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[Climate Curation #145]観測史上最も暑い1月、相次ぐNDC目標提出延期、揺れる洋上風力
以下の内容は2025年2月8日に配信したニュースレター「Climate Curation #145」と同じ内容です。今後継続的にメールとして受信を希望をされる方はtheLetter 、或いは Linkedin経由で購読頂けたら幸いです🙂。毎週土曜日にメールボックスにお届けしています。
こんにちは。新規登録の皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで760名以上、Linkedinニュースレターでは1,070名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。*日本関連の英語記事をキュレーションしている英語版のJapan Climate Curation [購読者数約3,000人]もよろしければぜひ覗いてみてください。
先週の英語版ニュースレター「Japan Climate Curation vol. 139」の概要
2月初旬、日本のグリーントランスフォーメーションと産業界では重要な進展が見られています。ホンダと日産の経営統合交渉の決裂は自動車産業が直面する課題を浮き彫りにする一方、トヨタはハイブリッド車の成功により世界的なリーダーシップを維持しています。
気候変動に関する課題は深刻化しており、北海道では大雪のリスクが増加し、海洋熱波は漁業に影響を及ぼしています。
日本の再生可能エネルギーへの取り組みは、野心的な洋上風力発電の国産化目標やテスラの電力貯蔵事業への参入により前進を見せています。一方で、150兆円の投資目標を掲げるGXボンド制度は、海外投資家の関心を引き付けるのに苦戦しています。
その間、福島では市民科学者たちが重要な放射線モニタリング活動を継続しており、原子力の遺産がもたらす課題が続いていることを示しています。これらの動きは、日本が産業競争力を維持しながら持続可能性に向けて移行する過程の複雑さを反映しています。
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】観測史上最高を記録:2025年1月の世界平均気温 - ラニーニャ現象の発生にもかかわらず [2/6 コペルニクス気候変動サービス]
今週は日本全国寒波・大雪で大変ですが1月を振り返るとTシャツで過ごした日があったことを思い出します。今年の夏も心配ですね。
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観測史上最高、1月の異常気温に科学者衝撃 [2/6 Financial Times🔏]
2025年1月は史上最高温を記録し、産業革命前と比べて1.75°C上昇
ラニーニャの冷却効果が記録的な気温上昇を防げず
世界の海面温度が20.78°Cに達し、1月としては2番目に高い記録
ロサンゼルスの山火事で約11,000戸が焼失
排出削減への取り組みにもかかわらず、気候変動の加速に関する科学者の懸念が強まる
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【2】温室効果ガス削減目標、期限までの提出「困難」 案に3千件超の意見 [2/7 朝日新聞]
環境省の浅尾慶一郎大臣は、2035年度の温室効果ガス削減目標(NDC)について、2月10日の国連提出期限に間に合わないことを表明しました。政府案は2013年度比60%減を提示し、パブリックコメントを実施しましたが、3000件以上の意見が寄せられ、現在精査中です。この目標については、達成困難との声がある一方で、より高い削減目標を求める意見もあります。また、最新の衛星観測では、地球全体のCO2濃度が記録的な増加を示しています。
【3】主要排出国、2035年気候目標の国連期限に難航 [ 2/5 Financial Times🔏]
EU、オーストラリア、南アフリカ、インドなど、主要排出国の多くが国連の2月10日期限に間に合わない見込み
トランプ氏のパリ協定離脱表明が世界の気候変動対策を弱体化
G20諸国の25-33%程度しか期限内の目標提出ができない見通し
多くの国が経済的制約と政治的圧力を遅延の理由に挙げる
大幅な削減が必要な中、現在も排出量は増加傾向
【4】パリ協定離脱後の米国、エネルギー転換の行方は? / What happens to the energy transition with the US exiting the Paris Agreement? [1/30 Bloomberg Zero: Climate Race / Podcast]
トランプ政権発足を受けて、エネルギー政策、気候変動政策の行方を占う議論が日々行われていますが、グローバル視点で分析を続ける海外メディアの視点も折に触れて眺めておくことが大事と感じます。Bloomberg Green のPodcast Zero の概要をマインドマップにまとめたものはこちらからご覧いただけます。以下の時系列での分析がとても印象的でした。
犠牲の時代(2010年代):経済成長を犠牲にして気候変動に対応するという考え方が主流だった。
機会の時代(2021年以降):クリーンエネルギー技術のコスト削減により、気候行動が経済的な機会として認識されるようになった。
競争の時代(現在):各国が競争的にエネルギー移行を進める一方で、経済的なコストと利益のバランスを重視する傾向が強まっている。
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PodcastにはBloombergNEFのDeputy CEO Albert Cheung氏が参加、公開されたばかりの『Energy Transition Investment Trends 2025』が紹介されました。驚くのは2024年のエネルギー転換分野の投資額が2兆ドルを超え、そのうちの多くを中国が牽引していることです。
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【5】エネルギー専門家、気候対策で中国・欧・英の連携を、米抜きの同盟提唱 / China, Europe and UK should form climate coalition apart from US, energy expert says [2/4 Financial Times🔏]
気候変動対策に関する中国の存在感の高まりも今後気になるトピックになりそうです。
China, Europe and UK should form climate coalition apart from US, energy expert says https://t.co/qmhv0qv3xr
— FT Economics (@fteconomics) February 4, 2025
エネルギー移行委員会のアデア・ターナー議長は、トランプ政権の気候政策撤退を受け、中国・EU・英国による気候同盟の形成を提唱しました。パリ協定の目標達成のため、貿易摩擦にもかかわらず、西側諸国と中国の低コストグリーン技術での協力強化を訴えています。世界最大の排出国である中国は、同時にEVや再生可能エネルギー技術でも主導的立場にあり、安価な中国製グリーン技術が各国のクリーンエネルギーへの移行を促進する可能性があると指摘しています。
【6】洋上風力に「逆風」、ゼロからの見直しも-三菱商は522億円減損 [2/6 ブルームバーグ]
三菱商事が洋上風力発電事業で522億円の減損損失を計上し、事業性の再評価に着手しました。建設コストの高騰や金利上昇により、世界的に洋上風力事業が苦境に陥っており、日本の総合商社やエネルギー大手も相次いで事業見直しを迫られています。政府は2030年に10ギガワットの案件形成を目標に掲げ、再生可能エネルギー拡大の切り札として期待を寄せていますが、資材価格の高騰により平均40%超のコスト増となっており、事業の継続性が問われています。
【7】名古屋で開催された国際的スタートアップの祭典、『TechGALA』に参加してきました。
国内外の起業家、投資家、専門家、大企業担当者ら約5,000人が集い、名古屋市内の中日ビルやステーションAiなど複数の会場でパネルディスカッション、ピッチイベントなどが数多く開催され、沢山の刺激をシャワーのように浴びることができました。サステナビリティ、ディープテック、ものづくり、医療など、大学発スタートアップ起業家らのプレゼンテーションやパネルを目にする中で、とても可能性を感じる機会でした。Cliamte Curationニュースレターでも今後もっと「解決策 / ソルーション」の視点を強化して、英語での発信も含めて頑張ろうと刺激をもらいました!
ものづくり地域からユニコーンを。愛知県主催の「1000万円総取り」ピッチコンテスト、優勝は [2/7 Business Insider Japan]
「我慢の経済」ではうまくいかない。科学者と起業家が指摘する日本に「いま欠けているもの」【#TechGALA Japanレポ】 [2/5 Business Insider Japan]
ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたらSNSなどで「いいね」や「シェア」をお願いします 🙇♂️[ハッシュタグ: #ClimateCuration ]。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。
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*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
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