なぜなら、単調で過酷な毎日を過ごしていると思考が単純化していく。仕事後の缶コーヒーだけが毎日の楽しみになり、たったそれだけの報酬で「明日も頑張ろう!!」と無邪気に思うようになるのだ。百姓一揆が起きづらい理由がわかったような気がした。クリエイティブな思考など完全に停止してしまう。

その影響で、クリエイティブな思考にはヒマが必須だと今でも信じている。ヒマはクリエイターにとって最も大事な要素だ!

しかし、この経験から農家の方々への尊敬の念は忘れない。おしゃれなデザイナーが週末農業なんかをやっているのを見ると『農業』舐めるな!と言いたくなってしまう。

そんなに辛くても、なぜ逃走しなかったのかと言われれば、一緒に行ったもう一人の友人・二階君が帰ると言わなかったからだ。同じ愛知出身で、予備校時代の彼には、どこかライバル意識のようなものがあった。彼が帰るというまでは、絶対に帰らない。どこかそんな気持ちがあったのだと思う。

二階君こと、二階武宏は今も活躍する新進気鋭の木口木版アーティストだ。京都精華大学版画学科卒の彼は、木口木版という精密で繊細な表現ができる木版画の作家。日本のみならず、海外でも高く評価されている。

カンボジアの我が家にも彼の作品を飾っている。

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 今でも彼に負けたくないと思っている。しかし、あの時は「頼むから帰りたい」と言ってくれ、と心の中で思ったものだ。

そんな二階君がバイトをして金を貯める理由は、バイクを購入するということだった。そんな、彼の夢をアシストするよと、言ってくれた人がいた。同じくこのバイトで一緒になった先輩・丸山さん(仮名)だ。

丸山さんは、この白菜畑で先に働いていた先輩。歳も20代後半くらいだったと思う。プロゴルファーの丸山茂樹さんに似た笑顔の眩しい、ガタイの良い人だった。

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丸山さんには、僕も頭が上がらなかった。収穫の際に、段ボール運びをしている僕の作業が滞ると、サポートに入ってよく助けてもらっていたのだ。

よく笑う優しい方だったので、僕も二階君も彼に懐いていた。とはいえ、背中には掘りかけの刺青が入っていて、今思えば怪しい人だったのかもしれない。

そんな彼が、格安でバイクを融通してくれると言い出した。

二階君はもちろん乗り気だったが、僕の方は特にバイクが欲しいわけではない。しかしお世話になっている丸山さんから、「みんなでツーリングに行こう」だとか、「格安だから絶対お得だ」とか進められると断りきれないのが世の常だろう。

特にバイト代の使い道を考えていなかった僕は、周りに流されてバイクもいいなぁ、と思うことにした。

バイトの最終日。僕と二階君はバイト代を丸山さんに渡す。
あとは説明は不要だろう。
一緒に飯を食い、奢ってもらい、最後の最後まで丸山さんは僕らの前でいい人だった。

警察に行こうかどうかという話にもなったのだが、そんな時間はなかった。長野バイトが終わるとすぐにネパール・インド旅行が控えていたのだ。
初のインド旅。
もちろん、インドでもぼったくられたし、騙された。
ちゃんとインドの洗礼も受けたのである。

詐欺からのインド。
価値観や金銭感覚がぶっ壊れた、濃い大学1年の夏休みだったかもしれない。

二階君は詐欺を心配してくれた周りの友人の助けで、結局バイクを手にれた。金がなくてもどうにかなる。心の中でそう思った。

もし、あの時のバイト代がちゃんと手元に残っていたら、もっと堅実な人生を歩んでいたのだろうか?

結論としては、クリエイターにとっては金よりもヒマ(時間)の方が大切だということだ。

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