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[Climate Curation #131]気候変動の最前線:ハリケーン・異常気象をどう伝えるか

以下の内容は2024年10月12日に配信したニュースレターClimate Curation #131と同じ内容です。今後継続的にメールとして受信を希望をされる方はtheLetter 、或いは Linkedin経由で購読頂けたら幸いです🙂。毎週土曜日にメールボックスにお届けしています。

こんにちは。新しく登録してくださったみなさん、ありがとうございます。直近1週間の気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の国内外のニュース・トピックをご紹介するニュースレターを配信している市川裕康と申します。継続して読んでくださっているみなさん、いつもありがとうございます。おかげさまで「Climate Curation」は現在theLetterにおいて720名を超える方に購読頂いてます。2023年秋にスタートしたLinkedinのニュースレターでは1,040名を超える方に登録いただき心より感謝いたします。*日本関連の英語記事をキュレーションしている英語版のJapan Climate Curation [購読者数約2,900人]もよろしければぜひ覗いてみてください。


【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

【1】ハリケーン「ミルトン」の強大化、人為的な気候変動の影響=研究 [10/12 ロイター]

"異常気象を分析する国際研究グループ「ワールド・ウェザー・アトリビューション」(WWA)の分析によると、地球温暖化によって風速は約10%加速し、降雨量は20─30%増加。これまでの科学的分析から、気候変動によりメキシコ湾で今回のような記録的な海水温の上昇が発生する可能性が400-800倍高まっていることが示唆される。WWAは、人為的な温暖化により、「ミルトン」と同様の暴風雨が発生する確率は約2倍に高まっていると指摘した。"

【🙋】報道で現地の様子を観た方も多いと思いますが、台風の専門家である気象学者、ジョン・モラレス氏がなぜここまで感情的になったかについて、大きな話題になっています。

ハリケーンの猛発達を伝えていた気象学者、放送中に思わず涙ぐむ「本当に恐ろしい状態です」[10/8 ハフポスト] 本人の投稿

*気象予報士になって40年。 ハリケーン「ミルトン」に感情的になった理由はここにある -「気候に左右される極端な災害によって、私たちはかつて経験したことのないような場所に身を置くことになる。[10/8 Mother Jones]

  • ベテラン気象学者のジョン・モラレスは、気候変動による嵐の強度増加を反映し、ハリケーン・ミルトンの報道中に感情的になった。

  • モラレスの反応は、異常気象への不安、気候変動対策の不足に対する不満、そして潜在的被害者への共感から生じている。

  • 気候変動はモラレスの気象学へのアプローチを変え、冷静で「事実だけを伝える」態度を維持することを難しくしている。

【2】これらのハリケーンは、新しい種類の気候否定を生んだ - 極めて現実的な結果を伴う[10/9 Heatmap News🔏]

  • 最近のハリケーンが気候関連の誤情報と陰謀論の新たな波を引き起こしています。

  • トランプ前大統領を含む政治家が、党派的な利益のために災害を利用して誤った主張を広めています。

  • ソーシャルメディアプラットフォームがこれらの陰謀論を増幅させ、自然災害を反ユダヤ主義や選挙関連の理論と結びつけています。

【🙋】米大統領選挙投票日まで残すところあと25日。予測サイト「リアルクリアポリティクス」によると、激戦州7州の平均でトランプ氏が0.4ポイントリード、という状況です。今後の気候変動政策にも多く影響が及ぶと言われている今回の選挙。注目しています。

【3】ニュース報道の現場から伝える「気候変動問題」 - 求められる「提案型ジャーナリズム」[10/9 東洋経済オンライン]

【🙋】「気候変動問題」をどのように伝えるか。テレビ朝日アナウンサーの山口豊氏が、気候変動報道への道のりを語り、地域の再生可能エネルギーの成功例を紹介することの重要性を強調。また、行動を促す前向きで解決志向のジャーナリズムを提唱し、若い世代と協力して様々なメディアチャンネルを通じて気候変動への認識を高めている様子が伝えられています。

【4】特集「地球沸騰化をどう報じるか」テレビとラジオの批評誌「GALAC」11月号

【🙋】テレビとラジオの批評誌『GALAC』では気候変動とメディアについて、上記山口氏含め多くのジャーナリスト、気象予報士、気候学者、メディア関係者などによる寄稿が寄せられています。この分野にご興味をお持ちの方はぜひ。電子版はKindleなどで購入が可能です。

  • 「1.5℃の約束」の本質/根本かおる氏

  • 気象キャスターとして架け橋役になりたい/井田寛子氏

  • 気候変動対策を訴えるコンテンツを/山口 豊氏

  • 気候科学者からの提言/江守正多氏

〈放送局・企業・団体の取り組み〉

  • 東日本放送 三陸の豊かな海を守れ!/鈴木奏斗氏

  • 福井テレビ カーボンニュートラル実現を目指す/城戸利仁氏

  • 日本気象協会 酷暑から命を守る情報発信を/齊藤愛子氏

  • Sport For Smile スポーツ界のアクション/梶川三枝氏

  • 日本のメディアがすべきこと/堅達京子氏

【5】1.5度目標を超えたら「元に戻すのは困難」 莫大なCO2回収必要 [10/10 朝日新聞🔏]

  • 世界の気温上昇が産業革命前から1.5°Cを超えると、元に戻すのは極めて困難。

  • 大規模なCO2除去が必要となり、環境への悪影響の可能性がある。

  • 気候変動対策には、即時の排出量削減が最も効率的なアプローチ。

出典:「気候のオーバーシュートに対する過信」[10/9 Nature]

【6】世界の再生エネルギー、2030年に2.7倍 IEAが市場予測 [10/9 日本経済新聞🔏]

"国際エネルギー機関(IEA)は9日、再生可能エネルギー市場に関する最新の報告書を発表した。各国の政策支援により2030年の世界の再生エネ導入量は22年の2.7倍に拡大すると予測した。太陽光発電が普及をけん引する。"

【🙋】中国における驚異的な再エネ導入ペース、太陽光発電の普及ポテンシャルなどに驚かされます。

*Renewables 2024 - Analysis and forecasts to 2030 [10/9 IEA]

image credit: IEA & CarbonBrief

【7】生物多様性、50年で73%低下 自然環境の損失、気候変動が影響 [10/10 毎日新聞]

【🙋】気候変動のみならず、生物多様性・ネイチャーポジティブにも大切なキーワードとして注目しなければ、と最近強く思います。

"地球上の生物多様性の豊かさを示す指数は、自然環境の損失や気候変動により過去50年で73%低下したとの報告書を世界自然保護基金(WWF)が10日発表した。生態系は回復不可能な状況に近づいており「今後5年の行動が生命の未来にとって極めて重要だ」と対策強化を求めた。"

*生きている地球レポート2024 - 自然は危機に瀕している [10/10 WWF]

【8】「次の衆院選で、気候変動対策や脱炭素について、争点として議論するべき」54.7%。第50回衆議院議員選挙を前にした気候変動に関する世論調査結果のお知らせ [10/11 一般社団法人日本若者協議会]

【🙋】10月27日投開票予定の第50回衆議院議員総選挙において、気候変動対策に対する議論が十分行われておらず、争点にもなっていない状況を受け、日本若者協議会が気候変動に関する世論調査を実施し、10月11日に公開されました。気候変動対策に興味を持つ、一票を投じる上で、とても参考になる情報なのではないかと思われます。今後も議論が深まっていくことを期待しています🤞。


  • 総選挙で、気候変動対策や脱炭素について、争点として議論するべきと回答した人は54.7%

  • 総選挙で、気候変動への対応を公約に掲げた候補者が現れたら、その候補者に関心を持つと回答した人は40.24%

  • 総選挙で、気候変動への対応を公約に掲げた候補者が現れたら、普段の政治観が異なっていても、投票を検討すると回答した人は25.78%

  • 総選挙で重視したいテーマについて、外交・安全保障(16.6%)、少子高齢化(16.1%)、政治改革(15.0%)と並び、「気候変動・脱炭素社会・エネルギー・環境」は14.7%(複数回答)

*【調査方法】[調査手法:オンライン調査(調査ツール:Freeasy) | 調査期間:10月4日〜7日 | 有効回答数:4900 ー7エリアごと700回答ずつ回収]

image credit: 日本若者協議会

【9】環境スタートアップ投資一巡 逆風下でも選ばれる企業は - GX Unicorn [10/11 日経GX / CB insights 🔏]

"環境スタートアップの資金調達が減速している。米調査会社CBインサイツの集計によると、2024年第2四半期(4〜6月)まで3四半期連続で減った。人工知能(AI)技術など他のテーマに押し出される形で投資が一巡した。その中でも日本経済新聞社が脱炭素分野の世界の有望企業をリスト化した「GX Unicorn」の総数は増加が続く。逆風下でも投資家に選ばれる企業の特徴は何か。"

image credit: 日経GX

【10】ジョン・ケリー氏、グリーン投資を推進するトム・スタイヤー基金に参加 - 元米国務長官兼気候変動特使がGalvanize Climate Solutionsの共同エグゼクティブ・チェアに就任 [10/7 Financial Times]

【🙋】元米国気候変動特使のジョン・ケリー氏が億万長者トム・スタイヤー氏のグリーン投資グループ、Galvanize Climate Solutionsに参画。ケリー氏は、収益性と気候への好影響を組み合わせ、エネルギー転換を加速させる機会と捉えている。この動きは、気候金融における民間セクターの関与の重要性の高まりを示している。上記のClimate tech 分野へのVC投資の減速懸念を一蹴する上でも大きなインパクトのあるニュースと感じます。

*D.C.インサイダーたちのクールな新拠点: 気候テック - ホワイトハウスからグリーンVCへ[9/24 Heatmap News]

*気候テクノロジーは、特にインフレ削減法以降、元政府職員にとって人気のあるキャリアパスとなっています。この傾向は、気候変動と持続可能性の課題に取り組む上で、公共政策と民間セクターのイノベーションの相乗効果が高まっていることを反映しています。

イベント・プログラムのお知らせ

【🙋】私も当日現地参加予定です。初めての参加です。会場にいらっしゃる方いらしたらぜひ現地でお目にかかれますことを楽しみにしています。

"国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)と並行して東南アジアと日本で開催される一連のイベント「アルターCOP29」の一環として、私たちは今年11月に東京で日本最大のクライメート・フレスク・イベントを開催します!私たちの目標は、150人の参加者を集め、同時にインパクトのある気候教育を体験してもらうことです。気候変動に関心のある個人、団体を問わず、11月10日に東京大学で開催されるこの記録的なイベントにぜひご参加ください!"

以前にブログでも紹介させて頂いたこちらのプログラム、日本でも広がりつつあるようでいいですね🙂👍

100万人が参加、気候変動について学ぶフランス発ワークショップ「クライメート・フレスク(Climate Fresk)」[2023/8/20 日経COMEMO / note]

image credit: ICHIGO Bloom

ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたらSNSなどで「いいね」や「シェア」をお願いします 🙇‍♂️🙂[ハッシュタグ: #ClimateCuration ]。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです🙂。


*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

では、よい連休をお過ごしください🙂🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org

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日経COMEMO/noteでの過去掲載記事

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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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