[Climate Curation #130]脱炭素経営EXPO / 英国最後の石炭火力発電所が閉鎖 / エネルギー基本政策に向けての議論 / 気候テックへの期待
以下の内容は2024年10月5日に配信したニュースレター「Climate Curation #130」と同じ内容です。今後継続的にメールとして受信を希望をされる方はtheLetter 、或いは Linkedin経由で購読頂けたら幸いです🙂。毎週土曜日にメールボックスにお届けしています。
こんにちは。新しく登録してくださったみなさん、ありがとうございます。直近1週間の気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の国内外のニュース・トピックをご紹介するニュースレターを配信している市川裕康と申します。継続して読んでくださっているみなさん、いつもありがとうございます。おかげさまで「Climate Curation」は現在theLetterにおいて720名を超える方に購読頂いてます。2023年秋にスタートしたLinkedinのニュースレターでは1,040名を超える方に登録いただき心より感謝いたします。*日本関連の英語記事をキュレーションしている英語版のJapan Climate Curation [購読者数約2,900人]もよろしければぜひ覗いてみてください。
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】 GX経営 WEEK【秋】、 SMART ENERGY WEEK ~スマートエネルギーWEEK等@幕張メッセに参加してきました。
【🙋】GX経営 WEEK【秋】、 スマートエネルギーWEEKなど、メインイベントが毎年2月に開催される展示会の秋開催版に参加してきました。今年の2月に開催された際には1600社が出展という巨大イベントでしたが、秋開催版は約500社と規模は3分の1ではあるものの、最近のエネルギー・脱炭素・GX分野のトレンドを感じることができました。
脱炭素経営 EXPOにおいてはGHG排出量見える化ツール・サービスを提供しているスタートアップ企業がブースのサイズを更に拡大しながら大きな存在感が感じられました。
今回初開催の「CCUS EXPO」には企業数はまだそこまで多くないものの、CCUS、直接空気回収(DAC)など、CDR(Carbon Dioxide Reduction / 炭素除去)技術を開発する大手企業、スタートアップ企業が注目を集めていました。
太陽光・蓄電池などの展示は引き続き中国企業の存在感が強く、風力、水素など、様々な技術を持った企業の展示からは多くの学びがありました。
会場の雰囲気はこちらの「イベントマーケティング」さんのYouTubeでも紹介されています。
気候変動、脱炭素、気候テックなどいろいろな議論、報道はあるものの、折に触れてこうした展示会に参加することで、実際にビジネスの現場でどのような解決策の開発が進められているのか、どのようなトレンドがあるかを感じることができます。
【2】【動画・資料公開】セミナー エネルギー基本計画の論点 脱炭素への道を示せるのか [10/3 自然エネルギー財団]
【🙋】新たなエネルギー基本計画と温室効果ガス削減目標(NDC)の策定に向けて、再生可能エネルギー分野の研究・情報発信に長く取り組まれている自然エネルギー財団が描くエネルギー政策の方向性、また有識者の方々の考えや見通しを知ることができました。特に国際大学学長の橘川武郎氏のプレゼンテーションからは「はっ」とさせられるような現状認識や見通しが共有され、理解が深まることが多かったです。
気になったのは会場・オンライン視聴含め約1600の方が事前登録されているにも関わらず、SNS、特にX上でこのイベントについて言及している方がほとんどいらっしゃらないということです。エネルギー政策に関しては考え方、世代、地域によって様々な考えを持っている方がいるとは思いますが、オープンな議論や知識、情報が適切に共有されることでより議論が深まり、より良い解決策につながっていくことを願ってます。
【3】電ゲン論 [9/18 〜朝日新聞🔏]
【🙋】電気の作り方、エネルギー政策に関する多様な識者の考察を紹介する連載シリーズ。現在10本の記事が掲載。第7次エネルギー基本計画策定に向けての議論を理解する上でとても参考になる連載、と思いました。各記事の中で紹介されている図やチャートも含め、分かりやすく論点が提示されています。
【4】ゼロエミ、多様な道筋…3年前の「突貫工事」に縛られた温暖化政策 [10/1 毎日新聞🔏]
【🙋】岸田政権の気候変動政策が政権内でどのようなやり取りを経て生まれ、現在に至っているか、詳しい総括・分析が描かれています。「GX(グリーントランスフォーメーション)」、「ゼロエミッション(ゼロエミ)火力」、「多様な道筋(マルチパスウェイ)」ということばの背景の理解が深まります。
【5】イギリスが石炭火力発電を廃止 産業革命以来142年の歴史に幕 [10/1 BBC NEWS Japan]
"イギリスが9 月30日、石炭火力発電を廃止し、142年にわたる石炭への依存に終止符を打った。1967年から稼働してきた国内最後の石炭発電所のラトクリフ・オン・ソア発電所がこの日、運転を終了した。これは、石炭による気候変動への影響を減らすという、イギリスの野望において大きな節目となる。"
*英国最後の石炭火力発電所が閉鎖〜時代の終わり [9/29 The Economist🔏]
*石炭火力「日本も野心的な目標を」 全廃の英高官が助言 [10/2 日本経済新聞]
"依存度が3割とG7で最も高く、廃止時期の目標を定めていない日本への圧力が強まる。「野心的な目標を設定し、再生可能エネルギーの大きな将来性を認識することが大事だ」と語った。"
【6】前年比50%増の約900イベント、10万人が集う「ニューヨーク・クライメート・ウィーク」[9/29 日経COMEMO / note]
【🙋】先週お伝えした際には今年の期間中のイベント数は600と記載してましたが、公式発表では900と、前年比50%増の巨大な「気候週間」が実施されたことが様々な報道や参加した方々の振り返り投稿から窺えます。気候テック専門メディアのCipherの記者がそれぞれの「Take Away(得られた教訓)」が共有されてます。最近はGoogle翻訳の精度が上がってます。以下の方法で簡単に日本語で閲覧可能です🙂🤞。
【7】MITテクノロジー・レビューが選出する気候テック15の2024年版 [10/1 MIT Technology Review]
【🙋】2023年秋にMITテクノロジー・レビューの新企画としてスタートした注目の気候テックスタートアップ15社の選出、2024年版が10月1日に公開されました。フォーム・エナジー(再エネ貯蔵)、ゴゴロ(電池交換式電動スクーター)、サブライム(クリーンセメント)、BYD(EV)などは昨年から2年連続してランクイン、ソルゲン(化学物質)、ランザジェット(航空燃料/SAF)等は初選出です。
MITテクノロジー・レビューが新たに選出した気候テック15社[2024年版]
ランザジェット(航空燃料/SAF)
パノAI(山火事検知)
ソルゲン(化学物質)
セイボ(鉱業)
ロンド・エネルギー(エネルギー貯蔵)
ルミン8(食品と農業)
BYD(電気自動車)
ファースト・ソーラー(再生可能エネルギー)
ピボット・バイオ(食品と農業)
カイロス・パワー(核分裂技術)
フォームエネルギー(エネルギー貯蔵)
ゴゴロ(カートリッジ式電動バイク)
サブライム・システムズ(クリーンセメント)
Sun King(再生可能エネルギー)
【8】新しい太陽電池が効率記録を更新 – 最終的には太陽からエネルギーを得る方法を大幅に向上させる可能性がある [9/25 The Conversation]
【🙋】国内でも期待が高まるペロブスカイト太陽電池ですが、先月始めに英オックスフォードPV社が商業化を開始し、変換効率のさらなる向上(33%台)も期待されているとオックスフォード大学の准教授による考察が紹介されています。
シリコンとペロブスカイト材料を組み合わせた新しいタンデム太陽電池が、記録的な33.89%の効率を達成
2024年9月5日に英オックスフォードPV社は、米国を拠点とする顧客への最初の出荷により、記録破りのタンデム太陽光発電技術の商業化を開始(最近のモジュール効率記録:26.9%)。
この改善により、太陽光発電の設置コスト削減とスペースの効率的利用が可能に
技術の拡大と長期的な耐久性・持続可能性の確保には課題が残る
【9】気候テック資金だけが大惨事の回避に役立つ理由〜マッキンゼーは、地球温暖化ガスの主発生源を脱炭素化するために必要な技術の多くはすでに存在しており、規模を拡大する必要があるだけだと述べている。[10/2 Bloomberg Green🔏 / 🎁 無料ギフトURL]
"マッキンゼーの報告によると、炭素回収やヒートポンプなど、既存の気候技術を拡大することで、世界の温室効果ガス排出量を90%削減できる可能性があります。しかし、これらの技術の中で商業的に競争力があるのは現在10%のみです。気候技術のコスト効率を高めるカギは急速な拡大にあり、展開を100%増加させるごとに少なくとも70%のコスト削減につながります。専門家は、炭素市場や自然を基盤としたアプローチなどのソリューションを大規模に拡大しなければ、気候変動緩和の取り組みは不十分になると強調しています。気候変動との闘いにおいて時間は一定ですが、規模とコストは影響を与えることができます。"
【10】東京丸の内に「気候テック」イノベーション拠点--「作らないで作った」環境配慮型オフィスの中身 [9/29 CNET Japan]
【🙋】先週号でお伝えした「気候テック(Climate Tech)」領域における国内初のイノベーション拠点「0 Club(ゼロクラブ)」のお披露目イベントに、ご縁があり参加する機会を頂きました。
イベントでは施設のデザインに込めた狙い、パートナー組織の代表からのメッセージが紹介され、内覧ツアー、参加した方同士のネットワーキングの機会などが提供されました。「気候テック」というキーワードを冠した新しい拠点の誕生にとても期待を感じます。東京駅から徒歩圏ということで地方在住者としてはありがたい立地で、今後様々な学びや出会いの機会なども構想されているとのこと、注目したいと思います🤞🚀
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*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
では、よい週末をお過ごしください🙂🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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